現在、全国公開中の映画『つむぐもの』が好評だ。福井県と韓国を舞台に"介護とは何か?"という現実的でシリアスなテーマを扱い、いよいよ5月21日(土)にはロケ地の福井で凱旋公演を果たすほか、大阪などでも公開になる。主演は役者人生50周年の大ベテランの石倉三郎と、『息もできない』(09)の主演女優キム・コッピ。観客に、「届いてほしいと今まで以上に強く感じてはいますかね(石倉)」と語る石倉とキム・コッピにインタビューした。
――介護をテーマに描くなど、いまの日本では密接な問題を扱っている作品でした。
石倉:この種のテーマの映画って、ありそうでないんです。それで今回、介護される人間を演じてみて、こりゃ他人事じゃないなって思いましたよ。だから多くの人たちに観てもらわないと、しょうがないなって気持ちになってきましてね。タイムリーって言うと語弊があるけれど、親がいるような今の人たちに観てもらいたいですね。
コッピ:韓国とは文化が違うと思いました。日本には専門のヘルパーさんがいて、介護施設も一般化している印象を受けますね。韓国にもあることはありますが、一般的には親不孝ではないかという考えが強いです。でもそれも問題で、家族のために仕事を辞めるとか、看病のために時間を割くとか、いろいろ考えなくてはいけない点があると思います。
石倉:日本でも親不孝じゃねえかみたいなところはありますよ。わたし自身もね、親戚が老老介護でね。せがれが介護離職ですよ。だから、きつい話もすぐ近所にありますんでね。本当に他人事じゃないんですよ。
――さて、今回の共演の話題ですが、第一印象はお互いにいかがでしたか?
石倉:出演作を何本か拝見しましたよ。ウチのライブラリーにも『息もできない』(08)とかありますんで、「ああ、この子がやるんだなあ」と、どきどき楽しみでした。最初に会った時は、「ああ本物が来た」ってね(笑)。どきどきとわくわくでしたよ。
コッピ:第一印象が怖かったです(笑)。お会いする前にヤクザの役柄が多いとうかがっていたので、怖い方といううわさも聞いていて(笑)。でも、とても温かい方で、楽しく冗談で和ましていただいて、思慮深い方だなあと思いました。
石倉:そういうウワサは慣れてますけどね。まあ、不徳の致すところでございます(笑)。いやしかし、すごいですね。腕のある子。たいしたもんです。脚本に対する理解度が深いですよ。できる女優さんは、いろいろな手を持っているというね。監督の意向をいい感覚でスポッと切り取れるというね。言葉がまったく違う所で仕事しているのに勘がいい。
――また、石倉さんは、映画では単独初主演になりましたね。
石倉:そういうのね、特にないんですよね(笑)。ただ、ひとつの仕事として受けたということで、テレビでは何度かありましたが、映画では初めてということで、でも出るほうは気にしていないですね。どの映画もそうですけど、参加した映画には(観客が)入ってもらいたいという気持ちはあります。そういう想いは、ちょっと強いですかね。
コッピ:すばらしい俳優さんです。監督の意向を理解する努力を重ねて、演技を修正して、そういう姿を近くで拝見していて、本当のプロだなと思いました。
石倉:いや、ありがとう。カムサムニダ(笑)。
――この作品、そして役柄は今回、俳優としてどういう意味を持ちましたか?
コッピ:価値観の変化のような、さまざまな影響はありました。もっと広い心を持とうというようなことも考えるようになりました。自分が老人になった時のことも考えました。その時、自分はどうするか悩み、遠からずわたしの両親も降りかかってくると思うので、真剣に考えるきっかけになりましたね。
石倉:わたしもね、届いてほしいなと毎回思いますけどね。ただまあ、現場では、そこまで深く考えてはいないんですよ。脚本に沿った役柄を、どこまでやれるかということだけだから。ただ、映画が完成した時、届いてほしいと強く思うことはあります。それが今回、いま思うと、届いてほしいと今まで以上に強く感じてはいますかね。
映画『つむぐもの』は、2016年5月21日(土)より、ロケ地の福井<テアトルサンク>にて、大阪<第七藝術劇場>にて公開、ほか全国順次ロードショー!
■参照リンク
つむぐもの 公式サイト
http://www.tsumugumono.com/
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