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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の解決!ズバっと 2016/03/24
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おはようございます。

今日は『解決!ズバッと』はお休み。
岡田斗司夫が、1995年から2001年に「テレビブロス」誌で連載していた『オタクの迷い道』から、セレクトしてお届けします。

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連載第5回「アニメを見る。それは辛く厳しいオタク道だ。」 


 オタクにも、悩みはある。
 僕が超一流のオタク、と尊敬するS君にすら悩みはある。
 「あ〜あ、今年はクーラー買うてしもたおかげでトランスフォーマーのLD−BOX買われへんかった。ワシもまだまだやな」
 彼が自分を「まだまだ」と評しているのは、お金がなくてLD−BOXが買えなかったことではない。
 彼の悩みはお金では解決しない悩みなのだ。

 トランスフォーマーは普通のオタクにとっては、あんまり面白くないアニメだ。
 しかしS君のような一流のオタクにとって、この作品は見るべきところさえ判っていれば素晴らしい作品なのだ。
 無意味に盛り上げるナレーター。
 『巨人の星』の父ちゃん声の悪役。
 ロディマス司令官の説得力のない説教。
 何も考えてないアメリカンな脚本。

 S君ももちろんその良さが理解できる。
 だからLD−BOXを買わなけりゃと思う。
 いや、立派なオタクの自分は「いても立ってもいられないほど欲しくなるはず」なのだ。

 しかし今年の猛暑の日々、電気屋の店先でクーラーをつい買ってしまい、LD−BOXの予約期間を逃してしまう、という失態を演じてしまった。

 なぜだ。
 もうオレはダメなのか。
 
 彼は自分のその情熱のなさ、濃くない態度に「まだまだ」と思う。
 そして自分はなぜ、もっともっと濃くなれないのか悩む。

 「好き」というだけでアニメを見ているわけではないのだ。もっと濃く、もっと深くを目指して日々、精進する。これこそがオタクの道である。

 僕はこんなS君の葛藤を「超一流のオタクだ」と嘆息する。
 彼の後ろ姿を見て、僕も「エヴァンゲリオンを3倍速で録画してしまった自分」をまだまだ、と思った。


以上、『オタクの迷い道』よりお届けしました。