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今回は、ニコ生ゼミ02月10日(#268)から、ハイライトをお届けいたします。
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「【『ラ・ラ・ランド』OPミュージカル徹底解説 1 】 ハリウッドに集まる若者たちの心情を “絵” だけで語っている」
評論家だけでなくて、マニアの人にも多いです。
あとは、『セッション』の頃から「この監督はジャズがわかってない!」とか、怒る人がいっぱいいるんですけども。
ただ、このオープニングシーンの出来については、誰も反対していないんです。
なぜかというと、映画評論家の人が言うような、過去の名作からの引用があるから楽しいのではなくて、そういうことを知らなくても十分に楽しめるからですね。
そういうことを、僕はちょっと知りたくて、いろいろ考えたりしました。
でも、「考える」というと、僕らはすぐに “映画の分析” とかをやっちゃうんですね。
もう、僕らみたいな物の考え方をする人間は、「なぜ面白いんだろう?」みたいに分析するんですけども。
分析より先に “観察” した方がいいんですね。
観察した方が「なぜ、自分はこれに心を動かされたのか?」が良くわかる。
先に分析しちゃうと、その分析の証拠を集めるような観察になっちゃうから、あんまり良くないんですね。
白い車があって、その奥にシルバーの車があって、黄色っぽい車があって、その奥に赤いオープンカーがある。
この自動車から、それぞれ流れている音楽が違うんですね。
そんな様子をカメラがナメていくと、1つ1つの車を通り過ぎるごとに、中から聞こえてくる音楽が違う。
この「自動車から流れる音楽が違う」というのは、実は「この車に乗っている1人1人は、全員、それぞれのミュージカル世界を生きている」ということの象徴なんですね。
高速道路で、みんなが同じ場所にいるんだけど、実は違う世界に生きていて、違う夢を見ている。
「それぞれが、みんな、自分のミュージカルの世界を生きてるんだよ」ということを暗示するようなシーンなんですね。
この女の人、後で車から出てきた時にわかるんですけど “黄色に水玉の入ったワンピース” を着ています。
つまり、この黄色いドットワンピースの女性は、映画女優になりたくて、高校を中退して、彼氏も捨ててハリウッドに来たわけですね。
それがもう、何年も前の話なんです。
わりと年食ってるお姉さんですから。
「高校を中退した」っていうのも、ひょっとしたら、もう10年以上前かもわかりません。
それを今、思い出して、急に語り出してるわけですね。
サングラスをクルクルっと回して、車の中にポイッと捨てます。
これは「これから本音を言うぞ」というサインですね。
それまでずっとサングラスを掛けていたということは、「自分が抱き続けている夢というのをあまり他人には語っていない」ということなんです。
あくまでも、自分だけの夢として抑えていた。
だけど、このサングラスをポイッと車の中に捨てて、素顔を晒すことによって、「ちょっと抑えていた本音というのを出す」ということを暗示しているんです。
あえて訳すとしたら、「だって、私はスクリーンの中で生きて行くって決めたんだもの!」という感じでしょうか。
「故郷も仲間も捨てて、なぜハリウッドに出てきたのかというと、映画俳優になるためだ!」と。
この渋滞中の車に乗っている人達は全員、同じ夢を持っているんですよ。
つまり、別のことを考えていたんですけども、でも、実は全員、同じような夢を持ってハリウッドにやって来たというのが、ここでハッキリわかるんですね。
日本の漫画では、自分の脳内シーンとして「せっかく東京に出てきたのに、俺は何してるんだろう? ずーっとエレベーターの順番を待ってるみたいじゃないか」っていう描写がよくありますよね?
そういうものを絵として見せることについて、日本では漫画が優れていて、アメリカは映画表現が優れているっていうことなんです。
これは本当に、計算で作ってるんですよ。
なぜ、これだけのシーンにドキドキワクワクするのかというと、たぶん、僕らが日本の漫画を読んだ時に感じるように、心の中で、これが何を意味しているのかがちょっと分かるから。
だから、こんななんでもないシーンでワクワクするんです。
これ、本当に、カメラの動きだけでいったら、ただ単に「カメラが車の列を捉えて、その内の車1つがアップになって、中からお姉さんが出てきて、ちょっとカッコいい歌を歌いながらダンスして、カメラが後ろに下がって行く」というだけのシーンだから、本当はゾクゾクするような要素なんかないんですよね。
つまり、漫画を読んで訓練されているように、映画を見ている僕らも、ちょっと訓練されているわけです。
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