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「【『ラ・ラ・ランド』OPミュージカル徹底解説 1 】 ハリウッドに集まる若者たちの心情を “絵” だけで語っている」
あとは、『セッション』の頃から「この監督はジャズがわかってない!」とか、怒る人がいっぱいいるんですけども。
ただ、このオープニングシーンの出来については、誰も反対していないんです。
なぜかというと、映画評論家の人が言うような、過去の名作からの引用があるから楽しいのではなくて、そういうことを知らなくても十分に楽しめるからですね。
でも、「考える」というと、僕らはすぐに “映画の分析” とかをやっちゃうんですね。
もう、僕らみたいな物の考え方をする人間は、「なぜ面白いんだろう?」みたいに分析するんですけども。
分析より先に “観察” した方がいいんですね。
観察した方が「なぜ、自分はこれに心を動かされたのか?」が良くわかる。
先に分析しちゃうと、その分析の証拠を集めるような観察になっちゃうから、あんまり良くないんですね。
白い車があって、その奥にシルバーの車があって、黄色っぽい車があって、その奥に赤いオープンカーがある。
この自動車から、それぞれ流れている音楽が違うんですね。
この「自動車から流れる音楽が違う」というのは、実は「この車に乗っている1人1人は、全員、それぞれのミュージカル世界を生きている」ということの象徴なんですね。
高速道路で、みんなが同じ場所にいるんだけど、実は違う世界に生きていて、違う夢を見ている。
「それぞれが、みんな、自分のミュージカルの世界を生きてるんだよ」ということを暗示するようなシーンなんですね。
この女の人、後で車から出てきた時にわかるんですけど “黄色に水玉の入ったワンピース” を着ています。
つまり、この黄色いドットワンピースの女性は、映画女優になりたくて、高校を中退して、彼氏も捨ててハリウッドに来たわけですね。
それがもう、何年も前の話なんです。
わりと年食ってるお姉さんですから。
「高校を中退した」っていうのも、ひょっとしたら、もう10年以上前かもわかりません。
それを今、思い出して、急に語り出してるわけですね。
サングラスをクルクルっと回して、車の中にポイッと捨てます。
これは「これから本音を言うぞ」というサインですね。
それまでずっとサングラスを掛けていたということは、「自分が抱き続けている夢というのをあまり他人には語っていない」ということなんです。
あくまでも、自分だけの夢として抑えていた。
だけど、このサングラスをポイッと車の中に捨てて、素顔を晒すことによって、「ちょっと抑えていた本音というのを出す」ということを暗示しているんです。
あえて訳すとしたら、「だって、私はスクリーンの中で生きて行くって決めたんだもの!」という感じでしょうか。
「故郷も仲間も捨てて、なぜハリウッドに出てきたのかというと、映画俳優になるためだ!」と。
この渋滞中の車に乗っている人達は全員、同じ夢を持っているんですよ。
日本の漫画では、自分の脳内シーンとして「せっかく東京に出てきたのに、俺は何してるんだろう? ずーっとエレベーターの順番を待ってるみたいじゃないか」っていう描写がよくありますよね?
そういうものを絵として見せることについて、日本では漫画が優れていて、アメリカは映画表現が優れているっていうことなんです。
これは本当に、計算で作ってるんですよ。
なぜ、これだけのシーンにドキドキワクワクするのかというと、たぶん、僕らが日本の漫画を読んだ時に感じるように、心の中で、これが何を意味しているのかがちょっと分かるから。
だから、こんななんでもないシーンでワクワクするんです。
これ、本当に、カメラの動きだけでいったら、ただ単に「カメラが車の列を捉えて、その内の車1つがアップになって、中からお姉さんが出てきて、ちょっとカッコいい歌を歌いながらダンスして、カメラが後ろに下がって行く」というだけのシーンだから、本当はゾクゾクするような要素なんかないんですよね。
つまり、漫画を読んで訓練されているように、映画を見ている僕らも、ちょっと訓練されているわけです。
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いかがでしたか?
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今回は、ニコ生ゼミ02月10日(#268)から、ハイライトをお届けいたします。
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「【『ラ・ラ・ランド』OPミュージカル徹底解説 1 】 ハリウッドに集まる若者たちの心情を “絵” だけで語っている」
さて「『ラ・ラ・ランド』をどう語るか?」なんですけど、もう、SFでもなければアニメでもない、普通の作品なんですね。
それもミュージカルで、恋愛映画という、言っちゃえば “リア充の作品” じゃないかと感じる人も多いと思うんですけども(笑)。
でも、なかなか見るべきところが多いと僕は思ってるんです。
これは『ラ・ラ・ランド』タイトル画面ですね。
このタイトルが出る前までのオープニングのミュージカルシーンが、僕はすごい好きなんです。
なので、「なぜ、これが楽しいのか?」、「これが好きなのか?」ということに絞って、ちょっと話をしようと思います。
・・・
映画評論家の人の中には『ラ・ラ・ランド』のことを、かなり厳しくディスる人も多いんですね。
評論家だけでなくて、マニアの人にも多いです。
評論家だけでなくて、マニアの人にも多いです。
たとえば「もう本当にクズみたいな映画だ!」とハッキリ言う人もいますし、「過去の名作の引用ばかりな上に、その引用すらロクに出来てない。ダメだ」と。
あとは、『セッション』の頃から「この監督はジャズがわかってない!」とか、怒る人がいっぱいいるんですけども。
ただ、このオープニングシーンの出来については、誰も反対していないんです。
なぜかというと、映画評論家の人が言うような、過去の名作からの引用があるから楽しいのではなくて、そういうことを知らなくても十分に楽しめるからですね。
では、なぜ、そういうことを知らなくても問答無用に楽しいのか?
そういうことを、僕はちょっと知りたくて、いろいろ考えたりしました。
そういうことを、僕はちょっと知りたくて、いろいろ考えたりしました。
でも、「考える」というと、僕らはすぐに “映画の分析” とかをやっちゃうんですね。
もう、僕らみたいな物の考え方をする人間は、「なぜ面白いんだろう?」みたいに分析するんですけども。
分析より先に “観察” した方がいいんですね。
観察した方が「なぜ、自分はこれに心を動かされたのか?」が良くわかる。
先に分析しちゃうと、その分析の証拠を集めるような観察になっちゃうから、あんまり良くないんですね。
そこで今回、僕はまず、何よりも「カメラの動きが、なんでこんなウキウキするんだろう?」と思って、カメラワークに注目してみました。
・・・
これは冒頭のシーンです。
カメラが、わりと雲のあるロサンゼルスの空から降りてきて、高速道路で渋滞に巻き込まれているいろんな車がザーッと映ります。
このパネルは、画面を無理矢理繋げて1枚にしてますけど、実際は、かなり歪曲の強いレンズで撮っていて、近くの車がギュッとアップになって、遠くの車が小さくなるので、こんなふうにスムーズに繋がってはいません。
白い車があって、その奥にシルバーの車があって、黄色っぽい車があって、その奥に赤いオープンカーがある。
この自動車から、それぞれ流れている音楽が違うんですね。
ロサンゼルスの高速道路は渋滞中で、もう車がほとんど止まってしまってる。
そんな様子をカメラがナメていくと、1つ1つの車を通り過ぎるごとに、中から聞こえてくる音楽が違う。
そんな様子をカメラがナメていくと、1つ1つの車を通り過ぎるごとに、中から聞こえてくる音楽が違う。
この「自動車から流れる音楽が違う」というのは、実は「この車に乗っている1人1人は、全員、それぞれのミュージカル世界を生きている」ということの象徴なんですね。
高速道路で、みんなが同じ場所にいるんだけど、実は違う世界に生きていて、違う夢を見ている。
「それぞれが、みんな、自分のミュージカルの世界を生きてるんだよ」ということを暗示するようなシーンなんですね。
・・・
この長いシーンが過ぎると、カメラが1人の女性に近づいていきます。
この女の人、後で車から出てきた時にわかるんですけど “黄色に水玉の入ったワンピース” を着ています。
そんな女の人のクローズアップになっていきます。
この女の人を僕は、一番最初にボーカルで歌うお姉さんということで、“第1ボーカル” と呼んでいるんですけども、彼女が「I think about that day. I left him at a Greyhound station. West of Santa Fé~♪」と歌い始めます。
英語の歌だからなかなか発音しにくいんですけども、「that day」と「Santa Fé」が、ちょっとうまく韻を踏んでるような歌詞ですね。
「あの日を思い出してみた。私が彼をサンタフェのグレイハウンド駅に置き去りにした日のことを」という、ちょっとショッキングな歌詞です。
つまり、この黄色いドットワンピースの女性は、映画女優になりたくて、高校を中退して、彼氏も捨ててハリウッドに来たわけですね。
それがもう、何年も前の話なんです。
わりと年食ってるお姉さんですから。
「高校を中退した」っていうのも、ひょっとしたら、もう10年以上前かもわかりません。
それを今、思い出して、急に語り出してるわけですね。
まあ、もう、何年前かも忘れちゃったんだけど、でも、今もその夢を信じちゃってるから、渋滞の中で「自分がなぜ、そんな夢を見るようになったのか?」のきっかけを思い出して、歌い出しちゃうわけですね。
・・・
このお姉さんが車から出ることで、ミュージカルシーンが始まります。
最初は、まだお姉さんが1人で歌ってますね。
サングラスをクルクルっと回して、車の中にポイッと捨てます。
これは「これから本音を言うぞ」というサインですね。
それまでずっとサングラスを掛けていたということは、「自分が抱き続けている夢というのをあまり他人には語っていない」ということなんです。
あくまでも、自分だけの夢として抑えていた。
だけど、このサングラスをポイッと車の中に捨てて、素顔を晒すことによって、「ちょっと抑えていた本音というのを出す」ということを暗示しているんです。
彼女は「And live inside each scene~♪」と歌います。
あえて訳すとしたら、「だって、私はスクリーンの中で生きて行くって決めたんだもの!」という感じでしょうか。
なぜ、サンタフェで彼氏を捨てたのかについて「女優になると決めたから」と言って、サングラスをポイッと捨てるというアクションをやってるんですね。
・・・
そして、「お金は全然ないけども、グレイハウンドバスに乗って飛び出した」と歌うところで、周りから男性がどんどん出てきて、コーラスが4人くらいに増えていきます。
なぜ、ここで他の人達も一斉に車から出てきて、同じ歌を歌うのかというと、「彼らはみんな同じ夢を持っているから」なんですね。
「故郷も仲間も捨てて、なぜハリウッドに出てきたのかというと、映画俳優になるためだ!」と。
この渋滞中の車に乗っている人達は全員、同じ夢を持っているんですよ。
そもそも、この渋滞というのは、単に見ず知らずの人達が高速道路の渋滞に巻き込まれたんじゃないんですよ。
この人達というのは、それぞれが別の音楽を聞いていた。
つまり、別のことを考えていたんですけども、でも、実は全員、同じような夢を持ってハリウッドにやって来たというのが、ここでハッキリわかるんですね。
つまり、別のことを考えていたんですけども、でも、実は全員、同じような夢を持ってハリウッドにやって来たというのが、ここでハッキリわかるんですね。
なぜ、渋滞で車が止まっているのかというと、「そうやって夢を追いかけてハリウッドにやって来たのに、何も進んでいないじゃないか!」みたいに、彼らの人生そのものが渋滞していることのメタファーなんですね。
このメタファーを、この画面だけで一発で見せてくれるので、この辺りから、僕はゾクゾクするのを止められなくなるんです。
・・・
これね、日本の漫画ではよくやるんですよ。
日本の漫画では、自分の脳内シーンとして「せっかく東京に出てきたのに、俺は何してるんだろう? ずーっとエレベーターの順番を待ってるみたいじゃないか」っていう描写がよくありますよね?
そういうものを絵として見せることについて、日本では漫画が優れていて、アメリカは映画表現が優れているっていうことなんです。
これは本当に、計算で作ってるんですよ。
なぜ、これだけのシーンにドキドキワクワクするのかというと、たぶん、僕らが日本の漫画を読んだ時に感じるように、心の中で、これが何を意味しているのかがちょっと分かるから。
だから、こんななんでもないシーンでワクワクするんです。
これ、本当に、カメラの動きだけでいったら、ただ単に「カメラが車の列を捉えて、その内の車1つがアップになって、中からお姉さんが出てきて、ちょっとカッコいい歌を歌いながらダンスして、カメラが後ろに下がって行く」というだけのシーンだから、本当はゾクゾクするような要素なんかないんですよね。
でも、僕らがこれを見たときに、なんかゾクゾクとくるのはなぜかというと、心の中で、こういったサインを感知してるからです。
つまり、漫画を読んで訓練されているように、映画を見ている僕らも、ちょっと訓練されているわけです。
こういった「みんなが夢を持ってこの街にやって来た」という世界観というか、この世界の成り立ちそのものを絵だけで見せてしまえるというところが、このオープニングのシーンのすごいところですね。
僕はもう、この辺りからゾクゾクするのが止まらなくなってくるんですけども。
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