季刊『フラタニティ』創刊アピール 2015.12.5
季刊『フラタニティ』は、「友愛を基軸に活憲を!」をモットーに刊行されます。
敗戦70年の節目の年は、残念なことに9月19日に戦争法(安保法制)の成立を許してしまいました。敗戦いらいの平和を希求する人びとや運動は大きな敗北を喫しました。しかし、2015年安保闘争は、歴代の内閣法制局長官や憲法学者などがきっぱりと「違憲だ」と声を上げ、シールズやママの会などの自律的な活動の急速・広範な展開によって、新しい可能性を切り開きました。若者たちの「民主主義って何だ」の叫びを定着・深化することが、9・19を時代暗転の転機にするのではなく、〈活憲〉の新しい時代を創造する出発点にする道です。
私たちを取り巻く情勢は、日本でも世界でも不安定で不安の度を日々高めています。地球環境の劣化が深刻に進み、アメリカの一極支配は崩れ、中国が世界第二の大国として台頭しています。民族対立や宗教対立をも基礎に、各地で紛争と戦争が激化し、シリアでは人口の半分が難民・国内避難民になっていて、ヨーロッパ全体が難民問題の深刻さに直面しています。「イスラム国」によるテロが世界を揺るがせています。
軍事的対応では憎悪の悪循環を断つことはできません。諸国民の友愛を基軸とする友愛外交と東アジア共同体への展望が〈平和の創造〉の活路です。
憲法と日米安保体制との二つの法体系を特徴とする戦後日本は、今、人口減少と高齢化が急速に進み、介護が過重負担となり、農村の過疎化も拡がり、空き家が14%にもなっています。非正規労働者が就労人口の40%に増え、劣悪な労働条件を強いられ、貧困率が17%=子供の6人に1人が貧困家庭で進学・就職が困難となっています。地域近隣の人との繋がりが希薄となり、無縁社会が犯罪の誘因ともなっています。電子機器の発達は、健康を害するだけでなく、人間のコミュニケーションのあり方に変異をもたらしています。脱原発の実現と経済成長至上主義を見直すことが求められています。
〈友愛〉は、18世紀のフランス革命いらい「自由・平等・友愛」として広く知られています。しかし、日本国憲法には「自由」「平等」は書かれていますが、「友愛」はありません。日本共産党の綱領でも同じです。このことは、裏側から〈友愛〉の意義・大切さを示すものではないでしょうか。利潤追求を目的・動力として「資本と賃労働との対立」を経済の基軸とする資本制社会の悪弊・災厄を根本的に変革・突破する道は〈友愛〉を基軸とする努力によってこそ切り開かれる、と私たちは考えます。〈友愛〉の核心は、現在の自分ではなくて、歴史と社会(他人)を深く理解し、協力しあう志向性にあります。〈友愛〉の核心は、現在の自分ではなくて、歴史と社会(他人)を深く理解し、協力しあう志向性にあります。私たちは、現在の自分には大きな欠落があるという自覚から出発します。
当面する日本の政治における最重要な課題は、戦争法の廃止を闘い取ることです。同時に、〈沖縄差別〉を構造化する〈対米従属〉の重い現実を直視し、〈対米従属〉からの脱却を実現することです。合わせて、歪曲民主政をもたらしている選挙制度の改革も喫緊の課題です。また生存権所得(ベーシックインカム)や協同組合経営など、資本制経済を乗りこえることにつながる制度の実現も重要な課題です。
それらの数多くの課題を、どのような日本を創り出すのかを明示する〈憲法改正案〉として成文化することが求められています。それは、一個人や一組織で作れるものではありません。広く知恵を結集しなくてはなりません。日本と世界をより総体的に認識する必要があります。季刊『フラタニティ』は、その小さな歯車の一つとして、創刊されます。ともに〈活憲〉の時代を切り開いていきましょう。
〈付〉上記のアピールは小さな編集委員会でもいろいろ異論があります。一つの方向として、深く考える素材として発せられたものです。
編集委員会
編集長:村岡 到 NPO日本針路研究所
編集委員:
佐藤和之 高校教員
澤藤統一郎 弁護士
出口俊一 兵庫県震災復興研究センター事務局長
西川伸一 明治大学教授
平岡 厚 元杏林大学准教授
松本直次 ヤマギシ会東京案内所
吉田万三 元東京都足立区長
創刊号の予定
B5判 64頁 |
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