鳩山理事長は9月2-5日ロシア・サハリン州を同州ホロシャビン知事の招きで訪れました。
知事との会談では、日本、北海道とサハリン州の貿易や今後のエネルギー問題について積極的な意見交換が行われました。その後、サハリン総合大学経済・東洋学部で日本語を学んでいる、韓国系を含む学生たちとの懇談会に参加しました。最初は照れ臭いのか、もじもじしていた学生たちですが、「なぜ、政治家を辞めたのか」など、理事長も即答に窮する質問も出て、大変温かい交流の時間になりました。
2万ヘクタールにも及ぶ温室栽培場、ソフホズチェプリチニイも見学しました。すべてがオートメーション化されていて、主にレタスやトマト、またバラの栽培が行われていますが、今後さらに品目を増やし、日本との技術協力が期待されています。
今回の目的の一つであるサハリン州水産局長をはじめ、サハリン水産業界の方々と会談をしました。すでに日本(北海道)とは交流があるため具体的な問題を協議しましたが、水産資源、特に鮭がサハリンでも少なくなっている現状や、加えて、ウクライナ問題による経済制裁で、ノルウェーからの鮭輸入が30万トンも減らされていることの影響等も伺いました。今後、水産加工品の分野で技術協力により共存を図っていくことを話し合いました。
さらに、最大の目的であるガス・火力発電所や、東洋一と言われる液化ガス(LNG)工場を見学しました。石炭、石油、LNGの輸出も現状では重要です。しかし、サハリン州で発電した余剰電力を日本に輸出する「エネルギーブリッヂ構想」は、現状でもまだ原発を再稼働しようとしている大手電力会社にはあり得ない発想かも知れませんし、電力輸出や発送電分離に関する法改正など、クリアしなければならない問題は多いですが、CO2削減を含め21世紀のエネルギー、また、東アジア共同体構築のための重要なカギになると確信します。
ホロシャビン知事との会談内容(要約)
【ホロシャビン知事、以下(ホ)】
サハリン州の石油輸出の3割、液化ガスの8割は日本向けで、他に70万トンの石炭や7万トンの水産物を日本に輸出している。石炭の埋蔵量は、サハリン州内の新しい火力発電所のために十分な埋蔵量がある。ロシア側のワーキンググループを作り、プーチン大統領の協力を得て、金融経済モデルを作成し、「エネルギーブリッジ」構想を考えており、日本企業が関心を示している。
現在、ガス液化(LNG)工場の建設プロジェクトを検討中で、日本企業が輸出契約に調印し200万トンの輸出、2019年に稼働予定。ガスプロムが関係する他のLNGの第三プロジェクトも計画中。
「エネルギープロジェクト」はロシア連邦も支持しており、北海道も関心が高い。今回の鳩山先生の訪問が、実り多い滞在になるよう期待している。
サハリン州としては、今後日本と交流したい分野は、代替エネルギー(風力、太陽光)、水産加工、農業プロジェクト(雪氷倉庫)など。忙しい滞在であるが、希望が叶えられるよう協力する。
【鳩山、以下(鳩)】
忙しい時間を割いて会談の機会を頂き、祖父一郎の日ソ共同宣言以来の縁で、私とロシアの関係が今あることに感謝する。1月にお会いしてご招待を受け、今回来訪が叶い、温かい歓迎にあらためて礼を言う。
先ほど、ホ知事から日本とサハリン州の深い関係の説明を受けたが、日本ほど輸入に依存している国はなく、資源小国である。これはエネルギーをロシア、中東に依存しているからである。エネルギー分野において日本は積極的に協力するべきである。とくに、2011年3月11日の大地震による福島原発事故以来、原発に依存しないエネルギー体制をつくらなければならない。私は2009年総理就任直後に国連でCO2削減について演説したが、真剣に地球環境問題に取り組まなければならない。
CO2削減のためにLNGの活用に関心がある。2019年の新しいLNG工場建設には、日本企業も強い関心をもっており、明日、その東洋一と言われる工場を見学する予定でいる。
また、石炭の埋蔵量にも関心がある。4、5日前に日本のJパワー(電源開発)の火力発電所を訪問した。この工場は硫黄分の排出が少なく発電効率が良い、世界で最もすぐれた火力発電である。
エネルギー・ブリッヂについて、将来的に石油、石炭、LNGの輸出ではなく、地域で発電した電力を互いに共有する方が良いと思う。日本政府がこのプランを今、支持しているかどうかはわからないが、現在、サハリン州と北海道を電力網で結ぶプランを作ることが重要ではないか。日本の大手の電力会社において、発電と送電が同じ会社で行われており、その電力会社が原発に固執しているため、より容量の多い送電網の構築に積極的ではない。
かつてプーチン大統領にお会いした時に申し上げたが、「サハリン州と北海道を橋で結ぶプロジェクト」は夢のようなことだが、大事な話ではないか。
代替エネルギー、風力、太陽光については、協力できる分野が多い。
農業、水産業については、北海道と共通する問題が多い。余剰エネルギーを冬の農業栽培に役立てるのは重要であるし、具体的に協力できる。
ウクライナ問題について、(経済制裁を巡って)日本とロシアの間には若干隙間風があるかも知れないが、このような時こそ、しっかりとウィンウィンの関係を構築すべき。
(ホ)
詳しい専門的な問題を提起して頂いて、大変興味深い。ウクライナ問題について、ロシアが日本に対して制裁をしていないのは、日本はロシアの重要な相手だから。今後とも交流を強めなければならない。鳩山先生と会うのは、5、6度目で、首相時代にもお会いしている。今後、私たちの交流はますます深まるでしょう。
エネルギーの輸出については、日本のインフラ整備、法律の改正(送発電の分離)が必要だと思っている。
文化交流、人的交流も必要であるし、ユジノサハリンスクにある樺太時代の建物も修繕し大切にしている。日本の歴史も大事だし、横綱大鵬関の生家も保存している。
(鳩)
日本との友好を大事にしていることを知り、嬉しく思う。私は10月にロシア文化フェステバル日本側委員長として訪ロし、(ロシア側の委員長である)ナルイシキン国会院議長とも会談する予定。サハリン州の益々の発展を期待している。