日本の多くの人々は、普天間米軍基地の「最低でも県外」(実際には国内での受け入れは困難なので、実質国外移転を意味する)は日米関係を損なうので、実施できないと思っている。
したがって、沖縄には申し訳ないが、もし普天間米軍基地の移転は沖縄内で、つまり辺野古移転しかないと思っている。この考えに基づき、安倍政権は沖縄の自民党議員に圧力をかけ、沖縄知事に圧力をかけ、辺野古移転を認めさせた。金で強引に認めさせた。そうでなければ、米軍は普天間にとどまるしか方がないとの論を展開した。この考えは本当に他に選択肢がないのであろうか。実は、全く違う選択肢を示してくれるのが、ドイツと米国の(米軍)地位協定ボン補足協定1993年改定にある。
本間浩著「ドイツ駐留NATO軍地位補足協定に関する若干の考察 ――在日米軍地位協定をめぐる諸問題を考えるための手がかりとして――」(外国の立法221(2004.8)がある(以下資料Aと言及)
48条5
軍隊又は軍属機関による施設区域の返還については、次の規定を適用する。
⒜軍隊又は軍属機関の当局は、使用する施設区域の数及び規模を必要最小限度に限定することを確実にするために、施設区域の需要について絶えず検討する。これに加えて、ドイツの当局から要請があるときは、個々特殊な場合におけるその需要を点検する。(省略)
特定の施設区域については、共同の防衛任務に照らしてもその使用よりもドイツ側の利益が明らかに上回る場合には、ドイツ当局の当該施設区域の返還請求に適切な方法でこれに応ずるものとする。
そして資料Aは次の記述をする。
「この第48条第5項⒝にいう「ドイツ側」の「利益」という基準は、合意議事録ではいっそう明確に表され、「ドイツの非軍事部門の基本的な必要性、特に国土整備、都市計画、自然保護および農業上、経済上の利益に基づく」と表現されている。」
日本では、「代替地をどこにするか」が議論され、代替地がない場合は居残りを当然」とした。
しかし、ドイツにおいては「ドイツの非軍事部門の基本的な必要性、特に国土整備、都市計画、自然保護および農業上、経済上の利益」が基地の役割よりも大きいとみなされる時には、「ドイツ当局の当該施設区域の返還請求に適切な方法でこれに応ずるものとする」とされているのである。
勿論、日米間の地位協定にこの条項が入っている訳ではない。しかし日本側は、米国が同盟国ドイツに与えている方針で対応したいという事が十分できる。
これを考える時、鳩山政権の時、「最低でも県外」と言った時、「日米関係が壊れる」という論陣をはった人々がいかに米国に隷属的対応をしたかがわかる。
(孫崎享)
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