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武尊vs那須川天心はなぜ実現しないのか?〜あるいは馬場イズムのキック公園〜

2015/12/14 00:09 投稿

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年末格闘技興行RIZINに新生K−1勢が参戦! K-1 WORLD GP 55キロ王者の武尊、HIROYAを軸とした2試合がK−1ルールで行われることが発表されたが、RIZIN実行委員長の榊原信行氏は記者の質問に答えるかたちで「武尊vs那須川天心」の実現に向けて動いていたことをあきらかにした。
キックファンがいまもっとも見たいカードとして挙げられている武尊vs那須川天心。以前から那須川サイドが対戦アピールを繰り返しているが、キック界では実現の気配はなかったため、第三者の舞台で地上波テレビを背景とするRIZINに期待が寄せられたというわけだ。
古くは猪木vs馬場、記憶の新しいところでは田村潔司vs桜庭和志など、実現の可能性は浮かんでは消え、ファンをヤキモキさせ続けたスーパーカードはいつの時代にもあった。田村vs桜庭は数年の時を経てリングで対峙したが、この武尊vs那須川天心はどうなるのか。このカードの背景を格闘技ライターの高崎計三氏に伺った。








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日菜太はなぜRIZINに直訴したのか?
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金原弘光のゼロゼロ年代クロニクル
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――新生K−1(Krush)の武尊選手とRISEの那須川天心選手が「やる、やらない」で盛り上がってるので、本日はキックボクシング事情に精通している高崎さんにいろいろとお聞きします!

高崎 精通は微妙かもですが(笑)、お話できる範囲でよろしくお願いします。

――本題に入る前に、キックってプロレスと同じくリング外の問題でゴタゴタするイメージがありますよね。

高崎 キックは最近ゴチャゴチャしてるんじゃなくて、ずっとゴチャゴチャしてるんですよ(苦笑)。

――あらまー。そういえば、私も90年代はキックをよく見に行ってたんですよ。佐久間晋哉が全日本キックのチャンピオンだった頃まで。

高崎 なぜ佐久間晋哉が区切りに(笑)。

――そのあとの分裂をきっかけにあまり興味がなくなって。

高崎 なるほど。昔から揉め事はよくあったんですけど、要は情報化社会になって、より表に出てきた。これまではキックマニアしか知らなかったことが、なんとなく聞こえてくるようになったから「キックってそんなことになってるの?」と受け止められているところはありますね。

――ゴタゴタの主な原因は移籍絡みなんですよね。

高崎 それが多いですね。キック界がなぜ移籍に厳しくて、移籍金が発生することになったのかを考えてみたんですけど、70年代後半からテレビの後押しによるキックブームが起きたじゃないですか。あの頃にできたんじゃないかな、と。

――ボクシングに習ったわけじゃなくて?

高崎 もちろん参考にしたのはボクシングだと思います。初期のキック界はいろんな点でボクシング界を参考にしてきてて、階級もボクシングと一緒じゃないですか。連盟、加盟ジム方式も同じ。逆にMMAの場合は、お手本というか原型がプロレスだったんですよね。いまのMMAイベントは元をたどればプロレス興行の流れですし。ただ、いまはDEEP、パンクラス、修斗以外に単発のイベントも増えてきたじゃないですか。イベントをやり始めると「じゃあチャンピオンを作るか」ってことになって王座が乱立してきて、だんだんキックと同じ道をたどることになりそうですよね。

――日本のMMAイベントのあいだには「引き抜きはしない」という暗黙の了解みたいなルールがあるようですが、MMAファイターのジム移籍に関しては比較的自由ですよね。

高崎 キックは70年代のブームでお金を生んでいたから、移籍金なんかのルールができたんだと思うんですよ。MMAジムも早くから「選手がお金になる」ということになっていれば、話は違ってきますよね。

――実際にキックでは移籍トラブルで一時的にリングに立てなくなったり、そのまま引退せざるをえなくなった選手もいるんですよね。

高崎 そうですね。出て行かれたジム側が怒って、各団体にお触れを回したりすることもあるんですよ。「アイツを使うな」と。

――
お触れ!

高崎 空手でもそういうことがあると聞いたことがありますけど。

――お触れを破るとどうなるんですか?

高崎 あんまり強引にやると、そこのジムの選手を試合に出してもらえなくなったりとか、団体を運営することであとあと面倒なことになったりしますね。

――なるほど。キックボクシングはひとつの統治された世界ではなくて、団体やイベント、ジムのそれぞれが独立国家として成り立ってるけど、同盟やら不可侵条約がボンヤリとながら結ばれているという。

高崎 そうですね。団体が少なかった頃は、お互いに「商売敵」という意識がもっと強かったと思うんです。たとえば90年代の全日本キックとMAキックですよね。それでも交流戦や対抗戦はありました。いまは選手の貸し借りはもっと当たり前にあるし、プロレス界と一緒でどこに誰が出てるのか複雑すぎてわからないというか。

――交流が当たり前の状態なんですね。行き来していない団体間はあるんですか?

高崎 ありますね。今後どこがどういう関係になるかはわからないから言いませんけど(笑)。

――今日の味方は、明日の敵になる(笑)。

高崎 団体間の交流が活発だから、どこかとトラブルになった選手はすぐ情報が回って他でも敬遠されますよね。だいぶ変わってきてはいますけど、まだまだキックジムって「押忍!」の世界なところが多いんです。選手にリングの選択権はほとんどなくて、そこはジムの会長が決めてきたりする。それに最初にジムに入門するときって「家の近所にあったから……」とかの理由じゃないですか。だけど、そこのジムはイベントAと付き合いが深くて、別の団体Bには出られないとか。そんなことを最初から理解してジムに入る選手って少ないじゃないですか。

――たしかに(笑)。

高崎 しかもイベントAに出られるからと思って入ったのに、情勢が変わって団体Bにしか出られなくなるようなケースも充分に起こりえるんですよ。

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