格闘技界一の読書家として知られる笹原圭一氏が 書評をライジングするこのコーナー。今回取り上げる本は「真説・長州力 1951-2015/田崎健太」です!







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月もいよいよ後半を迎え、今年も残すところ二ヶ月あまり。

普通に生活をしていれば、この時期に年の瀬を実感するようなことは少ないと思いますが、マット界で10月後半といえば12月中旬くらいのイメージでしょうか。砂時計が落ちていくように、じりじりと焦る気持ちが堆積していくわけです。

 

というわけで、追い詰められるような日々を送っておりますが、それでも私にとって読書は息抜きとして必要な時間。休みの日に腰を据えて大書に取り組むというよりも、通勤の電車のなかで活字を追って現実逃避をしています。

このままのペースで行けば、おそらく2015年の読書冊数は、ざっと150冊くらいでしょうか。普段本を読まない方からすると多いと感じられるかもしれませんが、世の「本読み」と呼ばれる方からすれば、序二段くらいのレベルです。1日1冊のペース、つまり通年で365冊くらい読む方で、ようやく幕内くらいでしょうか。私の知り合いのなかには、その倍くらい読む、横綱クラスの方が数人います。

それでも、全出版物のなかのほんのごく一部を読んでいるにすぎません(今年、どれほどの書籍が出版されたのか分かりませんが)。

かつて芥川龍之介が生涯に読むことのできる本の冊数を数え、そのあまりの少なさに絶望した、なんて話を聞いたことがありますが、ここまでくると未読恐怖症みたいなものなのかもしれません。

 

総合格闘家やプロレスラーで言えば、どのくらいの試合数をこなせば、「一人前」と呼ばれるようになるのでしょうか。

総合の公式なレコードで最多試合を保持している選手は、間違いなくダン・スバーンでしょう。格闘技サイトのシャードッグによると10119敗7引き分けなので、計127試合(!)。次点が9122敗5引き分けで、118試合を記録しているジェレミー・ホーンでしょうか。ホーンは現在40歳で、今年に入っても試合をしていますので、いずれスバーンの記録を塗り替えるかもしれません。すげぇ。

90年後半に勃興した総合は、たかだか20年程度の歴史しかありませんから、戦歴や過去を探ることは比較的容易です。映像も残っていることも多く、その一戦がどんな意味合いで行われたのか、という付随した話を探ることも難しくはないでしょう。

一方で、プロレスに目を転じてみるとどうでしょうか。丹念に追えば試合数や結果を探ることはできますが、その試合にまつわるエピソード、というか真実を探ることは容易ではありません。

例えば、99年の小川vs.橋本の1.4事変。試合結果はご存知の通りですが、あの試合の真相は、諸説入り乱れて、何が本当のことなのか誰も分かりません。もっと言えば、当事者たちすら分かっていないと言っていいかもしれません。


というわけで今週は、プロレスの「そこが丸見えの底なし沼」感を存分に感じられる一冊を紹介しましょう。

「真説・長州力 1951-2015/田崎健太」です
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このインタビューの続きと、榊原信行、石川雄規、アニマル浜口物語、スコット・コーカー、プロレス点と線、金原弘光、中井祐樹日記などの記事がまとめて読める「詰め合わせセット」はコチラ http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar901262