好評連載・大沢ケンジ師匠の格闘技談義。今回は特別企画として、大沢師匠がかつて所属していた和術慧舟會について、後輩の「X」氏と激語り! 全国に支部を展開、多くのプロ格闘家を送り出し、「ケージフォース」や女子格闘技などのイベントを運営。PRIDEやK−1などメジャー団体にも影響力を与えていた格闘技集団とはなんだったのか? 1万字対談で迫ります!






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大沢 今日は和術慧舟會時代の後輩を連れてきたんですよ。

 どうも。諸事情により名前は明かすことはできないんですけど(笑)。

――よろしくお願いします(笑)。ゼロゼロ年代の格闘技事情について話せる範囲でいろいろとお伺いしたいんですが、和術慧舟會って全国にジムのネットワークを持っていて、多くの選手を輩出して、自前で興行をやりながら、PRIDEやK−1にも食い込んでいた。独特の存在感がありましたよね。

X ケージフォースにはあのドナルド・セラーニが来てましたしね(笑)。

大沢 スゲーな!(笑)。いやあ、もうあんな集団は二度と出てこないでしょ。俺も和術慧舟會とは何だったのかを知りたいんだよね!

 大沢さんだって慧舟會には長いこといたんですから、詳しいでしょ?(笑)。 

大沢 いやあ、それがそこまで深くは知らないんだよ。俺は久保(豊喜)社長にはそんなにかわいがられてなかったから。

――久保さんはGCMコミュニケーション代表として慧舟會のジムやイベントを運営されていた方ですね。

大沢 いま全国各地で活動している慧舟會は、それぞれ独立採算制でやっててかつての和術慧舟會とはもう関係ないんだけど。俺は当時の慧舟會の中心で何があったのかはよくわからない。XはGCMのスタッフとも仲が良かったでしょ。

X そうですね。でも、話せないことのほうが多いですよ(笑)。

大沢 まだ慧舟會の関係者も業界に残ってるし、昔話ってけっこう危ないのかあ。

X いい話もたくさんありますけどね。慧舟會はやたら新しいもの好きというか、インターネットのサイトの立ち上げも早かったじゃないですか。当時は「何をやってるんだろ?」って感じで眺めてましたけど(笑)。

大沢 ああ、たしかに早かったね。

 ほかの格闘技団体と比べても5年くらい早かったですよ。それは映像やネットに詳しいスタッフが内部にいたからですけど。

大沢 大会DVDもすぐ作って販売していたし。

X Tシャツもあの当時はバッカみたいに売れてたみたいですよ。一番いいときはまだ慧舟會に入ってなかったから知らないですけど、スポーツアパレルショップに1000枚近く卸してたみたいで。

――1000枚!

大沢 凄い売れてたよね。

 PRIDEの会場にもグッズを卸してましたし。

大沢 桜庭さんが最初のPRIDE GPに出たとき、俺はまだ慧舟會に入ってなかったんだけど。そのときグッズ売り場でシールを買ったんですよ。そのあと慧舟會に入って1年くらい経ってから「あれって慧舟會のシールじゃん!」って気付いて(笑)。

 慧舟會の選手が誰も出ていないのにグッズだけを売ってたときもあったみたいですよね(笑)。GCMは格闘技以外にも事業をやってましたけど、カレー屋をやってましたよね?

大沢 ああ、あった! カレー屋、あった!(笑)。

 美味しかったですよね。カレー屋のときは千葉支部軍団が駆り出されて、床のタイルやクロスを張ったりして(笑)。

大沢 カレー屋に限らず選手たちがいろいろと手伝うんだよなあ(笑)。社長ってとにかく行動力は凄かった。いろんなことを思いついて、すぐに動いていた。やりたいことを先に決めて、人材は「誰か働いてないでフラフラしてる奴いるだろ!」って感じで。

――ハハハハハハ!

X 一事が万事そうでしたね(笑)。大沢さん、スキー場に放り込まれませんでした?

大沢 あ、新潟のスキー場?(笑)。

X そうですそうです。スキー場のホテルのバイキングの配膳、片付けをやるという。スキーシーズンのかき入れ時に連れて行かれた選手がいましたよね(笑)。

大沢 ◯◯関係のビラ配りもやったこともあったなあ(笑)。

――ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ! 絶対に載せられない(笑)。

X 場所は忘れましたけど、警備関係の仕事もありましたよね。

大沢 それ、いろんな選手がやってたじゃん。

X でも、選手全員クセがありすぎてケンカしてやめちゃうんですよ(笑)。

――警備になってないですよ!(笑)。そういう仕事って久保社長が持ってくるんですか?

X そこは久保社長の出身だった拓大柔道部人脈とかじゃないですか? 拓大のOBの紹介で仕事が回ってきて。

大沢 そもそも社長が格闘技関連の仕事をやることになったのも拓大方面の話だしね。

――和術慧舟會って全国各地に支部がありましたよね。

X 北海道、岩手、福島、富山、群馬、山梨、兵庫、九州総本部……。

大沢 静岡と沼津、あと愛知にもあった。

 直轄道場以外の地方支部からは看板料を取ってなかったらしいんですよね。そこは久保社長が凄かった。

大沢 だって昔は月謝もろく払ってなかった選手が多かったでしょ(笑)。

X そうなんですよね(笑)。

大沢 あの当時の慧舟會って会費を払わない奴が多かった。社長がホントに凄いなと思ったのは「プロになりたくて頑張ってる奴だったら払わなくていい」と。そうなると会員さんの中でも払わずに通おうという奴が出てくる。俺たちから金を取らないから、いろいろと手伝いをしても社長はお金を払わないんだけど(笑)。

――いい話になりそうだったのに!(笑)。

大沢 誤解しないように言っておくと、ファイトマネーはちゃんともらってましたよ。社長からすれば、お金の関係じゃないから「気持ちでやれんだろ!」みたいな感じだったと思う。

X その関係が成立しなくなったから、慧舟會って終わっちゃったと思うですよねぇ。

大沢 俺もそう思う。社長は東京本部のプロ練を毎日、見に来るとか、格闘技への愛情は本当に凄いというか、選手を育てたい気持ちは強かったと思うんだよね。強い選手はどうやっても生き残るんですけど、そうでもない奴は勝ち癖をつけて這い上がらせるとかね。それは自前でイベントをやってたから可能だったんだよね。

――GCMは、FEGのMMAイベントHERO'Sの運営も関わってましたよね。

X 要するに慧舟會の人間が競技運営を仕切ってたみたいですよね。

大沢 慧舟會の選手がバイトとして現場でもそれぞれ動いてたんだけど、俺は社長とレフェリー陣の小間使いに配属されて。社長からはそんなにかわいがられてなかったから、けっこうイヤだったんだよ(笑)。

X 大沢さん、カメラリハでリング上でスパーやってましたよね?

大沢 やってた(笑)。HERO'Sって常に何か問題が起きていた記憶があるんだよなあ。

X 毎回何かしら事件は起きてましたね(笑)。

大沢 社長が「今日は凄いことが起きるぜ!」って言ってて、何が起こったかといえば桜庭(和志)さんが突然リングに登場したり。

――代々木第一の電撃移籍のときですね。

 有コロのときも凄かったじゃないですか。

大沢 秋山(成勲)さんと金泰泳選手の試合?

X ああ、あの試合もレフェリーストップで一悶着ありましたけど。桜庭さんの試合もヤバかったじゃないですか。

――桜庭さんのHERO'S移籍第一戦となったケスタティス・スミルノヴァス戦ですね。パウンドを食らった桜庭さんが半失神してるのにレフェリーが試合を止めないという。

 「レフェリーが止めないと桜庭さん、死んじゃうよ!」という状況で。リングサイドで赤いジャケットの大男が「おい、何をしてるんねん!止めなきゃアカンだろっ!!」って怒鳴ってたって聞きました(笑)。

――前田日明!

 そこからなんだかんだで桜庭さんが蘇生して、逆転勝ちを収めたんですけどね。大会も終わって控室の片付けをしているところに、壁をドンドン殴りながら競技運営の控室に近づいてる人間がいたそうなんですよ……。

――うわあ(笑)。

 何かと思えば、前田さんが勢いそのまま「どうなってんじゃ、コラァ!!」って怒鳴りこんできたそうで。    

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