Dropkick編集部の斉藤です。話題沸騰の「UFCファイトパス」ですが、橋本さんの体験テキストを掲載する前に、とても複雑なことになっている日本におけるUFC視聴環境を私なりに整理してみました(高橋ターヤンさんにもアドバイスをいただきました!)。もし間違えなどがあったら「ここがおかしい!」とツイッター(majan_saitou)までご指摘お願いします〜。

【非会員でも購入可】ヤノタク、堀辺正史と骨法を語る/菊田早苗の90年代インタビュー(¥540)


『UFC.TV』……パソコンからすべてのUFCの生中継イベントが購入できる。要はパソコンがあって『UFC.TV』に登録さえすれば、UFCの全イベントを網羅することができる。ただし、UFCは毎週のように開催してるから全部見ようよするとお金がバカにならないです……。視聴可能番組はファイトパスに準じます。


WOWOW……『UFCナンバーシリーズ』、『UFC on FOXシリーズ』を中継。PPVカード(orメインカード)から生放送を開始するためプレリム(いわゆる前座)に日本人選手が登場するときは全試合終了後に放送。なお、これまでプレリムはFacebook等で生放送していていたが、今後は 「ファイトパス」中継に移行。
 また、リアリティショー『TUF(ジ・アルティメット・ファイター)』シリーズのうち、ラスベガスで開催されるシリーズも放送(現在ロンダ・ラウジーとミーシャ・テイトが女子コーチの回をやってますよね)。視聴料金は月額2000円程度。『UFCナンバーシリーズ』のPPVカードが19.99ドルだからかなりお得です。


FOXスポーツ&エンターテイメント……アメリカFOX SPORTSの『UFC Fight Nightシリーズ』などを生中継。ウィークリーマガジン『Ultimate Insider』、マンスリーベスト『Unleashed』とシーズンベスト『Ultimate』などの関連番組も放送。視聴料金は月998円。『Ultimate Insider』は系列のFOXチャ
ンネルでも放送。


ニコニコ生中継……川尻達也のUFCデビュー戦など、アジア地域開催の『UFC Fight Night』を生放送した。番組購入額525円。いまのところ川尻達也vsクレイ・グイダのアブダビ大会の放送予定はなし。

ひかりTV……後日、日本語解説つきで放送。過去大会はオンデマンド視聴できる。その場合は大会ごとに購入するシステムで、1イベント(基本メインカードのみ)辺り525円程度。視聴期間あり。過去大会やPRIDEなどの一部は無料視聴可能。


ファイトパス……今回のテーマである「UFCファイトパス」がこれ。アメリカFOX SPORTSで中継されていない『UFCFight Nightシリーズ』を生放送。加えて、PPVイベントやアメリカFOX SPORTSで中継される『UFC Fight Nightシリーズ』のプレリム(前座)試合を放送いまのところPPVイベント以外はすべてファイトパスで視聴できる模様! 4月だけいえば川尻vsグイダ、ノゲイラvsネルソンの4.11アブダビ大会、ケネディvsビスピンの4.16『UFC Fight Night』、ブラウンvsヴェウドゥムの4.19『UFC Fight Night』、UFC172のプレリムがライブ視聴できる。PPVイベントのライブ購入も可能。
 我らが川尻達也が出場するアブダビ大会はファイトパス中継枠になりそうなので、この機会に登録してみるのもいいでしょう。
 ウィークリーマガジン『Ultimate Insider』、マンスリーベスト『Unleashed』とシーズンベスト『Ultimate』などの関連番組、大会後の記者会見やインタビューも放送(字幕なし)。海外
TUFも視聴でき(ヴァンダレイvsソネンのコーチ対決がスタート!)、UFC、PRIDE、STRIKEFORCE、WECの過去アーカイブも見放題。これで9.99ドルは安い!


 
……どうでしょうか? 「なるほどわからん!」という声が聞こえてきそうですが、私はいまのところWOWOW(月額2000円程度)+ファイトパス(月額1000円程度)の組み合わせ。月額3000円足らずでUFCの世界をほぼカバーできることになります。それでは橋本さんのテキストへ……。


『UFCファイトパス』の楽しすぎてヤバいサービスと、格闘技への接し方の変化について。
文/橋本宗洋

 噂のUFCファイトパスに加入してみた。サインインしてサイトをザッと眺めた瞬間、「あ、これはヤバいぞ」と思った。なぜか、という理由を書く前に、まずUFCファイトパスについて簡単に説明してみよう。
 これは、UFC公式の月額制インターネット映像配信サービス。値段は月9ドル99セントだ。何が見られるのかというと、まずは世界各地で行なわれている『UFCファイトナイト』の生中継。川尻達也が出場したシンガポール大会や3月のマカオ大会などである。先週末にはイギリス大会が中継された。これらの大会は、映像で見ようとすると基本的に“UFCファイトパスで見るコンテンツ”ということになる。
 過去映像も豊富だ。UFCだけでなく、UFC参加になった団体のライブラリーもある。つまりストライクフォースでありWECであり、そしてPRIDEだ。さらに『THE ULTIMATE FIGHTER』もここでオンタイムで見ることができる。ちょうどTUFブラジル、ヴァンダレイ・シウバとチェール・ソネンがコーチを務めるシリーズが始まったばかりで、タイミング的にもたまらんすね。KO集やベストKO・サブミッション集、インタビュー、ドキュメンタリーといったオリジナル・コンテンツも。
で、こういった映像が月額制見放題で、一つのサイトに固まってるというのがデカい。あっちこっちで映像を拾って“つまみ食い”するみたいなことじゃなく、このサイトにドカンとまとまってるわけで。
 しかもこれ、単に“公式映像がたくさん置いてある”ってだけでもない。映像ライブラリーをピックアップして、トップページで“特集”にすることで食指をそそるようにもなっている。
 次の大会に向けた関連映像集に加えて、選手ごとの特集も。たとえばヒョードル特集では藤田和之戦、小川直也戦、ミルコ・クロコップ戦など7試合がピックアップされている。ということは「ヒョードルの試合が見たいな」ってときに過去映像のコーナーに行って、PRIDEのページに飛んで、そこから「えーっと、藤田とやったのいつだっけ」みたいな作業がいらないわけだ。まあ、それをしてもいいんだけども、何もしなくても向こうから「今日はヒョードルの試合でも見てみるのはどうすか? いくつかまとめましたんで」と提案してくれるわけだ。
 いやヒョードルだけじゃなくて、いまアップされてるのを見るとチャック・リデル特集やホイス・グレイシーvsケン・シャムロック、GSPvsマット・セラなどのグラッジマッチ(因縁の再戦)特集、ミドル級王座変遷史、ファイト・オブ・ザ・ナイト集などなど……。
 これまでも『UFC.tv』で過去映像を見ることはできたわけだが、現在進行形の大会とまとめて、月額見放題となるとアピール力がケタ違いになってくるんじゃないか。リッチ・フランクリン特集なんてのもあって、まあそこまで大好きな選手ってわけでもないけれども「あ〜ヴァンダレイ戦よかったよね」とか「TUF1フィナーレでシャムロックとやってたんだっけ」となって、ついつい見ちゃったりということもあるだろう。
 いやだから、これ凄いんですけどヤバいですよ。いくらでも見続けられるというか、これ見てれば暇つぶしはすべてOKというか。暇つぶしところか、僕みたいな家で原稿書いてる人間には仕事に支障が出かねない。いまこれ書いてる時点で、すでに支障が出てる。さっき編集のジャン斉藤から原稿の催促の電話がきましたよ……。
 なんだか、10数年前にケーブルテレビ入ったときみたいだと思った。あのときも「これはヤバいぞ」と思ったのだ。映画チャンネルに音楽チャンネルにスポーツチャンネル。めちゃくちゃ楽しくて、見まくって、どんどん時間がなくなる。最初は番組案内の冊子見て、録画する番組にペンで印をつけて、なんてやってたんだが、しばらくしてやらなくなった。見たいやつ全部録画してたら、一生かかっても時間が足りなくないか、と。
 まあ『UFCファイトパス』はネットだから多少違うとはいえ、いくらでも見れちゃうってとこは似てるだろう。格闘技だけでそういうメディアが出てくるとはなぁ……。
 しかもですよ。格闘技だけにしたって、『UFCファイトパス』以外にもいろいろある。CSの中継だけじゃなく、ネット番組も。JEWELSは選手をゲストに招いたトークをUSTREAM配信してるし、Krushもニコ動で有料チャンネルをスタート。この『Dropkick』のツイキャスも定期的にやってますな。
 その中でも『UFCファイトパス』は規模が図抜けて大きいわけだが、Krushが気になる人だっているだろうし、女子格闘技が好きだって人もいるわけだし。
 格闘技イコール「まずは地上波で」だった時代との違いときたら凄まじいもんだ。より細かく、より個々のニーズに合わせたサービスがある。それを、ファンが自分でチョイスしていく。“自分用番組表”を頭の中で作るというか。
 そうなると、格闘技メディアの役割も変わってきたりするのか。大会スケジュールだけじゃなくて、ネット番組スケジュールとかも載せたほうがよかったりするんじゃないか。“自分用番組表”を作るにあたってのサポートになるような情報も必要かもしれない。個々の趣味嗜好に細かく合わせてくるサービス、その大まかなガイドというか、大きな入口というか。
 格闘技への接し方がどんどん変わってくる。その人にとって“必要な情報”が何かも変わってくる。取捨選択が常に迫られる、という感じもある。楽しいけど大変。大変だけど楽しい。ほんと、退屈なんてしてらんないっすわ。(橋本宗洋)