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【無料公開】川尻達也ロングインタビュー「すべての格闘技ファンとDREAMスタッフに感謝しています」

2014/01/11 22:41 投稿

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1月4日シンガポールで行なわれた「UFC Fight Night 34 Saffiedine vs. Lim」においてUFCデビュー。2Rチョークスリーパーで見事勝利を飾った我らが川尻達也。序盤はテイクダウンに失敗するなど大苦戦したが、試合後はその苦しみから解放されたかのようなハイテンションマイクアピールが炸裂。「俺がDREAMだ!」と叫んだその真意とは? 歓喜大爆発ロングインタビュー(聞き手/さいちん)



入場前、軽快な動きをしてる相手を見ていたら足がすくんじゃって……

川尻 UFCのクリスマスプレゼントで選手全員がiPadがもらったとか、そんな話を聞いたことありませんでした?
――ああ、聞いたことあるような、ないような……契約したばかりの川尻選手もUFCからクリスマスプレゼントがあったんですか?
川尻 2013年のUFCクリスマスプレゼントはUFCのロゴが入ったグローブとか格闘技用品だったんですよね。「一定の金額分、リストの中から好きなものを選んでいいよ」みたいな感じで。
――それはシンガポールでもらえたんですか?
川尻 いや、そんなメールが届いたんです。まだ選んでないんですけどね。俺、iPadとかもらえるかもしれないとか、ちょっと期待してたんですけどね(笑)。
――まあ格闘技用品は揃ってるからそこまではほしくないですよね(笑)。そうやって環境が変わっていかがですか?
川尻 というか、みんなの反応が超凄いですよね!! 
――たしかに凄いですよねぇ。
川尻 やっぱり1年間、試合をしてなかったこともあるし、UFCという世界最高峰の舞台に挑戦してるというロマンもあるのでしょうし。俺もUFCと契約したことでかなり気合いが入ってるけど、ファンのみんなもとんでもなく気合いが入ってるなあって(笑)。
――ハハハハハ。今回のシンガポールにも日本から応援に駆けつけていたファンの姿をけっこう見かけました。
川尻 前と変わらずみんな応援してくれてますけど、今回はテンションが全然違う。五味(隆典)くんとの試合や魔娑斗戦もテンションが高かったですけど、それよりも凄かったですねぇ。
――正直、今回の試合って視聴環境はそれほどよくはなかったじゃないですか。日本のファンはニコ生でしか見られないわけですから。
川尻 そうですよね。
――昔みたいにテレビをザッピングしてるときにたまたま見つけられるわけじゃないですし。
川尻 「今日はUFCを見よう!」という目的がないと絶対に見ないわけですよね。
――そんな環境の悪さをもろともしないお祭り騒ぎになって。
川尻 ツイッターも凄かったんですよ。試合が終わってツイッターを開けたらリプライが200件くらいありましたから。最終的に300件を超えていて。こんなの初めてですよ!
――リツイートで300件は珍しくはないんでしょうけど、リプライ300件は凄いですねぇ。みんな意志を持って書き込むわけですからね。
川尻 みんな嬉しかったんですね。俺も勝てて本当に嬉しかったですよ……(しみじみと)。
――本当によかったですよ(笑)。
川尻 内容的には不満はありますけど、本当にホッとしました。帰りの飛行機がこのまま落ちてもいいやと思ってましたもん(笑)。
――我が人生に悔いなしの充実感(笑)。
川尻 久々ですよ、こんなに嬉しかったの。修斗のタイトルマッチを取ったとき以来ですよ。最初はかなり苦戦しちゃいましたけど(苦笑)。
――これは勝ったから言えるんですが……最初の攻防で「これは負けるんじゃないか……!?」と思った方は多いですねぇ。
川尻 俺も闘いながらそう思ってましたよ!(笑)。
――闘いながら「これは負けるやつ!」と。
川尻 2回目のタックルって、右ロー→右ストレート→相手の左足に片足タックルというコンビネーションだったんですよ。でも、それって相手がブロッキングして動きが止まってるときの用のタックルで。普通だったら相手がどんなディフェンスをするのか見てから動くんですけど、何も考えずに「とにかく前に出なきゃ!」という気持ちだけでやっちゃったんですよね。そうしたら相手はバックステップしてたから、遠い距離からのクワガタタックルになっちゃって……。
――あんな川尻選手の姿を見るのは初めてだから不安で不安で。
川尻 ウチに練習10割、試合は1割しか力が出ないヤツがいてサカモトと言うんですけど、試合中に「これじゃサカモトじゃん!!!練習の一割も出せてねえじゃん、これじゃ!」って自分で自分にツッコミを入れながら闘ってましたね。
――そんなツッコミを思いつくようなら、じつは余裕あったんじゃないですかね?(笑)。
川尻 いやいや、1ラウンド終わった時点「これは負けるかもしれない」って思ってたし。
――1ラウンド終了の時点でも負けの意識があったんですか?
川尻 だってここで決めきられないとダメだと思ってパウンドまとめたのにレフェリーは止めてくれなくて。最終的に1ラウンドはポイントを取ったと思ったけど、このあとやられちゃうんじゃないかって。
――スタミナは消耗してたんですか?
川尻 いや、肩で息をしてましたけど、あの状態でもインターバルの1分間で息を整えられる練習はしてきたんで。5分3ラウンド動けるように、チャンピオンの(ジョゼ・)アルドと闘うつもりで仕上げてきたのでスタミナに余裕はありましたよ。
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会場ではブルース・リーとUFCのコラボTシャツやPRIDEのTシャツも売られていた

――そこは1年ぶりの試合、しかもそれがUFCデビュー戦というこのふたつがプレッシャーになって、本来の動きができなかったわけですか?
川尻 そこはデカイですねぇ。入場前から緊張しすぎていたというか、バックステージの入場口がDREAMみたいに赤コーナー青コーナーの仕切りがなかったんですよ。
――入場直前の川尻選手の様子を観に行ったんですけど、両選手の待機場所に仕切りがなかったですね。
川尻 俺の目の前で相手がノリノリなんですよ、ステップなんかしちゃって。相手は入場待ちでオクタゴンのほうを向いてるから俺のことはわからないですけど、俺には見えるから凄く気になるんです。軽快な動きをしてる相手を見ていたら足がすくんじゃって……。
――えーっ。
川尻 「強そうだなあ、ヤバイなあ……」って。それくらいけっこうガチガチでしたねぇ。
――待機してるときは精神集中して自分の世界に入り込んでいるように見えましたけど……。
川尻 ぜんぜん入ってなかったです(笑)。昔はキレないと怖くて出れなかったんですけど、いまは冷静にコンビニに寄る感じで上がれるんです。でも周りが見えすぎちゃってところはありましたよね。
――新たな挑戦の第一歩ということもありましたけど、そんなに緊張されてたんですねぇ。
川尻 メチャクチャしましたよ。「こんな気持ちになるならもう格闘技やめよう……」と思いましたもん。
――あ、そこまで。
川尻 「もう闘いたくないっ!!!」って。もともと競いあいとか好きじゃない平和主義者だし(笑)。喧嘩もしたことないのになんで格闘技なんか始めちゃったんだろうって。試合のたびに思いますよ、それは。
――そのプレッシャーは克服できないもんなんですね。
川尻 いやあ、慣れないですね。40戦以上やってますけど。ほかのファイターもみんな緊張してると思うんですよね。「緊張しない」なんて嘘ですよ。もしくは何も背負ってなくて趣味でやってるか。「負けてもいいや」と思ったら緊張しないと思うけど、格闘技で食っていくなら緊張しないほうがおかしいですよね。
――相手のショーン・ソリアーノはどうでした? 負傷したハクラン・ディアスの代打だったわけですけど。
川尻 強かったですよ! やっぱり強かったですよ……。8戦全勝ですし、シュウ(・ヒラタ)さんに聞いたんですけど、アメリカはアマチュアのときからパウンドありでやってるそうなんですね。時間だけ1ラウンド3分なんですけど。要はアマチュアから含めると8戦以上やってて、彼は15勝無敗らしいんで。
――それ、メチャクチャ危険なヤツじゃないですか!!
川尻 15戦近くやって無敗なんて日本だったらとっくにDEEPのチャンピオンになってるじゃないですか。
――あの怖いもの知らずっぷりはアリスターに負ける前のハリトーノフみたいで。そんな連中が代役で出てくるのがアメリカなんですね……。
川尻 そういうことらしいんですよ。ソリアーノはずっと金網でやってきて経験もあるし、次の試合を見たいですよね。「ほかの選手とやったらどうなるんだろう?」って。それでコロっと負けたらショックですけど(笑)。
――いまは無名の外国人だから弱い選手っていないですよね。大晦日の北岡(悟)選手の相手もそうでしたけど。
川尻 強くなってUFCでチャンピオンになれば億の金を稼げるという例ができてますから。みんな死に物狂いですよね。TUFのトライアウトにレスリングや柔道やってた選手がどんどん参加していますし。格闘技の経験なしでほかのスポーツから転向するケースもあるって聞いてますよ。
――そこは昔の日本と同じですよね。
川尻 それは金になるからでしょうけど。だから俺も「なんでもやってやろう!」と思ってるんですよ。
――それがあのマイクアピールだったりするんですね。
川尻 どうですか、マイクアピール。受けてました?(笑)。
――異国でのあの弾けっぷりは川崎ムネリン級ですよ! 今回のマイクで考えたんですけど、一昨年の「川ちゃん固め」宣言からマイクの方向性が変わったような気がするんです。川尻達也にいったい何があったんだろうって(笑)。
川尻 俺だってわからないですよ!(笑)。別に変えようと意識したことはないんですけど、「自由にやろうかな」って。そうですか……そうですねぇ……昔はカッコつけていたのかもしれないですねぇ。
――ハハハハハ。
川尻 いまは素の自分というか飾らくなったんじゃないですかね。「俺はカッコつけるキャラじゃない」って感じで。あと一本勝ちって嬉しいのでその気持ちをストレートに出してるんじゃないですか。でも、あそこまでテンションが高くなるとは思わなかったですね。
――そうとう嬉しかったんですね(笑)。
川尻 嬉しかったですよ。嬉しかったですし、サブミッション・オブ・ザ・ナイトもいけるだろうって(笑)。
――残念ながら受賞は逃しましたけど。あれで5万ドルもらえるかどうか懸かってるわけですからね。
川尻 そうですよ。ファイト・オブ・ザ・ナイトとのダブル受賞で10万ドルもらえるはずだったのに。……メインなんて根性だけの試合じゃないですか!
――ハハハハハハ!
川尻 俺の試合のほうがハラハラしたじゃないですか!(笑)。あのマイクを含めてサブミッション・オブ・ザ・ナイトが獲れないかなって考えてたんですよね。「面白いな。こいつでいいか」ってならないかなって。
――川尻選手は受賞に備えて正装するため、わざわざジャケットを日本から持参してたという噂を耳にしてますけど……。
川尻 はい。ダブル受賞をもらうつもりで準備したんですよ! 
――なんという用意の良さ!(笑)。
川尻 回転ヒジもそのために出したし。あれでKOしたら間違いないでしょ? そのためにずーーーーーーっと練習してきたんですよ。練習では手応えあったんですけど。だから、どうやったらダブル受賞できるか考えたうえでの試合展開だったんですよねぇ。
――水垣選手いわくフィニッシュで一本勝ちは少ないからサブミッションのほうが受賞しやすいみたいですね。
川尻 そうなんですよね、普通は。でも、今回は一本勝ちが多かったですよね。……本当についてない。だって一つだけでもファイトマネーより上ですよ。ダブル受賞したら年収並じゃないですか(笑)。
――次の試合に期待しましょう! あとマイクで言えなかったからか最後にオクタゴンで「俺がDREAMだ!」って叫んでましたよね。
川尻 本当はマイクで言いたかったんですけど。いま思えばマイクじゃなくてよかったなって。
――あのDREAM発言はどういう意図があったんですか?
川尻 あの発言は日本のファンと、心よく送り出してくれたDREAMスタッフに向けてです。それまではアメリカやシンガポール向けのアピールだったので日本のファンやDREAMスタッフに何か残したいと考えたときにあの言葉だったんですよね。
――それは試合前から用意していたんですか?
川尻 はい。いい勝ち方したら言おうかなって。「DREAMを背負う」というか、ボクは修斗やPRIDEもそうなんですけど、DREAMに育ててもらった気持ちが強いんです。「無理に背負わなくていい」という人もいるんですけど。そこはファンやDREAMのスタッフに感謝の気持ちが強かったですよね。
――自分が育ててもらったイベントのスピリットや、実現したかったあのときの夢を背負う感じですよね。
川尻 それに背負ったほうが強い自分でいられるんで。俺、カッコつけないと前に出られなくなるんですよ。誰も見てなかったら簡単に諦めるし、ノーピープルマッチだったら超弱いですよ(笑)。
――それこそみんなの夢のために闘う! と。まさに「俺がDREAMだ!」ですね。
川尻 必死にかっこつけるために頑張るし、そういう意味では背負ったほうがやりがいはあるし、これまでも背負ってきたんで、いまさら降ろす必要もないのかなって。
――DREAMがあったからいまの川尻達也があると思えば、その思いは拳の乗せたいという。もともと川尻選手はGLORY主催の新生DREAMをやるとき「日本に骨を埋める」と言っていましたし、まさかあの大会で終わるとは思ってなかったですよね……。
川尻 そうですね。今回が初めてのUFCだったので、DREAMのスタッフやファンのみんなにその思いを伝えたかったんですよね。でも、マイクで言っちゃうとUFCとしては面白くないかなって(笑)。
――試合後、DREAMのスタッフに連絡はされたんですか?
川尻 取りました。加藤さん(DREAM責任者)には勝って控え室に戻ってすぐ電話をしました。留守電だったんでメッセージを入れただけですけど、このタイミングしか連絡できないと思って。
――加藤さんから折り返し連絡は会ったんですか?
川尻 ありましたけど……加藤さんの言葉は自分だけの胸の内に秘めさせといてください。
――了解です! 勝った直後の勢いじゃないと連絡できない照れくささはあったんですか?
川尻 ボクはDREAMには感謝しかないですし、お互いになんのしこりもないんですけど、それでもしばらく会ってないから、ちょっと連絡しづらいなって。だから勝ったら試合後すぐに電話をしようと。
――状況が許されないなかで離れ離れになってしまったわけですからねぇ。
川尻 もちろん笹原さんや佐伯さんにも連絡をしました。勝って報告できてよかったです……(続く)

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