今年10月の「UFC166」での初戦を見事白星KOで飾った超新星・堀口恭司。岡見勇信、日沖発に続く日本人UFCデビューからの連勝が懸かった第二戦(2月1日「UFC169」)も決定したということで話を聞いてきました~。
「あのとき電話に出てなかったらUFCはなしっすよ! 危なかったですよ、電話に出て(笑)」
「この魚、どうやって釣れるんだろう?」って考えることと「この相手にどうやって打撃を当てればいいのか」って同じことですからね。
「自分は大学4年間行ってからMMAを始めるのは遅いと思ったんすよ。だって大学卒業したら22歳じゃないですか」
「変なことを言ってる人とかたまに目に入ったりしますけど、まあ言わせておけばいいやって。関係ないっしょって」
――堀口選手、練習お疲れさまです! 普段はこのあとどんなスケジュールなんですか?
堀口 昼ご飯を食べて、そのあと練習して、またご飯を食べてまた練習して……(笑)。
――まさしく格闘技漬けですねぇ。
堀口 はい(笑)。格闘技をやるために(群馬から)東京に出てきてからずっとこんな感じです。
――じゃあ息抜きは趣味の釣りくらいだったりするんですか?
堀口 メッチャ好きなんですよ。小さい頃からやっていて。
――群馬出身ということは川釣り。
堀口 ですね。釣りも駆け引きじゃないですか。それが面白いかなあって5歳の頃から大好きで。
――5歳の頃から「駆け引き」としての面白さを味わっていた、と。
堀口 その頃から空手もやらされていたんで、そこも駆け引きを楽しんでましたね。そういえば、釣具のスポンサーとか付いてくんないかなって。物品提供だけでもいいんですけど(笑)。
――川尻選手がイナバのツナ缶を10年間毎日食べ続けていたら、そこがスポンサーに付いたみたいな話もあるからアピール次第ではなんとかなるはずです!
堀口 ホントっすか(笑)。
――詳しくなくて申し訳ないですが、釣りって技術差が出るもんですか。
堀口 そりゃあ出るっすね!
――見ただけで「上手い・下手」がわかります?
堀口 わかるっすね。そもそも下手だったら釣れないですよね、やっぱり(笑)。自分がやってるのはルアーなんすけど、それも下手な人は釣れないっすね。
――やってない人からすると、多少の運もあるのかなって見えちゃうんですけど。
堀口 そこは運もあるっすよ。でも、釣れる人は釣るコツを知ってるんで素人が釣れない場所でも釣れるんです。
――それは釣りにかぎらず格闘技もそうですけど、多少の運がありつつ技術がないと上には行けないってことですね。
堀口 そうっすね。「この魚、どうやって釣れるんだろう?」って考えることと「この相手にどうやって打撃を当てればいいのか」って同じことですからね。
――あらためて格闘技は頭脳戦の要素は強いんですね。
堀口 とくにUFCなんかはそういう感じじゃないすか。頭脳戦といっても最後はKOで勝ちたいすけど。
――そもそも空手を始めたのはどういうきっかけなんですか?
堀口 兄貴が空手をやってたんですけど、親から「おまえもやれ」ってことで同じ道場に連れて行かれたんですよ。最初は「やんない、やんない!」って嫌がったんですけど(笑)。そんなに空手は好きじゃなかったんですよ。当時の自分からしたら道着とかダサかったし。
――そこからよく続きましたね。
堀口 最初はふざけながら練習してたんですけど、だんだんやってるうちに優勝するようになったんですよ。子供の頃ってちょっと才能があれば技術がなくてもいいところまで行けるもんじゃないですか。
――それに子供って勝ったり褒められたりしたらその気になっちゃいますよね。
堀口 そんな感じすよ(笑)。「次に勝ったら◯◯買ってあげる」とかおだてられて、そのうち空手に本気になりましたよね。勝てなくなった時期もあって「このままではダメだ」とか真剣に考えるようになりましたし。
――それで空手をやってるうちに総合格闘技に興味を持つようになったわけですか?
堀口 自分が高校2年のときにPRIDEが流行ってたんです。それで「やりたいな」と思うようになって高校卒業と同時にKIDさんのジムに入ることになって。
――いま堀口選手は23歳ですよね。とするとPRIDE直撃世代。 PRIDEでいちばん好きだった選手は誰ですか?
堀口 一番好きな選手……ヒョードルとか強かったんで好きでしたけど。あとミルコも。でもいちばん好きなのはKIDさんですね。小さいのに凄かったじゃないですか。身体は刃牙みたいで本当にヤバイなって。
――ヒョードルとかって日本人からするとサイズ的には幻想的な存在ですもんね。
堀口 そうです(笑)。
――当時同じく人気のあったK-1に興味なかったんですか? 堀口選手のバックボーンは空手だからK-1向きではありますよね。
堀口 なんていうんですかね、「立ち技は喧嘩したら総合に勝てないでしょ?」みたいなムードってあるじゃないですか。せっかくやるのにそれより「弱い」と思われてるものをやりたくなかったんです。それなら総合をやろうと。だって「立ち技なんか寝かしたら終わりだよ」って思う人は大半じゃないですか。
――一般の人はそういうイメージは持ってるかもしれませんね。
堀口 だったら「打撃が強くて寝技もできれば最強じゃん!」みたいな。そんな感じです(笑)。
――それって路上の思想っぽいですけど、中高時代はけっこうヤンチャだったりしたんですか?
堀口 全然やってないです。みんなが避けるというか……。
――まあ、空手やってたら寄り付かないですよね(笑)。中高で喧嘩が一番強いのはじつは不良じゃなくて野球やサッカーとか体力自慢のスポーツ部だったりしますし。
堀口 ホントっすよ(笑)。だから誰もかかってこないですし。あと嫌われ者だったので。
――あ、そうなんですか?
堀口 小学生の頃やりすぎちゃって。悪だったす。メチャクチャ悪。肩が身体に当たっただけで友達をぶん殴ったりしたし。
――タチが悪いですね、それ(笑)。
堀口 で、小学の高学年になったらそういうのに飽きちゃったんです。友達にも嫌われてるし、まったく面白くないなって(苦笑)。
――幼心に傷つきますねぇ。
堀口 どうなんですかね、ちょっとそういうのはあったす。それにそのときは自分は空手ばっかやってたんで不良とかには興味がなかったし。
――しかし、親御さんは上京に反対されたんじゃないですか?
堀口 大学から話は来てたんですよ、空手をやっていたんで。親や空手の先生も「大学に行ってから空手をやれ」って言ってたんです。
――親からすれば「大学に行って4年間過ごせばちゃんと就職するだろ」くらいは思ってそうですね。
堀口 でも、自分は大学4年間行ってからMMAを始めるのは遅いと思ったんすよ。だって大学卒業したら22歳じゃないですか。
――いまと同じくらいですね。
堀口 そうなると「その歳から寝技を覚えるのに何年かかるの?」って話じゃないですか。
――考えましたねぇ、そこは。
堀口 いや、考えますよ! だって本気でMMAで勝負するわけですから。
――いまは20代前半なのに10何戦経験してUFC入りする選手もいますから凄く良い決断ですね。でも、よく親を説得できましたね。
堀口 親の言うことなんて聞く耳なんかもたないっすよ。
――ハハハハハハ。
堀口 「大学に行け」「ううん、格闘技をやる。KIDさんのジムに行くから」。一番お世話になってる空手の先生からも「やるならK-1かキックに行け。おまえの技術なら通用するから」って。でも自分はMMAをやるってことでコッチに来たんですよ。
――もしかしたらK-1を目指して今頃Krushに上がっていたかもしれないし、去年大学卒業してからMMAを勉強し始めてる格闘人生もあったかもしれない。でも、実際は最短ルートを選んだということですねぇ。
堀口 いやあ、そんなことないですよ。自分のことをみんな「最短最短」言いますけど、海外にはもっと最短の選手いっぱいいますからね。
――たしかにレコードだけ見ると異常な選手たくさんいますよね。
堀口 はい。自分なんか普通っすよ(笑)。
――それで上京してKIDさんのジムには内弟子としてアッサリ入れたんですよね。
堀口 二回目に来たときKIDさんがいたんですよ。これはチャンスだと思って「内弟子にしてください!」と直接お願いしたら「ああ、いいよ」って即答だったんですよ。
――ハハハハハハ。
堀口 「荷物をまとめて来なよ~」って感じで。自分が驚いちゃったんですよ、「そんなに早いの!?」って(笑)。それで一週間後くらいに寮に住み始めたんです。
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