この付録DVDに収録されている『JEWELS 15th RING』(2011年7月9日、新宿FACE)は、当時CS放送サムライで中継されたのだが、それは短時間にタイジェストされたものだった。全試合ノーカットでの公開はこれが初めて。貴重な映像と言っていいだろう。
しかもこの大会、『JEWELS』にとって非常に意味のあるものだった。一つの集大成であり、また分岐点だった。
この年、『JEWELS』には活動を休止したもう一つの女子団体『ヴァルキリー』が合流。対抗戦が行なわれるとともに、選手層がグッと厚くなった。そんな中、メインイベントで対抗戦として行なわれたのが、辻結花vs石岡沙織の一戦だった。
言うまでもなく、辻は女子総合格闘技のレジェンドである。強力なタックルを武器に常にトップ戦線で闘ってきた。一方の石岡は、新世代の中心選手の一人。『JEWELS』の旗揚げ戦では長野美香とのメインイベントで勝利を収めている。
長く女子総合を支え続けてきた辻と、新たな時代を担う石岡の闘い。それは、新世代を中心に時代を前進させるというテーマを掲げてきた『JEWELS』(だから、旗揚げ戦のメインは石岡vs長野という若い選手同士の対戦だったのだ)の“実力”が問われる一戦だったと言える。試合の結果、内容、あるいは存在感で石岡はレジェンド・辻を凌駕できるのか。そこには、女子総合格闘技の未来もかかっていたはずだ。
だが、そんなテーマは一瞬で吹き飛んだ。1年5ヶ月ぶりの試合、ケガからの復帰戦となる辻だが、序盤に鮮やかなタックルでテイクダウンに成功。その後もポジショニング、フィニッシュへのトライも含めあらゆる面で辻が上回り、3−0の判定勝ちを収めた。「ここまで強いのか」とも「こんなに差があるのか」とも思わされた。“新旧対決”どころの騒ぎじゃない。“旧”だろうがなんだろうが、強い者は強かった。
旗揚げ戦のメインで石岡と闘った、もう一人の新時代の旗手・長野は、やはりレジェンドである藤井惠と対戦している。この試合もやはり“新旧対決”だったわけだが“旧”の藤井が圧勝。スタンドのパンチがとにかく冴え渡っていた。寝技、とりわけ“極め”の強さで知られる藤井だったが、ここまで打撃ができるのかと驚かされた。そしてこの試合も「ここまで差があるのか」と思わされた。
辻は圧倒的に強かった。藤井もまた圧倒的に強く、なおかつ打撃がおそろしく進歩していた。ベテラン選手が、若い選手以上に成長していたとも言える。となれば、もはや“新”だの“旧”だのといった枠組みは意味をなさない。団体の“色”よりも“個”の強さが問われる。『JEWELS』はそういうリングになった。
“個”の闘いは、新たな闘いを生む。2012年5月26日、辻と浜崎朱加のタイトルマッチだ。浜崎は1982年生まれの30歳。柔道で活躍し、『JEWELS』旗揚げ後の2009年に総合格闘技デビューを果たしている。2010年にはトーナメントで優勝し、初代JEWELSライト級女王となった。彼女は石岡、長野らが注目される中、圧倒的な“個”の力でベルトを巻いたのである。
辻との対戦、浜崎はアームロックで一本勝ち。この試合は辻の地元・大阪で行なわれたのだが、そのドラマ性を、浜崎は無慈悲なまでの強さではね返した。この試合もまた「ここまで強いのか」であり「こんなに差があるのか」だった。
辻戦を終えた浜崎は、アメリカの女子MMAイベント『インヴィクタFC』に参戦し、ここでも一本勝ちを収めている。『インヴィクタFC』には赤野仁美、スギロックも参戦。現在は女子総合にも“対北米”という流れが生まれつつある。
若い力の台頭、レジェンドの圧倒的強さ、レジェンドすら凌駕してみせた浜崎と、北米参戦。『JEWELS』の濃密な流れ、その重要なポイントとなったのが、このDVDに収録された『15th RING』である。辻vs石岡、藤井vs長野以外にもハム・ソヒvsV・V Mei、赤野とHIROKOの重量級2大エース登場など『JEWELS』史上最も充実したマッチメイクでもあったこの大会。女子格闘技の“実力”を、その目で確かめてほしい。(橋本宗洋)
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女子総合格闘技ベスト興行の呼び声が高い2011年7月9日『JEWELS 15th RING』!
石岡沙織vs辻結花/ハム・ソヒvs V.V.Mei/藤井惠vs長野美香/赤野仁美vsロクサン・モダフェリ/HIROKOvsエスイ/林美久vs anna/セリーナvs高林恭子/石川菊代vsSachi/千佳子WSRvs中森華子/トモコSPvs茶谷薫/MIYOKOvs奥村ユカ
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