――今回のテーマは「リングス退団」になります。
――いつも刺激的で大好評です!(笑)。リングス退団のきっかけとなった前田日明さんとの試合はいまだに謎が多いというか、長井さんも過去のインタビューでギリギリまで語ってはいますよね。
長井 ……斉藤さんからこのインタビューのお話を受けたときに、最初お断りさせてもらったじゃないですか。
――じつはそうでしたね。
長井 なんでかといえば、私の過去の話を聞きたいという人の最終的な着地点はここなんですよ。そこでボクが「本当のことをこうなんです」と言ったとしても、他に影響力や発言力のある人が違うことをいえば、白も黒になっちゃうんですよ。そしてその人を支持してるファンの人から私が総攻撃を食らうんですよね。
――Dropkickメルマガ読者は酸いも甘いも噛み分けた「大人のファン」だけなのでご安心ください!
長井 これもいい機会だから言わせてもらうと、前田さんはヒザを大ケガしていたじゃないですか。「長井は選手生命に関わるようなケガをさせておいて、ああいう態度はどうなんだ?」っていまでも噛み付いてくる人がいて。言っときますけど、ケガさせたのは俺じゃないですからね。別の選手とのスパーリングの最中にケガをしたんですけど、どういうわけか俺が前田さんにケガさせて、そこまで迷惑をかけているってことで、いまだに文句を言っている人がいるんですよ。そういうイヤな思いしかしないから、斉藤さんのインタビューのお話をお断りしたんです。でも、こうして受けたのは……最初に答えを言っちゃうけど、前田さんとの試合後のリング上で、私が「どうして田村(潔司)さんばかりを贔屓するんですか?」みたいなことを「言った」とされているじゃないですか。
――長井さんが田村さんに嫉妬したことが前田さんと揉めた原因とされていますね。
――“行間を読む”ってやつですね。
長井 もうひとつ、こういうことをいうと、ゴマを擦っているように感じちゃうかもしれないけど、いままでのインタビューも斉藤さんがすごい気を遣って書いてくれてるじゃないですか。
長井 私はマスコミや記者の方で仲良くさせてもらってる人もそんなにいないし、やっぱり信用できない人もいるんですよ。ぶっちゃけ「俺が言ってないことも書いてるな」みたいな。斉藤さんはボクが言ったことをオブラートに包みながら、ちゃんと書いてもらってるので。
――そう言っていただけるとありがたいです! ちなみに「最終的な着地点」をリングス退団に捉えているマスコミは多いとは思うんですけど、ボクは長井さんもタッチした「アルティメットロイヤル」の全貌も届けたかったりするので、引き続きよろしくお願いします!(笑)。
長井 わかりました(笑)。
――結果的にリングスラストマッチとなった前田戦に至るまでのお話を聞きたいんですけど、長井さんは比叡山に山籠りされたときがありましたよね。
長井 ありましたねぇ。よくプロレスや格闘技の大きなビッグマッチの前にどこかで修行するときがありますよね。大半は絵作りですけど、たぶんプロレス界でね、ボクだけだと思いますよ。本当に1ヵ月半とか2ヵ月ぐらい、比叡山の弁天堂に修行に行かされたのは(笑)。
――リアルで修行してたんですか!(笑)。
長井 これはボクが若かったんですよね。前田さんがリングスのメガバトルトーナメントで優勝したあとだったのかな?「リングスはプロレスではない」みたいなコメントを出したことなかったですか?
長井 ボクはプロレスラーを目指してこの業界に入って頑張ってきたし、たとえばエンターテイメントとして魅せるリングスの試合もやるし、競技としても「やれ」と言われればふたつ返事で「はい。わかりました!」とやるのがリングスのプロレスラーだと思ってたんです。ボクにとってそれが“プロレス”なんですよ。だからその何ヵ月かあとの興行かなんかで「ボクはプロレスラーとしてやっていく」みたいなコメントを出したんです。そうしたらその発言が前田さんと会社の逆鱗に触れて「許しが出るまで比叡山に行ってこい。帰ってくるな」と。
――それくらい“プロレス”という言葉はセンシティブだったんですねぇ。だからって比叡山で修行って!(笑)。
長井 比叡山の中にある弁天堂っていうところに行くことになって。朝起きて、掃除して、お経をあげて、お寺のそういう諸々の手伝いをして……。お坊さんの新弟子みたいな方たちと一緒に生活してたんですよ。
長井 それにお寺だからお肉はダメなんですけど、そこにはヘビを祀ってるんで卵だけは食べていいという規則があって。卵だけは食べれたんですがすごく痩せました。プロレスラーでボクだけだと思いますよ。絵作りじゃなくて、本当にお寺に飛ばされたのは(笑)。
長井 だから会社の言うこと聞かないと、こういうペナルティがあるんだぞ……って見せしめ的なところもあったんじゃないですかね。
――リングスはそれくらいプロレスのイメージをかなぐり捨てたかったということですね。
――前田さんが「プロレスって言葉がきらいな人 この指とーまれ」というコピーで『格闘技通信』の表紙になってますが、その『格通』とも微妙な関係になったり。リングスという場があまりにも特殊だったのか、当時『週プロ』編集長で『格通』にも影響力のあったターザン山本さんとの関係悪化説もありますけど……。
長井 ボクが在籍してるときに、外のリングですが山本(宜久)がヒクソンに挑戦をしたり、リングスでも山本とヒョードロフさんがそれぞれやったことを覚えてるんですよね。
――ヤマヨシさんがヒカルド・モラエスにKO負け。サンボマスターのヒョードロフさんもグレイシー柔術のアジウソン・リマに負けたんですけど、51歳でMMAに出て10分戦ってのガス欠ですからね。リングス道場の裏にあった川に入って手づかみで鯉を捕まえただけのことがありますよ!
長井 あのバーリトゥードはボクにしたら残酷すぎるんですよねぇ。だから諸手を挙げて「俺も次、行きます!」って感じにはならなかったです。
――でも、当時のプロレスファンってU系プロレスラーにはバーリトゥード出撃待望論は常に抱いてましたよね。
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コメント
コメントを書く(ID:125345009)
前田もあれだけど長井もたいがいだな。キラーカーンみたい
(ID:1343204)
泣けました、いろいろと
あの頃を濃厚に通り過ぎてきた者のひとりとしては、今だからこそ肩肘はらず素直に振り返られるところも多々あり
話してくれてありがとう長井
リングス、みんな大好きだった
(ID:3173085)
「証言UWF」ならぬ「証言リングス」を読みたいですね