大会後恒例の笹原圭一RIZIN広報インタビューです。今回はRIZIN44とLANDMARK名古屋を14000字で振り返ります(聞き手/ジャン斉藤)



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それでも乗りたい「苦役列車RIZIN」■笹原圭一の超RIZIN2感想

・ヴガール・ケラモフ「憧れだったPRIDEの続きができて夢のようだよ」

・三崎和雄が“家族”としてクレベル・コイケを支える理由




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笹原さん!RIZIN44たまアリ、LANDMARK名古屋の連戦おつかれさまでした!

笹原 もうトラブルがてんこ盛りで何が起こったのか思い出せないですよ。RIZINガールと世界進出のミーティングをして叩かれたのってボクでしたっけ?

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それは別の人の話ですよ! 

笹原 1週間挟んで2大会ですから、まぁ大変なのはわかっていましたけど、今回は選手のケガ含めて想定外のことが多過ぎてホントに大変でした。だって名古屋大会の前々日の深夜2時ごろにクレベルを口説いてましたからね(笑)。

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ワハハハハハ。混乱具合が目に浮かびます。ところで今回はいろいろとトピックスがありすぎて、どこから話していいかわからないですが。難しい判定の試合が多かった印象ですね。

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笹原 ああ、判定は難しかったですね。とくに名古屋。太田忍vs佐藤将光、中村優作vsヒロヤ、渡辺彩華 vs万智もスプリットで割れてましたが、どっちが勝ってもおかしくない内容でしたね。

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SNSを眺めていて思ったのは、これが2~3年前だったら「こんな判定はおかしい!」ってことで陰謀論的に炎上したのかなと。いまは「難しい判定=おかしな判定ではない」とMMAの見方が整ってきてますね。

笹原 そこはファンの見る目がやしなわれてきたってことですよね。

――
選択として「どっちの勝ちもありえる判定」はその後の検討は必要だけど、いちがいに批判するものではないという。

笹原 RIZINのジャッジはJMOCにお願いしてるんですが、ボクが常々彼らに「2-1ではダメ。ジャッジは3-0を目指せ」って言っているんです。現実的には今回みたいに割れることは当然ありますけど、あくまで理想は3名が同じ基準で評価すれば結果は同じになる、まずはそれを目指してほしいってことです。

――
なかなかハードルが高いですが、そういう心構えをで取り組むことが大切だってことですよね。

笹原 そうです。「今回は難しかったよね。2-1でもしょうがない」ではジャッジの質は向上しない。反省し修正し、常に最新・最良の判断を下せるようにしていかなくちゃいけない。

――
たとえばオリンピックの体操みたいな審査競技でも点数にばらつきがありますし、見る場所によっても見え方が変わってきたり。

笹原 これはRIZINだけじゃなくて他団体にも言えることですが、ジャッジが会場の雰囲気に惑わされることってあると思うんですよ。

――
憎たらしくて強いベテランに新人が健闘したら、会場も新人への声援が大きくて判官贔屓で新人につけたくなるみたいなことですよね。

笹原 そうそう。今回も中村優作vsヒロヤは会場の雰囲気的にはヒロヤに入ってもおかしくなかったですが、その空気に惑わされずに冷静に判断ができていたと思います。

――
どのジャンルのオーディンスジャッジも雰囲気に惑わされることってありますよね。

笹原 ハッスルで小川直也vs川田利明の三本勝負で途中まで1対1の同点で、最後に観客がどちらかに投票する「観客ジャッジシステム」ってガチンコでやってみたら、川田さんが圧勝してオーちゃんが落ち込んだみたいな話ですよ!

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全然違ううえに、昔の話すぎて誰もわかりませんよ! あのあと「こんな結果になるなんて話が違う!」みたいな感じで小川直也がハッスル運営サイドに不信感を持ち始めたのはいい話なんですけど。

笹原
  たとえば最近だとブレイクについても、「ポジションをキープしてるだけで、ゴールつまりフィニッシュに向かわない場合は積極的にブレイクしましょう」というプロトコルが、北米のボクシング・MMAを管理するABC(Association of Boxing Commissions and Combative Sports)でも採択されたんです。なのでRIZINやUFCでもこの潮流に沿ったレフェリングがされていくと思います。

――
「10-8を積極的につけよう」運動のときも、最初は程度がわからないから躊躇していた感じがありましたけど、それってルール変更でもないから、アナウンスするものでもないし、オーディエンスの受け止め方も難しいですね。

笹原
  いまだと10-8もある種の揺り戻しがあって、当初はユニファイドでいうダメージ、ドミナンス、デュレイションの「3D」のうち二つを取れば10-8にしましょうってことだったんですけど、少し変わったんです。

――
どんなふうに変わったんですか?

笹原 ドミナンスとデュレイションの2つを取っているだけでは10-8はつかないようになってきています。つまりダメージともうひとつを取らないと10-8はつかないってことなんですね。 

――
ダメージだけ、ドミナンスだけだった場合は10-9になると。

笹原 そうです。このこともいろいろな試行錯誤があってようやくルールに明文化されるんですよ。なのでルールに明文化されている以外のところがじつは大切なんですよね。そこはUFCのユニファイドルールも同じです。MMAのジャッジやレフェリーが現場で実際にルール運用して感じたことが積み重なって「こういう状態になったらブレイクしたほうがいいよね」という判断に繋がっていくんです。

――
そうやってMMAのジャッジは形が変わっていくんでしょうね。

笹原 だから今後はもっとブレイクが多くなっていくと思います。たとえば牛久絢太郎vs朝倉未来のときは3回ブレイクが出ているんです。しかもブレイクのタイミングがどんどん早まっているんですけど、それって同じ攻防を繰り返せば展開が見えるからブレイクのタイミングは早くなるのが正しいレフェリングなんです。ボクの質問指名リストでNGになっているジョビンさんが「ブレイクのタイミングが同じじゃないのはおかしい!」とお叱りの声を挙げていましたが(笑)。

――ハハハハハハ! どうしてもブレイクって「スタンド再開することで、ポジションが下の選手を有利にしようとしてるんじゃないか」という陰謀論が出てきちゃうんですよね。あとよく言われるのがRIZINはトータルマストだから判定がおかしくなる説ですけど、これはもうラウンドマストでも難しい判定は腐るほどあるんですよね。

笹原
そうです。RIZINのトータルマストで微妙な判定になると、すぐに「やっぱりラウンドマストにすべきだ!」みたいな声が上がるんですが、そんな単純な話ではないです。

――ただ、ボクがRIZINはトータルマストをやめたほうがいいなと思うのは、どのジャッジが3段階の評価をどうやってつけたかを明らかにするじゃないですか。ラウンドマストだと「このラウンドはどっちにつけたのか」だけなんですが、RIZINの場合だと3段階の評価が可視化される。それはそれでいいことなんですけど、良くも悪くも議論になりがちで変な誤解を招くことにもなるのかなと。トータルマストの長所のひとつは最後まで勝負はわからないことですが、いまはラウンドマストでもジャッジがどう転ぶかわからないので露骨に試合を流す行為って減ってるし、JMOCは優秀だからラウンドマストでも充分に運営できるんじゃないかと。

笹原 たしかに可視化されることの長所・短所はありますね。その点も踏まえてあまり詳しくはいえないんですけど、ジャッジシステムを改良しようかって話もあるんですよ。

――
10点方式・ラウンドマストにするってことですか?

笹原
  いいえ。それとも全然違う採点方法です。これが採用されたら全米震撼!....…みたいなことはないな(笑)。まぁでもユニークのやり方だと思います。

――
ハハハハハハハ! ドタバタしていたわりには2大会とも面白かったですけど、まずRIZIN.44ではクレベルが金原正徳に負けちゃいました。

笹原
  2023年に戦極のチャンピオンがRIZINのリングで躍動しているなんて、誰も想像できなかったですよね(笑)。

――
松澤チョロさんが考案して実際のリング上でお披露目もされたけど、まったく流行らなかった「戦極ポーズ」も浮かばれますよ! 「イチ、ジュウ、ヒャク、センゴク、センゴク!」

笹原
(無視して)クレベル戦も数ヵ月前までありえなかったですし、金原選手は運を引き寄せたうえで結果を出せる実力があったということですよね。まず6月の北海道大会の鈴木千裕戦でクレベルが体重オーバーして王座剥奪になりましたけど、それがなかったら、クレベルはチャンピオンとしてケラモフを迎え撃っていたはずですし。


・当初は◯◯戦で金原正徳を説得した
・泣き出したクレベルのマネージャー
・大暴れの鈴木千裕を見たアゼルバイジャンのお偉いさんの反応
・摩嶋一整の体重超過の件
・来年GPをやるなら◯◯か△△
・朝倉海vs皇治劇場の全貌
・幻の朝倉海vsクレベルの立ち技ルールはヒジあり?
・予告された「腰を抜かす」発表は?……などなど16000字インタビューは会員ページへ続く


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・佐藤将光センターラインな12000字インタビュー

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