RIZINとUFCの違いは? 初心者に優しい「MMAとドーピング」講座! パフォーマンス向上スペシャリストとして多くの格闘家をサポートするタケ ダイグウジさんに話を伺いました!(聞き手/ジャン斉藤)
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――計量オーバーのインタビューが好評だったタケさんに、今回は「ドーピング」という厄介なテーマでお伺いします!
タケ よろしくお願いします。しゃべれる範囲で頑張ります(笑)。
――ドーピングって実態がよくわかんないまま感情だけで語られてるところはあるので、そのへんを解きほぐしていきたいと思ってます。いろんな選手をサポートしてるタケさんはUFCやRIZIN、ONEなんかのドーピング検査を把握してるんですか?
タケ まずUFCに関していえば、ほぼ抜け道はないシステムです。
――なぜ「ほぼ」なのかは、コナー・マクレガーのようにUSADA(アメリカ反ドーピング機関)の検査対象から外れるやつですね。
タケ RIZINでいえば、メインの選手はあまり指導に携わってなくて、10数試合ぐらいしか関わってないので実態はよくわからないですね。ONEは松嶋(こよみ)はおしっこを取られたことあるのかなあ。ボクは毎試合現地まで付き添ってましたけど、あんまり記憶はないですね。
――他団体と比べてUFCに抜け道がないのは、世界の果てまで検査員が現れる抜き打ち検査があるからですよね。
タケ そうですね。抜き打ち検査があるから、試合前に抜けばいいってことにはならないし、普段の生活から気をつけてないといけないんです。うっかり禁止薬物を摂ってしまうこともあるので。
――タケさんも「それは摂っちゃダメ!」という指導もされてるわけですね?
タケ はい、してますね。薬剤師さんから禁止薬物の指導を受けてますし、アンチ・ドーピングを研究している友達からも習ったりしてます。
――MMAのドーピングのあり方は、UFCのUSADA提携以前・以後に分けられますよね。
タケ UFCがUSADAと提携して抜き打ち検査をやるようになったのが2017年ですけど。それ以前でいえば、水垣(偉弥)がUFCで戦っていた頃は試合後に勝ったときにおしっこを取られる。もしくは負けたとしてもランダムで選ばれるシステムだったんです。
――2017年から厳格になったと。
タケ それからは「抜き打ち検査するから1週間のスケジュールを出してください」と。この日のこの時間はここで練習してる、家にいる、どこかにでかけてる……って申請しなきゃいけないからすごくめんどくさいんですよ。
――それって管理するほうも大変ですねぇ。
タケ あるとき田中路教とトレーニングしていたら、田中路教の携帯に着信が10件ぐらい入ってて。折り返したらJADA(日本アンチ・ドーピング機構)の担当の人が出て「申請してる場所に来てるんですけど、どこにいるんですか?」と。その日はスケジュールを変更してトレーニングしてたんですよね。いまいる場所にJADAの検査員が来るってことで30分ぐらい待って、おっしこを取られてことがありますね。
――スケジュールを何回か間違えるとペナルティがあるとか。
タケ あります。年間で3回間違えるとダメなんでね。石原夜叉坊はしょっちゅう適当なこと書いてたから2回スッポかしちゃって。3回目のときは「ちょっと待っててください!」って慌ててスケジュールに記載した場所に向かったり(笑)。
――石原夜叉坊らしい(笑)。
タケ 有名な話でいうと、ヴァンダレイ・シウバが逃げちゃったことがあるじゃないですか。
――ジムから逃走したんですよねぇ。
タケ あれは悪質だってことで出場停止扱いになりましたけど。最近だと中村倫也が友人宅に泊まるって申請してたんですが、急に泊まれないから実家に帰っちゃって。そういうときにかぎって翌日の朝、JADAの人がその友達の家を訪れたら誰もいない。連絡があったから赤羽で待ち合わせて、駅の多目的トイレの中で尿を取ったんですけど。あれってなんだかんだで30分近くかかるんですよ。
――検体ごとに封をして、ひとつひとつサインしなきゃいけなかったり。
タケ そうなんです。自分で蓋を開けてください、おしっこを入れてください、サインしてください……ってやりとりを多目的トイレの中で、筋肉質のアスリートと検査員の2人が30分近くやっている。それは土曜日か日曜日の朝だったんですけど、外に出たら他の人たちから「え?」みたいな顔されたって言ってましたね(笑)。
――明らかに変な目で見られちゃいますよね(笑)。しかしUFCファイターは全世界に散らばってますし、年間10億円という費用も頷けます。
タケ 検査回数は選手によってバラツキがあるんですけど。見た目が怪しいっパウロ・コスタは年間20回以上も抜き打ち検査があったとか。
――コスタの場合は身体つきからして、みんなが怪しいんじゃないかって思うじゃないですか。でも、ここ最近いちばん抜き打ち検査が多かったのはイリー・プロハースカなんですよね。
タケ ああ、イリー・プロハースカはめちゃくちゃ検査をやってるんですよね。
――見た目は怪しくないイリーはなんであんなに疑われてるんですかね?
タケ うーん、身体つきはバキバキでもないですしね。やっぱりUFCでいきなりチャンピオンになっちゃったから。チャンピオンは基本的に抜き打ちの回数が多いんですよね。
――スター選手ほど多いですもんね。回数は忘れたけど、規定回数を達成するとジャケットがプレゼントされるのも面白くて(笑)。
タケ ちなみにボクが指導している選手って、水垣以外の全員が「怪しい」って言われるんですよね(苦笑)。
――ハハハハハハハ! 水垣さんはセーフ(笑)。
タケ 水垣はヒョロとしてますけど、中村倫也も松嶋こよみもみ田中路教もそうですけど、みんなガチっとしててケツがデカいから「もしかして?」みたいに言われるんですけど、ちゃんとトレーニングしてるだけです!(笑)。
――見た目だけではわからないと。
タケ そうですね。ボディビルダーでめちゃくちゃ節制してたりすると、普段から体脂肪率が低いケースもあるので。抜き打ちテスト導入以降、身体つきが変わっちゃったり、連続で計量失敗しちゃったりする選手は「ん?」って思いますけど。
――減量もやりやすくなるんですね。
タケ いまのUFCで抜け道があるとすれば、マクレガーやTJディラショーのように治療目的でUSADAのプログラムから外れて、そのあいだに禁止薬物を入れているんじゃないか?と。
――治療目的と言いつつパフォーマンス向上を狙ってるんじゃないかってことですね。格闘家ってケガをすると、治療するための薬もおいそれとは使えないわけですか?
タケ そこは医者に「これぐらいの量はOKですよ」という処方箋を書いてもらって、UFCに申請して認められれば使えます。ステロイドでいうと、水垣もじつは使ったことがあってですね。
――完全シロの水垣さんが。
タケ あるときの検査で血小板の数値が低いってことでドクターチェックが入っちゃって。血小板は下がりすぎちゃうと血が止まらなくなったり、貧血になっちゃったりするんです。食事療法や、いろんなサプリを摂っても全然基準値まで回復しなくて、このままでは試合に出れない。医者からステロイドをごくごく少量入れると増血作用で数値が戻るという話を聞いて、UFCに申請してOKをもらって使ってたことがあるんですよ。それで数値が戻ったんで、当然すぐやめましたけど。
――申請したうえで使用しているケースはたくさんある。いまのUFCの検査体制だと禁止薬物を故意にやる人はいるんですかね。
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すごく面白かったです。