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元『紙のプロレス』編集者・松澤チョロ
の脱線プロレスシリーズ第9弾。今回は今成夢人さんがゲストです!(超たまに
聞き手/ジャン斉藤)







チョロ
 今成さん、お久しぶりです。それにしても完全に売れちゃいましたねぇ!

今成 いやいや、全然まだまだですよ。

チョロ
 いや、だってメインのガンプロではチャンピオンになりましたし、DDTではフェロモンズとして大活躍、先日は新日本プロレス主催のジュニアの祭典まで出場されて、おまけにリング外では日活ロマンポルノにまで出演されてるし、俺の中では売れっ子レスラーの一人ですよ!

今成
 まあ、たしかに、いろいろとやらせてもらってはいますね。

チョロ
 今成さんって、以前Dropkickでインタビューを受けたことがあるんですよね。

今成
 ボクがガンバレ☆プロレス2年目のときですね。けっこう前ですよ。

――
調べたら、もう9年くらい前ですね。今成さんが撮った学プロの作品をとっかかりに。

今成
 あ、そうでしたね。ボクが多摩美術大学の卒業制作で撮った『ガクセイプロレスラー』を評価していただいて。

チョロ
 ここ数年は所属団体の関係で、ちょっと距離ができちゃってるみたいですけど、橋本さん、だいぶ前から今成さんを評価されてましたからね。

今成
 そうなんですよ。橋本さんも映画とかもすごく好きな人なんで。

チョロ
 自分が注目し始めたのは、今成さんが2015年にアウトサイダーに出たときなんですよ(笑)。もちろん、その前から存在は知ってはいましたけど。

今成
 あそこですか!(笑)。

チョロ
 もともと会場までプロレスを観に行くようなタイプではなくて。マッスル坂井さんのマッスルとかは大好きだったんだけど、アウトサイダーも1回も見たことがなかったんですよ。でも、今成さんが出るならってことで会場に行ってみたら、もうかなりのロングロング興行で(笑)。

今成
 あのとき8時間くらいありましたよね(笑)。

チョロ
 そうそう。いまになってみると朝倉兄弟が出ていたり......。

今成
 堀(鉄平)さんも出てたし、メインは啓之輔vs黒石高大ですよ。

チョロ
 それこそいまブレイキングダウンに出てる人気選手がほぼ全員揃っていたんですよね。でも、当時の自分はそこには興味がなくて、会場の外に出て時間を潰したり。ぶっちゃけ今成さん以外では、大井洋一さんの試合しか記憶がないです(笑)。

今成
 あ~、大井さんも出てましたよね。人気だった朝倉兄弟も興味なかったんですか?

チョロ
 あのときはピンと来てなかった。見る目がないってことですね(笑)。そこで今成さ
んとはなんとなく知り合いになって......。

今成
 そこからですよね。チョロさんと飲み会でたまに会うのは。

チョロ
 今成さんがアウトサイダーに出たときって『KAMINOGE』でもけっこう煽ってましたよね。

今成
 『KAMINOGE』で前田(日明)さんとも対談したんですけど、いい感じでお膳立ての記事になるのかと思って大家健とリングス事務所に行ったら......前田さんに説教でフルボッコにされるっていう。あれはもう本当に恐ろしい体験でしたよね......。

チョロ 前田さんから「プロレスをナメるな」と説教されて。

今成
 前田さん、日本刀を収集してるじゃないですか。その日本刀で斬りつけられるんじゃないかって迫力で(苦笑)。

チョロ 当時アウトサイダーは人気があったから話題性もありますけど、格闘技に出るってことは強さに対するコンプレックスもあったりしたんですか? 今成さんは高校時代はレスリングをやってましたよね。

今成
 その憧れはやっぱりありますよ。ただ、いちおう高校ではレスリング部だったけど、インディーズ部活だったんですよ。部自体は全然強くない。ボクが通っていた八王子高校は、小川直也さんの出身高校だけあって柔道はめっちゃ盛んだったんです。

チョロ
 あ、小川さんの後輩なんだ。

今成
 で、パンフレットにレスリングがインターハイ出場と書いてあったから、レスリングも強いんだろうと思ってたら、部員が誰もいない。調べたらどっかのクラブの強い人が所属として出場したらインターハイまで行っちゃったみたいな。顧問の先生もただのプロレスファンで(笑)。

チョロ
 それはそれで楽しそうですけど(笑)。

今成 そうなんですよ。それはそれでいい思い出なんですよ、いまとなっては(笑)。

チョロ レスリング部に入ったのはプロレス好きの延長とかで?

今成
 そうですね。プロレスファンとしては、新日本の第3世代直撃なんですよね。
チョロ まあ年齢的にそんな感じですよね。実際にリングで絡んだ大谷(晋二郎)さんや高岩(竜一)さんの試合はファンとして見てて。

今成
 完全にあの時代です。プロレスファン上がりで多摩美術大学に進むんですけど、武蔵野美術大学の芸祭でやっていたアントーニオ本多さんの学生プロレスに衝撃を受けたんですよね。

チョロ
 それは入学後ですか?

今成
 いや、入学前です。武蔵美のどの展示物よりも本多さんのプロレスに一番芸術を感じたんですよ。本多さんは卒業しているけど、プロのレスラーでもなんでもなくて単なるプー太郎だったんですけど(笑)。試合はアントーニオ本多vs長州ミキティだったんですよね。

チョロ
 あ、長州ミキティは『カミプロ』の掟(ポルシェ)さんの連載で取材してますよ!(笑)。

今成
 ホントですか(笑)。

チョロ
 長州ミキティはそこまでバズってたわけじゃないし、なんでアンテナに引っかかったかは覚えてないけど、学プロの女子レスラーってことで取材して。

今成
 本多さんがすごいってところもあったんだけど、長州ミキティも同じくらい素晴らしくて。長州ミキティは女子学生プロレスラーの元祖みたいな感じだったんです。

チョロ
 女子・学プロの元祖!取材した俺は見る目があったかもしれない(笑)。

今成
 たぶん元祖。当時は女子で学生プロレスをやるって人っていなかった。

チョロ
 いまでこそスターダムに学プロから入ったりとかありますよね。

今成
 そうそう、フェラりさが卒業後、スターダムに入る時代じゃないですか。あのときは長州ミキティ以外に松浦あじゃっていう女子レスラーも......

チョロ
 あ、たしか松浦あじゃも取材現場にいたなあ。しかし、長州ミキティに松浦あじゃって時代を感じるリングネームだ(笑)。

今成
 ボクのリングネームは「金的桜ヶ丘」ですけど(笑)。ムサビの女の子がアントーニオ
本多相手に試合をしているって面白くないですか? 長州ミキティや松浦あじゃはセンセーショナルでしたね。ボクが入ってからは、スーパー・ストロング・おしんがデビューしたんですよ。

チョロ
 メチャ増殖しそう!女子の学プロは流行ってたりしたんですか?

今成
 いや、続かなかったんですよ、おしんは。でも、ムサビに入るような子がプロレスをやりたいってのは、長州ミキティの活躍というか存在がわりと影響されたんじゃないかなって。

チョロ
 学プロではなく美術大学の学業のほうはどうだったんですか? 実際に入ってみたら、わりと周りが天才ばっかりで、凡人だったことを思い知って悩むみたいな話も聞いたことありますけど。

今成
 ああ、本当に天才ばっかりでした。ボクはもともとグラフィックデザイン志望で、グラフィックデザイナーになりたかったんですよ。まあ、そこはなんとなくぼんやりで、まったくフィックスしてない状態だったんですけどね。1年生のときに、どの学科でも受けられる授業で、先生オススメの映画をただただ見るというのがあって。いい映画ばっかりだから、授業なのにひたすら号泣してしまうみたいな(笑)。

チョロ
 いい授業だー!(笑)。

今成
 それがあってデザインはいっそ諦めて映像にシフトしようと。ドキュメンタリー監督、映画監督になりたいってことで、在学中にドラマみたいな作品をいっぱい撮ったんですけど、どれもしょっぱすぎちゃって......。

チョロ それは自分でショックを受けるくらいの?

今成
 講評会でも本当にボロクソに言われたし、ホントに目も当てられないぐらい恥ずかしい思いをして。親に高い金を払ってもらって通ってるのに、作ってる作品がすべてしょっぱい。いったいなんのためにやってるんだという状態だったんで、先生に「どうしたらいいですか? 最後の卒業制作ぐらいはちゃんと作りたいです」って相談したら「君にしか撮れないものを撮ったらいいじゃないか」って言われて、自分がやっている学生プロレスを撮ろうと。最初は学生プロレスの友達を主演にドラマを作ったんですけど、とにかくそいつに華がなさすぎて「キャスティングが悪い」って先生にめっちゃ怒られたんですよ。で、ちょうど学生プロレスサミットがボクの大学2年生ぐらいのときから再開したんですよね。新宿フェイスに500〜600人ぐらい入れたんですよ。

チョロ いまだと消防法でアウトな詰め込み方ですね(笑)。

今成 そこから自分の団体以外の子たちとも仲良くなって、学プロのチャンピオンを撮ろうと。帝京大学のエロワード・ネゲロ(冨永真一郎)がチャンピオンだったから、彼に連絡してオッケーをもらって撮ることになったんですよね。

チョロ
 発表された『ガクセイプロレスラー』っていろんな賞を受賞してるじゃないですか。それだけ評価が高かったっていうことですよね。

今成
 評価はそうですねぇ、当時からしたら珍しかったんじゃないかな。いわゆる非モテ文化というか、「電車男」から始まる秋葉原文化ってあったじゃないですか。あの文化と学生プロレスラーって絶妙に結びついてて。みんなアニメがすごい好きだったり、そういうものに時間を注いでいる。リアルにモテないモヤモヤを俺たちは学生プロレスにぶつけるんだよ......みたいな。

チョロ
 ツイッターとかSNSはまだそんなに......。

今成
 まだmixiですよね。

チョロ
 ああ、その時代かあ。

今成
 あの時代です。先生たちは「リア充」「非リア充」みたいな言葉を知らなかったらしくて、「その言語感覚は衝撃だった」みたいなことを言ってました。

チョロ
 今成さんとしても手応えはあったんですか?

今成
 ありましたね。まず尺を短くしたんですよ。以前、先生に「こんな長いもの俺に見せるなよ!」ってめっちゃ言われて恐怖症になっちゃったから短編で仕上げようと。22分くらいでギュッと詰め込んでサッと見れるものにしようと思って。短いカットで繋いで、テンポを良くして飽きさせないようにしたんですけど。ポール・グリーングラスっていう映画監督がいるんですよ。手持ちカメラで撮って、カット数がすごく多くて、テンポ良くて飽きない。この編集の方法だったら、まだ自分にも勝ち目があるかもしれないなって。そうしたら先生たちに評価されて、海外でも賞を取れたんですよね。

チョロ そこで実績や評価を得て、卒業後は中京テレビに入社するんですね。

今成
 普通に就職で決まったんですけど、映像制作じゃなくて営業部に回されて......あれはキツかったですねぇ。

チョロ
 卒業後プロレスラーになろうとは考えてなかったんですか?

今成
 全然。プロレスラーはもう学プロで終わり。中京テレビをやめたあともとくに何も決まってなかったんですよ。「会社やめたけど、どうしようか......」みたいな。そしたらディーノさんが電話をくれて、坂井さんがちょうどDDTをやめたんです。そのタイミングと完全に重なって、DDTの映像制作をやらないかと。<14000字インタビューはまだまだ続く>
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