大会後恒例の笹原圭一RIZIN広報インタビューです。今回はRIZIN代々木を9800字で振り返ります(聞き手/ジャン斉藤)


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映画にたとえると大晦日ベラトールとの対抗戦はハリウッド超大作で、皇治VS芦澤竜誠の大阪大会はコテコテの娯楽作品。今回の代々木は火花を散らすアクション群像劇……かと思いきや蓋を開けてみたら、新宿武蔵野館で上映しているかのような文学作品でした!

笹原 純文学ですよね。いや、「絢」文学ですか(笑)。

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「絢」文学の世界に引き込まれた!(笑)。

笹原
 「あとはあなたが解釈してください」という謎かけ的に終わったので、エンドロールが流れても「まだ何かあるんじゃないか……」って席を立たない人がいるような映画だったのかもしれません。

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エンドロール後に何か予告映像があるんじゃないかってやつですよね。

笹原
 代々木は始まりから異様だったんですよ。今回は会場開始が16時といつもより遅かったことや、アクセス抜群の代々木で開催したこともあって大会開始時の着席率がすごかったんですよ。GWのくだりの新幹線くらい、乗車率140%みたいな(笑)。

――
これがたとえば14時だと大会開始に間に合わないお客さんも出てくるってことですね。

笹原
 RIZINにはオープニングショーがあることは知れ渡っていますから、そもそもの着席率自体は高いというか、そこは本当に世界一だと思うんですよ。

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ヌルマゴの「第1試合からこの熱気?ウソだろ」って驚くくらいですし。

笹原
 始まる前からほぼ着席していて、最初から見逃せないってことで入れ込んでいる。レニー・ハートさんの紹介の時点で、普通の大会のセミくらいの熱ですもん。完全に出来上がっている感じです。

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夜の飲み会が楽しみすぎて、家で飲んできちゃった感じですかね(笑)。

笹原
 ボクからすると「よし!」っていうよりも、ちょっと怖いなと思いました(笑)。あまりの熱気だったので、自分たちの手でコントロールできない感じが……制御不能の怪物の背中に乗っている感じです。その怖さはPRIDE時代にも感じたことがあるんですけど。

――
わかります!いまはまったく会場に行かなくなったボクですけど、PRIDEのときはオープニングの異様な熱気を現場で直に感じたかったですから。

笹原
 そのパワーはもちろん心強かったりするんですが、代々木のときははちょっと怖かった。最初からわかっていればそんなことないんでしょうけど、事前に想像していた熱より全然高かったからでしょうね。

――
PPVも売れたんじゃないですか?

笹原
 売れています。最終的な数字はまだわからないですが大晦日級です。コンスタントに大会を重ねながら、毎回安定した数字を出しているって、とんでもない出塁率ですよ!今年のベイスターズの宮﨑敏郎くらい(笑)。

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野球を知らない人にはまったくわかりませんよ!

笹原
 そんなイベントってなかなかないと思うんですよ。何が言いたいかというとですねぇ、日本中のプラットフォーマーたちは早くRIZINと独占契約を結んだほうがいいですよ!(笑)。

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すごくわかりやすくいうと「RIZINをくくって金をよこせ」ってことですね(笑)。

笹原
 下世話に訳すとそういうことです(笑)。でも実際代々木第一体育館をあんな風に超満員で埋められる団体はないですよね。

――
プレイガイド売りだけで代々木第一ソールドアウトは異常事態なんですよね。

笹原
 先行予約の段階でムチャクチャ売れていて、一般発売したら5分で完売って、「え?俺たち嵐みたいじゃん」って思いましたもん。いや、思っていないですけどね(笑)。とはいえすぐ1週間後に有明大会がありますからね……。

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余韻に浸ってるヒマはない。

笹原
 まったくないです。またまた野球に例えると、9回まで投げ切って完投したのに、中2日で先発するようなもんですよ!

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「権藤、権藤、雨、権藤」ならぬ「RIZIN、RIZIN、雨、RIZIN」ですか(笑)。代々木で話題になってることのひとつは朝倉未来選手と戦った牛久選手の引き込みです。

笹原
 「引き込み」がトレンドワードになりましたよね。カーフキックや三角絞めも現象化しましたけど、RIZIN啓蒙シンドロームですよね(笑)。

――
プロモーターからすれば、試合に動きがなくなってしまった牛久選手の引き込み作戦は顔をしかめる感じですか?

笹原
 うーん、超満員の代々木第一のメインですからね。「この大注目の試合で引き込みって、難しすぎだろ」って、そりゃ思いますよ(笑)。

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たしかに強心臓ですよ! 2ラウンド目までは理解できたんですが、最終3ラウンドでもストイックに引き込みにトライ。RIZINが牛久選手につけた「足立区のバカストイックマン」というニックネームがまさにハマったなと。

笹原
 あわやのシーンを作れていれば全然評価も違ったと思いますけど、引き込んでからの展開をほとんど作れなかったですからね。

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――
運営側は選手に作戦を指示できないじゃないですか。「打ち合え!」とか「引き込むな」とか。

笹原
 もちろんです。競技としては全然ありな作戦ですよ。そのことはもちろん否定しない。ただ、お客さんを入れる興行ってこともそうですが、牛久選手本人が努力してチャンピオンになり、ボクらも牛久絢太郎というキャラクターを磨いてきて、今回の朝倉未来戦はそのひとつの到達点ともいえる試合じゃないですか。その2つを考えると「プロとしてどうなんだ?」って言われるのは仕方ないですよね。

――
勝つための姿勢がお客さんに伝わるかどうかってことですね。

笹原
 9回裏ツーアウト満塁でバッターボックスに立って、みんなサヨナラホームランを期待しているところでバントしたら、みんな「えっ?」ってなりますよね。「セカンドの位置が深かったので行けると思ったんです」って言われれば、まぁたしかに守備位置深めだったけど、ここでバントはないでしょ!って。

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そろそろ野球を知らない若者から「意味がわからない!」って言われそうです!

笹原
 たとえば斎藤裕vs平本蓮は内容的には「壁レス競技会」みたいだったじゃないですか。それってあたりまえですけど、修斗やDEEP、パンクラスでも普通に見られる攻防。でも、「壁レスとは何か」を伝えるという意味ではRIZINという装置はむちゃくちゃ機能してるんだろうなとは思いました。

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壁レスであそこまで湧くのは、平本連というストライカーの成長物語をみんなが第1巻から読んでるからですよね。

笹原
 そうです。連載スタートから読んでますからね。デビュー戦から連敗してMMAになかなかアジャストできなかった平本連が「ここまでできるようになったのか」と感慨深く見られる。でも牛久選手の「引き込み物語」は、全30巻の12巻くらいから読み始める感じじゃないですか(笑)。

――
漫画でも伏線がなかったことにされるケースはよくあるんですが、ATT(アメリカン・トップチーム)に出稽古に行って、朝倉未来と因縁浅からぬ堀口恭司が何か策を授けたんじゃないかっていう伏線もまったく回収されていないですからね(笑)。ファンが期待していることに対して何かを表現する、しようとするのがメインイベンターってことですね。

笹原
 プロは求められるものがたくさんあるので大変だと思います。でも、牛久選手がプロとして一皮剥けるためのイニシエーションというか、通過儀式だったのかもしれないですね。
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