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平本蓮のドミネーター撃破を導いた剛毅會宗師・岩崎達也インタビュー。平本蓮と空手をつなぐ日本格闘技のサーガを22000字で追います!押忍!!(聞き手/ジャン斉藤)

岩﨑達也■1969年東京都出身。13歳で極真会館入門。
90年95年全日本ウェイト制選手権重量級優勝。91年、95年、99年世界大会日本代表。
その後MMA転向、2002年、国立競技場で開催された『Dynamite!』でPRIDEミドル級チャンピオンのヴァンダレイ・シウバと対戦。その後、沖縄古伝武術空手を学び、自らの打撃技術を多くのMMA選手に指導。大塚隆史、松嶋こよみ、澤田龍人、石塚雄馬、澤田千優、ミッコニルヴァーナ。今年から平本蓮を指導している。国際空手道連盟 剛毅會 宗師。


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【悪口と本音の15000字】平本蓮インタビュー「朝倉未来には負ける気がしない」

・ボクは最初からあのレベルの平本蓮を見ていたんです■石渡伸太郎

・手負いの平本蓮はRIZINに出るべきだったのか?■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク

・福岡、名古屋、対抗戦!! 笹原圭一のブレーキの壊れたRIZINトーク




――
極真会館では世界大会出場などの実績を誇り、現在は剛毅會空手を主宰する岩崎先生ですが、あくまでMMAを念頭に置いた指導をしているそうですね。

岩崎 はい、「稽古は武術、試合はMMA」というコンセプトでやっています。

――
先ほど村元友太郎、澤田千優(修斗女子アトム級王者)、平本蓮選手の弟・丈選手たちとの稽古を見させていただきましたが、岩崎先生の動きに無駄がないというか。

岩崎
 私の? そうですか(笑)。まあ稽古は毎日やってますからね。そこが格闘技と武道の違いですよね。武道は生涯稽古ですから。いまはMMAファイターに教えてますけど、べつに教えているとは思ってなくて。1人1人の選手に教えること自体、自分の稽古になるんですよね。そうやってこの20年近くやってきてますけど、斉藤さんは昔、私のことを取材されませんでしたっけ? 一度会ったことがあるような……。

――『紙のプロレス』で先生のインタビューを掲載したことはありますが、取材はしたのは別人で。おそらく10年前のことですが、あれからもMMAの研究に余念がなかったわけですね。

岩崎 はい。本来、武術に興味を持つ人はUFCに興味を持つべきだと思うし、逆にUFCに興味を持つ人は武術に興味を持ったほうがいいと思うんです。なかなかいませんけど(笑)。「俺にはMMAには関係ねえよ」っていう方もいますけど、私が入門した極真会館の教えでは、あらゆる格闘技の中で最強は極真空手だと。その言葉を信じてやってきたから「MMAは関係ない」ではすまないんです。だから、こんにちに至るまでMMAを研究せざるをえなかったってところですね。

――岩崎先生は先日RIZINで勝利した平本蓮選手にも指導されてますが、先ほどの稽古でビックリしたのは座礼の意味です。今回試合前に平本選手も座礼しましたが、じつはものすごく深い意味があったんだなって。

岩崎
 稽古を見ていただいたからわかりますけど、座礼することで重心が決まるんですよ。他の人間が持ち上げようとしても持ち上がらなかったですよね。

――
村元選手が丈選手のことを持ち上げようとしても持ち上がりませんでした。座礼しなかった場合はヒョイと持ち上げて。

岩崎 いまの時代、格闘技に限らず欠落しているのはやっぱり型なんですよね。心を込めてちゃんと挨拶することが大事。私自身も昔はそこまで認識してなかったんですが、ここにすべてがあるんだなと。もう変な話、挨拶を一瞬やったら強くなるんです。それで戦えるかどうかは別ですよ。いまより強くなりたいのならば、挨拶が変われば強くなります(キッパリ)。

――
平本選手の座礼も単なるパフォーマンスではなかった。

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岩崎
 座礼したときに「コイツはわかってるな」って感心しましたよ。そのあとの中指ポーズはともかく(笑)。私は「やれ」と言ってないけど、蓮は自然にやった。ほとんどの人がパフォーマンスだと捉えたと思うんですけど、じつはそうじゃなくて身体の安定を図ったわけですよね。平本蓮という男と関わってみて思うのは、最初は会うのがイヤだったんですよ。なんか巻き込まれたくないなと(笑)。

――SNSのイメージからすると(笑)。

岩崎
 春ぐらいにハセケンさん(長谷川賢)の紹介で会ったんです。ちょうど鈴木博昭戦の前ぐらいに来たんです。そうしたら、あまりにもいい子だから。

――
平本蓮はいい子!


岩崎 「キミはSNSであんなことばっか言ってて疲れないの?って聞いたら「仕事なので」みたいな感じで。

――
仕事にしてはハードですよね(笑)。

岩崎
 SNSと現実がシンクロしてる部分がありますよね。でも、考えてみたら我々にもそういうところがあって。漫画の『空手バカ一代』や『四角いジャングル』はフィクションとノンフィクションが混じり合ってましたし、終いには漫画の出来事を実際に極真がやろうとしたわけですよね。

――
極真空手の巨大なエネルギーのひとつは、梶原一騎作品のフィクションを超えようとしたところですよね。

岩崎
 そうなんですよ。「漫画でやってることを現実でもやれ」って迷惑な話なんですけど(笑)。でも、やらなきゃいけない使命感があったわけですよね。それをやらなきゃ極真じゃない!と。そこは平本蓮にもちょっと似てるのかなと思って。彼を見てると、どこまでが本気でどこまでがパフォーマンスなのかはわかりづらい部分もあったんですけど、私はすごく付き合いやすい。たぶん気が合うんだと思うんですよ。あの挨拶ひとつとっても本気。まさかあの場でやるとは思ってなかったんですが、あの場でやるのが正解です。

――春頃から平本選手に指導されていたんですか?

岩崎
 いや、そのときからではないです。そのときは弟子の松嶋こよみの「Road to UFC」があって、そっちが中心だったので、蓮には1日だけ教えただけなんですよ。でも、RIZINの鈴木戦を見て「あ、コイツやりやがったな」と。ちょっとだけ教えたことを取り入れていたんですよ。

――
ちょっとだけですか。

岩崎
 そのあとボクのところに来なかったのは、試合直前になっていじりすぎると、噛み合わない場合もあるし、ちょっと危険な行為。だから彼はあえて来なかったらしいんです。それも正解。でも、取り入れても影響のないものだけを使ったのはさすが。あまりにも感心したんで「ちょっとお祝いしましょう」って夏ぐらいに食事をして。そこからちゃんと見始めたので、3~4ヵ月くらいの指導期間ですよね。

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――
岩﨑さんの教えるもののひとつに、平本選手いわく「置きに行く打撃」があると。

岩崎
 たまにムエタイの選手なんかも使ってますよ。私がやってる空手はそもそも本質は武術なんですけど、現象面として空手以外にも「置く打撃」がある。キックやムエタイでも使ってるけど気づいてないことがあるんです。そこに法則性を見出して稽古させてる感じです。連の場合は“平本ボクシング”をして「置く打撃」を打たせている。あれは空手自体ではないです。

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――岩崎先生の技術を応用させているわけですね。平本選手はあくまでボクシングですか。

岩崎 そうです。彼の1番いいところはボクシング。キックボクシングよりボクシング。いまのキックボクシングは首相撲をやらないから、上下の連動が効いてないんですね。蓮はパンチがすごくいいし、蹴りも強いんですけど、いわゆる上と下の繋がりがないんですよ。そこを稽古しなきゃいけないと思っていたら試合が決まり、そして足をケガしてしまった。やることがボクシングしかないんだったら、ボクシングに徹底しようと。いっさい蹴るな、と。

――
平本選手がケガを抱えたまま試合をすることに不安はありませんでした?

岩崎
 MMAやったら100パーセント負けると思った。ボクシングやったら100パーセント勝つと思った。MMAをやらせない、MMAをやるな、ボクシングをやろうと。しかもアマチュアボクシング。

――
ボクシングじゃなくて、アマチュアボクシングをやりきると。

岩崎
 つまり当てるだけでいいからアマチュアボクシングでいいんです。じつは彼のキックの試合はあんまり見たことなくて。たまたま彼が相手を倒しまくってる映像を見て「こいつはパンチだよな」と。この戦いになったら相手が戦えるわけないと思いましたよ。だからアマチュアボクシングだけでいいと。

――
平本選手の下馬評は低かったですけど、そのパターンにハメ込んだら負けないと。

岩崎
 べつに下馬評自体は間違ってないですよ。でも、その下馬評は蓮がMMAをやったらという話。こっちハナからやる気ないんだから。これはもう私が選手を挑ませるときは常にそうだけど、いまだに異種格闘技戦として捉えているところがありますね。空手vsMMAというか。

――
でも、MMAをやらないことも相当難しいんですね。

岩崎
 難しい。そこは難しいです。そこには細かい技術や、考え方がありますよ。でも、MMAをやっちゃうから、ついつい。今回も深追いしてやりそうになったでしょ。だから「やめろ!!」と言ったんです(笑)。

――
MMAをやってるときに「MMAをやめろ!」と(笑)。

岩崎 たとえると、外国人初のラジャダムナン王者になった藤原敏男さんはムエタイを倒すためにムエタイをやってないですね。拓大でレスリングの練習をやっていたわけじゃないですか。

――
首相撲対策のために。

岩崎
 ボクがよく言うのは「MMAの前に戦いをやりなさい」と。要はケンカなんだけど、相手が嫌がることをやる。嫌がるというのは想定外の攻撃のことですよ。さっき村元くんにも言ったけど、相手が想定内のことをやっても、もつれる試合になる。もつれるから判定に行く。そうすると納得のいかない判定をつけられることもあるじゃないですか。もちろん、もつれた場合の練習はするんですけど、もつれることを想定した動きをやってると絶対にもつれるから。

――
たしかに。

岩崎
 スクランブルになればなるほど、いまのジャッジはどこを評価していいかわからない場合もありますよね。もつれることは想定しつつ、戦略を立てていかなきゃいけない。「いかにもつれないか」と。こないだの松嶋こよみの試合(Road to UFC)もトータルで上回ってるんですけど、決め手が欠けて見えて……。

――
スプリットの判定負けでした。松嶋選手が勝ったという声も多かったんですけど。

岩崎
 決め手がないわけじゃないんですよ。今回の試合までに何人、ケガをさせたか。私もだって相当痛めたし、あいかわらず顔をやられるし(笑)。でも、試合で難しいのは実力が10分の1も出ないときがあるし、もつれたらわけわかんないジャッジを食らうことになりかねない。松嶋こよみはファイターとして実績があります。年々MMA全体のスキルが上がって、打撃、組み、寝技の三角形がどんどんでかくなってるんですけど、MMAの難しさはその三角形を全部使えるわけじゃないってことです。

――
打撃、組み、寝技をいっせいに出すわけではない。

岩崎
 対戦相手の三角形によっても変わってきますから。今回の蓮でいえば、三角形のどこを活かすかといえば、打撃なんですけど。空手の技自体はすぐに身につくわけじゃないですから。だって空手の基本や型も知らないのに空手の技は使えないですよ。ところが皆さん、構えて距離を取って戦うものは空手だと思ってしまうんですよね。

――
まさしく自分です!(笑)。

岩崎
 それは「カウンター」と「後の先」の違いも理解していないんだと思います。後から出すのがカウンター。「後の先」というのはカウンターとちょっと違うんです。カウンターって失敗することがありますよね。例えがちょっとあんまりよくないですけど、非核保有国が核保有国にミサイルを打ち込んだ場合、これは「後の先」を取られてるんです。でもお互いにミサイルを打ち合った場合はカウンターになる。

――
なるほど、機先を制するのが「後の先」。

岩崎
 これも例えが悪いけど、核を持ってる国は、核を持ってない国に対してそれだけで先を取っている。でも、相手が同じミサイルを持っていたら先手は取れてないんです。その状態同士の打ち合いがカウンターです。

――今回でいえば、平本選手は先を取っていたわけですね。

岩崎
 ある種、取れてますね。その努力はしました。つま先の位置、手の位置、後ろ足の位置。

――
そこまで細かく。もともと平本選手の打撃技術がドミさんより上だから先手が取れるわけじゃなくて。

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岩崎
 打撃は蓮のほうがもちろん上なんだけど、ボクシングでいくら上回ってるからと言ったって、そこをぐちゃぐちゃにするテクニックを弥益選手は持ってるじゃないですか。ぐちゃぐちゃに持ち込ませないための考え方を取り入れたというか、整えたというべきか。足し算じゃない、削った感じ。余計なことするなと。

――
余計なことはするなといっても、まったく動かないわけにもいかないですよね。

岩崎
 そりゃ動きますよね。やっぱり格闘技だから。

――
今回は弥益選手が試合を動かしていたと言われますけど、そこは平本選手が弥益選手を動かしていたところもあるわけですか?


・ヴァンダレイ・シウバ戦の悔やみ
・平本蓮は○○に不安を感じていた
・アデザニヤはMMAの打撃、ペレイラはグローブの打撃
・大山倍達総裁とUFC
・黒崎健時、大沢昇、藤原敏男、偉大なる先人たち
・極真空手がMMAだった……などなど22000字のロングインタビューはまだまだ続く!!
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