RIZIN大晦日で宇佐美正パトリックとの対戦が決定した“ブラックパンサー”ベイノアインタビューです!(聞き手/松下ミワ)
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――RIZIN.40では宇佐美正パトリック選手との対戦が決定しました。先ほどの記者会見でのフェイスオフでは、ベイノア選手にしては珍しく緊張感がありましたね。
ベイノア いやあ、そうなっちゃいましたよねえ(笑)。なんか相手が凄く怒ってましたから。ボクはそんなつもりもなかったんですけど。
――フェイスオフも超近距離で。
ベイノア まあまあ、そうなればボクもああいう感じになりますよ。
――芸人の肩書きも持つベイノア選手に対して「中途半端だ」という発言もありました。
ベイノア そこは、ボクの勝手だろと(笑)。でも、だからこそ今回はしっかり結果残さないといけないと思ってます。
――今回、2大会連続大晦日参戦ということですが、ベイノア選手は東京ドーム大会も2回連続出場していて。もはやビッグマッチ常連メンバーになっていますね。
ベイノア 押忍! 本当にありがたいですよね。なかなかそんな格闘家もいないと思うので。
――やっぱり、大晦日ともなると選手も一味違った感覚なんですか?
ベイノア うーん、いざ本番になると「違うな」という感じも正直薄いんですけど、やっぱり去年までは大晦日大会に出場するということをひとつの目標にしてたので。格闘家である以上は大晦日に出たいというのは誰にでもあるじゃないですか。ただ、その夢の舞台を目標にやってきたけど、去年は勝てなくて。だから、次は出て勝つということですよね。
――その対戦相手が宇佐美選手だと言われたときはどう思いました?
ベイノア 「だろうな」と思いました。
――あ、予想的中だった(笑)。
ベイノア もう、RIZINでライト級だと選択肢が限られてくるじゃないですか。ここでガチのトップどころは来ないだろうし。だから、予想はしてたし、彼とはキャラがカブってますもんねえ。
――そこは気になっていたんですね。
ベイノア 気にしますよ! 宇佐美選手がプロになってからというもの、「これ、RIZINに参戦したらどうなんだろう……」と思っていたら本当に来ちゃうし。
――ずいぶん前から案じていたんですね(笑)。
ベイノア ストライカー、キャリアはこれから尻上がり、そしてハーフ……めっちゃカブってます。
――とはいえ、打撃系でも空手とボクシングではやっぱり違うわけで。
ベイノア たしかに、そこは全然違うと思います。まあ、相手も空手をやっていたということで蹴りも使えますけど、やっぱり蹴りに関してはボクのほうが上かなと思いますし。空手ルールだったら間違いなくボクが勝ちますけど、今回はMMAじゃないですか。反対に、相手はボクシングのパンチはウマいんでしょうけど、そこもまた違うと思うんですよね。
――RIZIN福岡大会の宇佐美選手の試合はご覧になりました?
ベイノア 観ました。ちゃんと倒して勝ってるんで、やっぱりパンチはあるなと思いましたね。
――宇佐美選手は、オープンフィンガーグローブにもアジャストしていると思います?
ベイノア そこは、してると思いますね。ただ、逆にボクは空手でやってきたので、じつはボク自身はパンチを打つのはオープンフィンガーのほうがやりやすいんですよ。でも、ガチのボクサーとオープンフィンガーで殴り合うのは今回が初なのでね。練習でもなかなかあの薄さではガチでは殴れないんで、本番になったときにどうかなというのはありますね。
――そこは、出たとこ勝負ですか。
ベイノア だから、ボクもあんまり固めないでというか、相手の危険な技は頭に入れておきますけど、自分のすべてを使って勝とうと思ってます。
――宇佐美選手は、グラウンドの展開でも身体の強さを感じる選手です。
ベイノア だからそこらへんもカブってるんですよねえ。こっちだって、ここまで身体能力だけでやってきてるんですから!(堂々と)。
――そうなんですか(笑)。
ベイノア 勢いで組ませない! 抜けるところは身体能力で一気に抜ける! あとは空手で倒す!! みたいな。ボクはそういうことなので。
――となると、戦略は似てるんですかね。
ベイノア たぶん一緒だと思いますね。
――寝技にはならない。
ベイノア ……いや、わからないですよ。会見では「殴り合う」と言ってましたけど……、どうですかね? もう、バチバチと言っておいて、塩漬けかもしれない(笑)。
――そこはMMAということですよね。
ベイノア 当然そうなりますね。
――そんなベイノア選手といえば、やっぱり「押忍」のイメージが強いですけど、「押忍」の教えは空手から来てるんですよね?
ベイノア そうです。もう、ボクはつねに押忍なので。
――子供の頃から「返事は『押忍』だぞ」と言われていたんですか?
ベイノア もちろん。だから、いま小学生で空手を習っている子とかも、名前を呼ばれたら「押忍」ですし、何か注意されたら当然「押忍」です。でも、怒られたりして「押忍、押忍」言ってると、「押忍じゃねえよ!」みたいな。「どっちなんだよ……」というときもありますけどね(苦笑)。
――「押忍」ばっかり言ってると、一見ふざけているようにも見えかねない(笑)。
ベイノア そうなんですよ。「押忍、押忍言って、オマエちゃんと聞いてるのか!」と。でも、それに対する返事も結局「押忍」なので。
――ハハハハハ! いろんな意味が含まれているから逆に困惑しちゃうという。
ベイノア そう。「押忍」は万能なので。
――その空手を始めたのは何歳だったんですか?
ベイノア 空手は10歳からですね。だから、ボクは幼稚園とかから通っているような空手エリートではないんですよ。
――きっかけは、お父さんに連れられて空手道場に行ったことだったそうですが、お父さんからは「女の子みたいだから」といって連れていかれた、と。
ベイノア 当時は、まったく戦いとか喧嘩には無縁だったので。というか、いまも喧嘩には無縁ですけど、そういうのとはかけ離れていたので「強くなれ」ということで。本当にたまたま近くにあった道場が、いまも通う極真の成増道場だったので。移籍とかもなしに、ずっと通い続けてますね。
――本当に女の子みたいだったんですか?
ベイノア らしいですけどねえ。たしかに、昔の写真とかを見ると内股だったりしますけど。
――内股だったから(笑)。
ベイノア あとは、お絵描きしているとか、そういう感じでしたよね。
――そんな感じだと、空手と出会ったときはどうだったんでしょう?
ベイノア ボクとしては道場に遊びにいく感覚だったので。最初からガチのゾーンには入れられなかったので楽しかったです。友だちにも会えるし。戦いだしたのはもうちょっとあとだったから。
――戦いだしたのは何歳ぐらいだったんですか?
ベイノア でも、1年ぐらい経ってからだから11歳とかですかね。
――けっこうすぐですね。当時も、きっと見るからに身体能力がありそうな感じだったんでしょうね。
ベイノア かもしれないです。ボクがキックをやらされたのも、ポテンシャルを見込まれてみたいなところがあったので。当時は空手で全然成績を残してないんですけど、ちょうどそのときにボビー・オロゴンさんがバラエティの企画で格闘技デビューみたいな。全然格闘技やったことないのに格闘技をやって、大晦日に電撃参戦しちゃうみたいなことがあったので、たぶんそういうのを周りが見て「ベイノアもいけんじゃねえか?」みたいな。
――イメージ先行で(笑)。でも、やりながら「おれ、ポテンシャルあるかも」みたいなのは感じたんですか?
ベイノア いや、感じないです。
――それでも続けるモチベーションがあったんですね。
ベイノア なんか、やめる理由もなかったですし。それに、やめるのもけっこう大変じゃないですか(笑)。
――たしかに、やめるって面倒くさいですもんね。
ベイノア そういう感じで流れに身を任せてやってたので、そのまま決められたスケジュールで通い続け、その流れで強くなっていったという感じなんですかね。
――当時は、空手と並行して部活もやっていたんですかね?
ベイノア やってました。ほかのエリート選手は部活にも入らないでガッツリ空手をやってましたけど、ボクはちゃんと部活もやって。だから、中学は柔道部でしたし。
――おお、柔道経験者なんですね!
ベイノア そう、柔道はちょっとかじっているんですよ。ただ、公立中の柔道部なので本当にサークル感覚みたいな感じでしたけど。そして、高校はテニス部でした。
――全然、一貫性がないですね(笑)。
ベイノア ハハハハハ! そうなんです。なぜテニス部かというと、やっぱりとくに勧誘が強かったので。でも、テニスも全然ダメで。打ってもネットかアウトでしたねえ。
――お話をうかがっていると、ベイノア選手ってけっこう流されやすいタイプですね。
ベイノア めちゃくちゃ流されてます! 流されて生きてきたのが、よかった部分もあると思うんですけど。結果的に、ココに流れついているんでね。
――そんな中でも、空手だけはずっと続けていて。そこから、キックに踏み込んだのは、先ほどのお話のとおりポテンシャルを見込まれて。なんでもやらせたくなる身体能力なんでしょうね。
ベイノア そうですね。最初は、極真会館からキックの大会に出ている先輩たちがいて、やっぱり空手のメンバーなのでキックボクシングができる人たちがあんまりいなかったんですよ。それで、練習相手として「ちょっと手伝って」みたいな。だから、ポテンシャルとイメージだけでそういう役回りに抜擢されました。
――「ベイノアならできるだろう」と(笑)。
ベイノア そうなんです(笑)。それで自分も大会に出たら意外といけたという。当時、ボクは空手ではあんまり結果は残せてなかったんですけど、空手で結果を残せるようになったのは、じつはキックに出てからなんですよ。キックに出はじめたあとに空手も強くなっていったんですよね。
――18年全日本ウェイト制空手道選手権大会・軽量級で優勝という成績はその頃だったんですね。そのキックの練習自体も成増道場の中で完結してたんですか?
ベイノア 基本はそうです。
――じゃあ、キックの動きと共鳴して空手もどんどん強くなったという。
ベイノア 空手もつねに技術の幅は広がっているじゃないですか。だから、キックボクシングっぽい動きが空手にハマったというか。相手がやりづらかったんですかね。空手では軽量級の日本一になったので。そこからキックにも専念するようになりました。
――そのキックも、J-NERWORK、RISEと負けなしで2冠となったわけで。
ベイノア 最初はそうでした。というか、そんな時代もありましたね……(しみじみと)。
――いやいや、負けなしで2冠って相当凄いですよ。当時、自分の中で「オレ、強いじゃん!」みたいにならなかったんですか?
ベイノア いやあ、あんまりそういうのは。それに「凄いじゃん!」となりかけたら、空手の師範から「おい、オマエ調子に乗るなよ」みたいなのがあるので(笑)。
――さすが、押忍の世界ですね(笑)。
ベイノア そういう目も気にしつつだし、ボクと師範のそういう関係性はずっと変わらないですから。
――ああ、でもそれって意外といい環境ですよね。天狗になりそうなときに「違うぞ」と言ってくれる方がいるという。
ベイノア 本当に小学校の頃から見てくれている師範なので、絶対に逆らえないですよね。でも、負けなかったのは、いま思えば不思議ですかね。そのときは必死でしたけど。試合が決まったら「負けられない」ということで必死にやっているうちに当時は無敗だっただけという。
――そうなると、将来的にもう格闘技の世界でやろうという気持ちだったんですかね?
ベイノア いや、それは全然なかったです。
――え! なかったですか?
ベイノア とにかく、空手、キックに流されて。でも、何かべつのことをやりたいわけでもなかったので。
――「ベイノアだからできるんじゃないか」といろいろとやっていただけ。
ベイノア だから、無敗でRISEのベルトを獲ったあたりで、まあ「格闘技で行こうかな」と思ったぐらいです。
――ちなみに、ベイノア選手といえばお笑い芸人の一面もありますが、お笑いをやろうと思ったのはどういうタイミングだったんですかね?
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ベイノア選手みたいな太陽みたいな大晦日が続いて欲しい!!
星野源の「日常」の世界観に戻るのは格闘技ファンとして、ちと厳しいんですけども