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関根シュレック秀樹を秒殺したスダリオ剛インタビュー。スポーツ万能の日本人ヘビー級が世界に殴り込むか(聞き手/ジャン斉藤)


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――
以前はコーチのエンセン井上さんの自宅の近く(埼玉県)に住んでましたけど、いまは都内なんですね。

スダリオ ここからだと高速まですぐで、いろんな練習場所に行きやすいんで。ただ、ペット可でランクルが駐車できる物件がなかなかなくて……。

――
ボクもペットを飼ってるんですけど、ペット可というだけで物件が一気になくなりますよね。

スダリオ
 あー、少ないですよね。別の物件でいいところが見つかりそうなので、また引っ越すことになりそうなんですけど(笑)。

――
いい物件を逃すと次はないですからね。昨年は大晦日前にケガをされて、今回のシュレック戦は10ヵ月ぶりの試合。53秒という短時間で勝利をものにしましたが、贅沢なことをいえば、もっと試したいことはあったんじゃないですか?

スダリオ
 正直それはありましたけど、勝つことがすべての世界なので。とりあえず、勝ててホッとしましたね。

――
やっぱり勝つことが一番重要ってことですね。

スダリオ
 そうですね。結果が求められる世界なので。たしかにもっと見せたかったんですけど、それは今後できると思いますし。今回は最近、波に乗っているシュレック選手相手にこういう勝ち方ができたことで自信がつきました。

――今回は追撃のパウンドを出さなかったですね。

スダリオ
 もともとシュレック選手がいい人だってわかっていて、憎しみも正直なかったんで……。ただ試合なんで「やるしかない!!」とは思ってました。でも、いざ2発目の追い打ちをかけようとしたときは、白目むいてバタンとなっちゃっていたので……あそこで堪えるのもけっこう難しいんですよね。止めるのもめっちゃ力がいります。

――
憎しみがあろうがなかろうが、試合で興奮してるわけですもんね。

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スダリオ
 しばらく手を下ろさなかったのは、力が入っていたからで、すっと下ろせなかったんです。でも、なんとか止められてよかったです。あのまま強いパンチを打ったらシュレック選手に強いダメージが残っちゃうだろうし。あと、いままでと考え方もちょっと変わったところもあります。

――
どう変わったんですか?

スダリオ
 「やるか、やられるか」の世界だってことは、いままでと変わらないんですけど。純粋にボクがなんでこの世界に来たかといえば、強くなって稼ぐためなんで。もちろん男として強くなりたいっていう気持ちは第一にありますけど、あんまりナメたことを言ってこない選手には必要以上にやることはないなって。今回はシュレック選手がいい人だっていうのがわかってたから、正直煽れないし、憎しみはないんですけど。目の前にいる者は全部なぎ倒すという気持ちで試合に挑みました。

――シュレック選手ってけっこうタフじゃないですか。一撃で終わると思いましたか?

スダリオ
 いや、まったく思わなかったです。シュレック選手はどの試合を見てもけっこう粘るじゃないですか。1ラウンドで終わったのはロッキー・マルティネスくらいですよね。だから自分でもびっくりはしました。やっぱり日頃のスパーリングではそこまで強く打たないじゃないですか。練習で相手を倒すパンチって打たないので、自分の力がどんなもんかって正直忘れてるところがあったんです。試合だったらこういうパンチが出せるんだ……ってわかったところはありますね。

――
自分の力をあらためて実感したと。試合後のバックステージでシュレックさんとお話してる動画は評判いいですね。

スダリオ
 らしいですね(笑)。実際にシュレック選手が心配だったんです。リングの上では目の焦点が合わなかったし、ぽかんとしてる感じだったから。裏で会ったら普通に話してくれたので安心しました。

――
セコンドのエンセンさんからは何か言われましたか?

スダリオ エンセンさんも「ボンサイ柔術の人たちはいい人だから最後に殴らないでよかったね」って。あのままやったら試合後に会えないし、挨拶もできないですから。今回とりあえず勝ってホッとしたんですが、正直よろこんでるヒマもないので。次に向けてまた少しずつやってます。もっと見せたかったというか、今回グラウンドで付き合おうかなと思ってたんです。

――
えっ、ボンサイ柔術のシュレックさん相手に?

スダリオ
 はい。試合前にエンセンさんともお話したんですけど、たとえば寝技の展開になってもいい勝負できる、むしろ勝てるんじゃないかと。

――
それはグラウンドの展開に不安がないってことですね。

スダリオ
 はい。全然負けるイメージが湧かなくて。テイクダウンされたら、そのまま付き合ってもいいかなって思ったんですよね。シュレック選手と戦ってきた選手って、シュレック選手が前に出たら、ちょっと下がるじゃないですか。それはタックルと打撃、どっちがくるかわからないから下がってるんだと思うんですけど。今回ボクがストレートというか左フック気味のパンチを合わせられたのは、タックルが怖くなかったからです。タックルを切ることもできるし、寝技に持ち込まれても大丈夫だって万全な感じだったから、しっかりとしたパンチが打てたのかなと。

――
今回KOできたのは、レスリングや寝技が総合的にレベルアップしていたからなんですね。

スダリオ
 不安な気持ちがなく、それでおもいきって打撃にいけたことは大きかったですね。反応や距離感もだいぶ掴めてきたので。サウスポーとオーソのときの距離感も急に身についたっていう感じです。

――
急に身についたと?

スダリオ
 そうです、練習してるうちに。もちろん考えながらなんですけど、急に「あっ、これだ」って気づくことがけっこうあるので。そういう成長がいくつもあったので、ケガする前の最後の試合(セイント戦)、シビサイ(頌真)選手に負けたときより全然強くなっている自信がありましたね。

――
シビサイ戦では試合途中にスイッチしてましたよね。

スダリオ
 あのときは、カーフを効かされて無理やりスイッチするしかなかったんで。やったことなかったんですけど。

――
そのわりにはすごくスムーズというか。

スダリオ
 いやいや、ぎこちないです。エンセンさんにもあのスイッチは褒められましたけど。自分がミノワマン選手にカーフを効かせて勝ってるのに、自分がカーフを効かされて倒れたらカッコ悪いじゃないですか(苦笑)。だから意地でも絶対に倒れたくないってことで。あの頃は正直、寝技やレスリングのスパーリングをやれてなかったんです。大会前にアメリカに1週間だけ行って、レスリングをほぼ教わらずにボコボコやられるだけで帰ってきたから不安しかなくて。

――
シビサイ戦は寝技に持ち込まれたら……という不安が強かったんですね。

スダリオ
 そうですね。ヘビー級の相手と組技や寝技をやれてなかったことはけっこう不安要素でした。そういうふうに思わせないような発言はしてたんですけど。あの負けでとにかく自分がリングで感じた足りないものは、レスリング、寝技のスパーリングですね。それで今度は7週間アメリカに行くことにして。

――
スパーリングができていなかったのは、日本にはヘビー級が薄いという事情もあったんですか?

スダリオ
 いないんですよ。だからやっぱりアメリカで練習できたことが大きかったです。

――
向こうには重量級がウジャウジャいますもんね。

スダリオ それにミドル級やライトヘビー級の人でも普段はデカイんで。みんなヘビー級から絞ってくるんですね。ヘビー級がいなくても多くの選手はヘビー級と同じ体重だから、いい練習になりますし。それにみんな動けるし、レスリングができて、MMAスパーもやれるので。

――
UFCやベラトールの選手と肌を合わせることで、自分の実力が測れるところも大きいんでしょうね。

スダリオ
 それもあります。あとベガスだと世界中から選手が集まって、ファイトキャンプもやったりするから「この選手はどういう選手なんだろう」って調べることで、自分のレベルがけっこうわかるんですよ。正直「えっ、これでUFCファイターなの?」という選手もいたり……。レスリングがうまい人にもテイクダウンされなくなったりして、少しずつ自信につながって。

――
それはアメリカで練習してきたからこそですね。

スダリオ
 今後海外の選手と試合で戦うことになれば、この経験はまた活きてくるなって。あと向こうでエンセンさんが付きっきりじゃないのもまたいいですね。エンセンさんは他に仕事があったりするので、最初の1週間だけで帰っちゃうんです。ボクは英語が喋れないじゃないですか。

――そんな放置プレイが!

スダリオ
 ホント最初は心細かったんですけど(笑)。ひとりでやっていくうちに相手の言ってることもわかるようになってきて、仲良くなった人たちがUFCやベラトールのファイターだったりしたことで、トレーニングや練習を誘ってくれたりして。

――エンセンさん不在で成長できた面もあると。

スダリオ 正直孤独なんでエンセンさんにずっといてほしかったんですけど(笑)。去年の9月のときは7週間いて、2週間はサンディエゴだったんですけど。エンセンさんはネイビーシールズに柔術を教えに行っちゃったんで、まるまるいないんですよ。その次にベガスには5週間いたんですけど、エンセンさんがいたのは1週間だけ。4週間もまるまるひとりじゃないですか。それは人生の経験値としてよかったですね。

――精神的にもタフになれたわけですね。

スダリオ
 そこからアメリカにひとりで行くことも怖くなくなって。今年の3月には1ヵ月間くらい行ってましたし。

――
やっぱりアメリカ遠征は定期的に行かないと血肉にはならないんでしょうね。試合を見てるとスダリオ選手の動きって120キロ近くあるように見えないんですよね。ヘビー級でありがちなドタバタした感じはないし。

スダリオ
 あー、アメリカでベラトールのティム・ジョンソンにも言われました。「同じヘビー級だよね?」って。

――同業者からも言われるくらいなんですね。

スダリオ
 めっちゃ嬉しかったです。まだまだ学ぶこともたくさんあるんですが、世界に出ても正直、戦えないとは思えない。無理だと思いたくても思えないんですよ。

――そのくらい自信がみなぎっていると。UFCコンテンダシリーズに出てる選手くらいだったら全然いけるってツイートされてましたね。

スダリオ
 全然いけますね。「明日試合しろ」って言われても全然勝てます!

――
気持ちいいです!(笑)。

UFCと契約するのがゴールではない。生き残るためにはどうすればいいのか? インタビューはまだまだ続く
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