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日本人男子唯一のUFCファイターだった佐藤天が契約更新!……とはいっても最後の試合は2020年11月。もう1年以上も経過しているがいったい何があったのか? フロリダの名門サンフォードMMAでトレーニングに励む佐藤天に真相を直撃した(聞き手/ジャン斉藤)


――
今回、ギリギリでUFCとの契約更新が決まったと聞きました! 無事に契約できるまでは相当ヤキモキされたんじゃないですか?

佐藤 そうですね(苦笑)。去年の春口ぐらいからずっと準備していたので。

――
1年近くかかったと。マネジメントのシュウ・ヒラタさんからは「前向きな方向で話が進んでいる」と聞いていたんですが……もの凄く時間がかかりましたよね。

佐藤
 UFCからは去年の4月の段階で「フロリダに残ってくれるんだったら、イレギュラーなかたちになってもオファーします」ということで、そういった緊急オファーのときに正式な契約書が来るという感じだったんですよね。「1~2週間前のオファーが来る可能性が高い」ということで、UFCの大会スケジュールを見ながら常に試合の準備はしていたんですよ。でも、いつになっても決まらないんで、そこからは試合1週間前ぐらいに体重を落とせるようにずっと体重をキープしていた感じですね。

――
……えっ!? つまり、コロナなどでのウェルター級の選手欠場に備えてずっと準備していたという?

佐藤
 はい(苦笑)。UFCって毎週大会がありますけど、興行がない週もあるじゃないですか。だから、そういうときに食べたいものを食べて、また体重をキープしてというのを4月から10ヵ月間やってましたね。

――
……尋常じゃないですね(笑)。

佐藤
 なので、身体はキツかったんですけど、選手としてはブッ通しで練習に取り組めたというか。……まあでも、ストレスはありました(苦笑)。

――
当然です!

佐藤
 ちなみに、緊急要員の中でも何番手というのがあるみたいで。

――いわゆるウエイティングリストですよね。UFCが契約したい選手の優先順位がつけられていて。そこに入ってなければ待てど暮らせどオファーはないという。

佐藤
 そこでも、リストの一番上のほうに入っているというのを聞いていたので。だから、自分としてはやっぱりこのチャンスがあるのに、ほかの団体に行くというのはイヤだったんですよね。まあ、ちょっと普通ではないですけど、それでもいいのかなって。

――
佐藤選手のように上位に入っていてもなかなかオファーがないこともあると。

佐藤
 UFCって試合までに3回コロナの検査をするんで欠場者が出る可能性も低くはないんですけど、意外にも陽性者が出なかったので契約も進まずという(苦笑)。

――UFCにとっては出場選手が陰性だというのはいいことなんですけどねえ。

佐藤
 で、秋ぐらいですか。いよいよ、UFCのマッチメーカーから「試合をするのはかなり難しい状況だ」という話があって。だから、シュウさんからも「ほかの団体も考えておかないといけないよ」という話は挙がってましたね。

――
そういう打診があったときに、心揺らぐものはあったんですか?

佐藤
 いや、シュウさんやコーチたちには「UFCでやりたいです」という話は伝えていました。正直、ほかの団体もUFCよりもファイトマネーが高いという感じでもなかったんで。コーチたちも「それだったらUFCを待とう」というスタンスだったんですけど……、また参戦が延びたときに、コーチたちも「試合ができないというのが一番よくないから」と。

――待っていたのにこんな対応をするUFCに対してイライラしませんでした?

佐藤
 まあ、自分が求められないというのはキツイところがあります。ただ、UFCにとってボクは外国人選手で、最後の試合で負けてチャンスをつかめなかったからこの環境にいるというのも理解していたので(4試合契約で2勝2敗)。……でも、やっぱり「コノヤロウ!」という気持ちはありましたね。

――
それでも、ほかの団体と契約せずに我慢したことが、結果的によかったということですもんね。

佐藤
 「UFCを待つ」というボクの返事にシュウさんも困ったと思うんですけど、その段階でシュウさんもマッチメーカーにプッシュしてくれて、「2021年のうちに1試合はスクランブルで組む」というお話までいただいたんです。ただ、それと並行してほかの団体とも話をしたり、実際にオファーをもらって条件を聞いたりもしていました。そんな中で、12月4日の大会にUFCから1回オファーをいただいたんですよね。

――
ああ、そう聞いています。

佐藤 「ついに決まる!」という感じだったんですけど……今度はビザの問題でダメになりました(苦笑)。

――あらら。

佐藤
 それも、1週間前のオファーだったんですけど、いまビジネスビザで滞在しているので、UFCのほうでビザを変えてもらう必要があったんですよ。当初、それは3~4日で変えられるという話だったんですけど、運悪くこっちの祝日と被っちゃって……。「あと数日足りない」ということで流れてしまったんですよねえ。

――
うわあ~。なかなかうまくいかないですねぇ。

佐藤
 で、ほかの団体からのオファーの中に、PFLの話もあって。PFLは4月からシーズンが始まるので、「いよいよ決断しないといけない」という中で2022年の年明けを迎えたんです。そんな中で、じつは1月半ばにもUFCの緊急オファーをもらったんですけど、それもまたビザの問題で飛んでしまって。

――
佐藤選手ってUFCで試合が何度も飛んだりしてて、ハードラックなことが多いですね。

佐藤
 今度はコロナの影響でビザが3週間ぐらいないと変えられないという。だから、シュウさんとコーチ全員とでミーティングして「もし、これで本当にビザが間に合わなかったら、もうPFLにしよう」と。シュウさんも、UFCは上場した影響もあって、いつ正式オファーを出してくれるかわからないし、試合が決まらないのに契約書を出してもらうのはけっこう大変だと思うと言っていたので。

――上場企業であるがゆえに。

佐藤
 そしたら、次のシュウさんからの連絡で「UFC、決まりました」と。

――
うわ~、本当に劇的な展開ですね!

佐藤
 でも、連絡をいただいたときのシュウさんの第一声は「いいニュースと悪いニュースがあります」と。で、「悪いニュースは、ビザが来週末の試合に間に合いませんでした」と。そして、「いいニュースはUFCが正式にコンタクトをくれました」という。

――
なかなか粋な伝え方で(笑)。

佐藤
 だから「よかった~~!」と。本当に我慢して待ってた甲斐があったと思いましたね。

――
佐藤選手ってUFCではけっこうトラブル続きでしたけど、最後の最後にいい目が出た感じですね。

佐藤
 綱渡りでしたけど、本当にここで決まらなかったらこれ以上アメリカにいられないというところまできていたんで。でも、周りも凄く動いてくれたんですよね。コーチたちもけっこういろんなところに当たってくれて。レスリングコーチの1人にカミという人がいるんですけど、カミなんかはあとでジムですぐ会えるのに、わざわざ電話くれて「昨日の夜にずっとキミのことを祈ってたよ」と。

――
やさしい!

佐藤
 そういうエネルギーも働いたのかなと思います。

――
しかも、シュウさんは土壇場でPFLよりもいい条件を引き出したと聞きました。どうやってそんなマネを(笑)。

佐藤
 はい(笑)。前回の試合で負けてますし、契約更新はちょっと上がるか横ばいだと聞いていたんですよ。その中で、自分は下がってでもやりますと伝えていたんですけど、さらにラッキーみたいなのはありましたね。まあ、更新する際は下がることはないらしいですけど。

――
それは、佐藤選手自身がUFCといいコミュニケーションを取れているというのが大きかったんでしょうね。で、今回はそんな佐藤選手のファイター人生についてもうかがいたいんですが、大学まで柔道をされていた佐藤選手は、当時からMMAを見据えた練習をしていたと聞きました。<13000字インタビューはまだまだ続く>

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