c7126fe98b84faa02e19e1a8e324fd7bf2404b74
大晦日に女王・浜崎朱加を撃破した超新星・伊澤星花インタビュー(聞き手/松下ミワ)


【1記事から購入できるバックナンバー】

【超新星大晦日到来】伊澤星花 「どうやって負けるんだろう?と思ってました」

・セコンド横田一則が明かす「牛久絢太郎 衝撃ヒザ蹴り流血TKOの裏側」

・100キロ超級・日本人最後の金メダリスト 石井慧が見た日本柔道“復活”という幻想

・最狂夫婦がRIZINに襲来! 久保優太&サラ「なんなら嫌われたいぐらい」




――
RIZIN大晦日、伊澤選手めちゃめちゃ凄かったです!!

伊澤
 ……ああ、ありがとうございます。

――
あ、その反応は、もう「凄い」と言われすぎて、すでに飽きてる感じですね(笑)。

伊澤
 ええっと、正直めっちゃ言われてますねえ(苦笑)。もう、SNSとかの反応は本当に凄かったんで。でも、自分の周りは自分自身も含めてべつにあんまりという感じなんですよ。

――
近しい人も、そんなにチヤホヤしてくれないですか。

伊澤
 もう、本当にいつもどおりです。お正月は実家にも帰ったんですけど、やっぱりみんな普通というか。でも、その普通の反応がまた安心感があってよかったんですけどね。

――
じゃあ、伊澤選手から距離のある人ほど浮き足立っているということなんですかね。

伊澤
 フフフフ、そうだと思います(笑)。

――
でも、試合の衝撃はやっぱり凄くて。年明け1月5日、YouTubeに大晦日の試合動画がアップされましたけど、伊澤星花vs浜崎朱加の試合は、同じく女子の試合のパク・シウvsRENAの試合の倍以上再生されてましたから。

伊澤
 ああ、本当ですか? それはうれしいですね!

――
それだけの驚きがあったにもかかわらず、それに一番驚いてないのは伊澤選手という(笑)。

伊澤
 ハハハハハ! でも、横田(一則・ K-Clann主宰)さんとかも「練習どおりだっただろ?」という感じでしたよ。まあ、横田さんは練習どおりだったことがうれしかったと言ってくれましたけど。

――その横田さんの「練習どおりだっただろ?」発言は試合動画にも音声が乗っていました。でも、あれはいったい何が「練習どおり」だったんですか?

伊澤
 組み方とか、組んでからの展開とか、最後の極めるまでの流れとか、すべて練習で意識してやってきた動きが試合に出たという感じだったんですよね。

――
それは、浜崎対策がしっかり練習でできていたという?

伊澤
 いや、浜崎さん対策というよりも、普通に自分のMMAのレベルを上げていくための練習をやっていたんですけど、その中でやってきたことが出たということです。単純に、作戦としては自分はスタミナに自信があるので、スタミナで勝つぞというのは考えていたんですよ。だから、キツイところで抜かないというか、競り勝つ練習をしていたんです。

――
もうスタミナで上回ること自体が作戦だった。

伊澤
 自分の中で流れは何パターンもあるので、そこにハメられるように動き勝つという感じですね。だからこそ、キツイところで出し切るという練習で根性を鍛えていた感じです。走り込みも、自分の限界を越えるぐらいの走り込みをしましたから。

――「試合が決まったときは不安もあったけど、練習をするうちに自信がついていった」というのはそういう部分だったんですね。

伊澤
 それもありますし、試合が決まる前はケガとかもあったので。でも、練習では横田さんも盛り上げてくれるんで、それで凄く自信がついていきました。

――
その試合展開についても詳しくうかがいたいですが、まずは1ラウンドの最初に組み付くシーンです。伊澤選手が打撃を出しながら組み付く姿が印象的でしたが、あの取り方だと組めるという確信があったということですか?

伊澤
 自分の中で組むパターンは何個もあるんですけど、浜崎さんがサウスポーだったので、打撃を出したら入れるな、と。だから、打撃を出して組むのは流れの中の一つでしたね。

――そこからは組みついて終始コントロールしていこう、と?

伊澤
 いや、べつに組むプランでもなかったんですけど、勝手に動いちゃった感じです。自分の中では、気付いたら「あ、組んでる」という。

――
そういうもんなんですか(笑)。浜崎選手も組みが得意だと思うんですが、組んだときの圧というのはどうだったんですか?

伊澤
 最初に組んだときに、アームロックのセットをされていたんですよね。それは凄く怖いなあと思いました。ただ、やっぱりもともとアトム級の選手なので軽さはあったかな、と。

――
浜崎選手はもともとアトム級から1キロ上げてきてる選手ですよね。反対に、ストロー級から3キロ落としてきている伊澤選手とはパワーも違ったということですね。

伊澤
 たぶん、普段の体重は浜崎さんと比べてもそんなに変わらないのかなと思うんですけど、自分が戦ってきたのは本野美樹さんとかARAMIさんとかで、ARAMIさんに関しては契約体重54.5キロで戦っていましたから。そういう感じで、これまでの相手は重いところから落としてきている選手じゃないですか。その人たちと比べるとやっぱり違いましたかね。

――最強クラスの浜崎選手とはいえ、そこは伊澤選手にアドバンテージがあった。

伊澤
 重さとか単純なパワーに関してはそうですね。でも、技術面、とくにアームロックは怖かったです。だから、1ラウンド目に早い段階でテイクダウンできなかったのはアームロックのプレッシャーですね。

――
とはいえ、そこからコーナーで足を掛けてテイクダウンを取るシーンがありました。あれも左足がダメなら右足を攻めるという、本当に矢継ぎ早でしたよね。

伊澤
 あれは、単純に柔道の足技の一つです。大外刈りから大内刈りに切り替えてテイクダウンという。柔道だと道着があるので、道着でコントロールして相手の体勢を崩してから足を掛ける感じなんですけど、自分は密着していたほうが得意なので、あの場面もスムーズに出せたのかなと思います。

――グラウンドの展開では上を取られるシーンもありました。

伊澤
 でも、あそこは自分が下でしたけど、もう上向いちゃったらアームロックのセットは解除できるので。それに、自分は下からの寝技も得意なんですよ。

――
その下からの技の一つが、あの蹴り上げ攻撃ですよね!

伊澤
 そう。蹴り上げは普段からやっている動きなんですよ……弟を実験台にして。

――
えええ! 弟さんを!

伊澤
 フフフフ……。普通は練習でもやらないんですよ。あれ、普通の練習仲間にやると絶対に嫌われますから(笑)。

――
ハハハハハ!

伊澤
 けど、弟にだけは「やっていいだろう」ということで、ずっと練習していたんです(笑)。

――
ホントにヒドイ姉貴(笑)。じゃあ、ある意味では狙いすましていた攻撃でもあったんですか?

伊澤
 まあ、狙っていたというほどでもないんですけど、できるという自信があった攻撃の一つではあります。

――
その後、フロントチョークに入ったところで1ラウンド終了となりました。あのときはけっこう手応えがありそうでしたよね?

伊澤
 そう、最後のフロントチョークはけっこう型に入ってたんですよ。ちょうどタイマーが見えて「ああ、時間ないな」と思っていたんですけど、あの型にセットだけしておいて相手を削ろうと思ったので、
相手の体力はかなり奪えたと思います。だから、浜崎さんはけっこう苦しかったと思いますね。

――ということは、もうちょっと時間があったら極められたかも?

伊澤
 そうですね。型だけは2ラウンド目のフロントチョークよりも、1ラウンドの終盤のほうがしっかり入ってましたから。なので、1ラウンド終わったときの感触はよかったです。自分のスタミナもまったく切れてなかったんで「全然いけるな」と。ただ、横田さんからは「気だけは抜くなよ」と言われましたけどね。

――
じゃあ、インターバル中はすでに確信めいたものがあったんですね。そして、2ラウンド目ではまたニューバージョンの蹴り上げが見られたというか。相手の腕を持ったまま、あるいは足を持ったまま相手が逃げられないよう固定して蹴り上げるというのは凄かったです!

伊澤
 あれは普通に寝技のセットと蹴り上げを同時に進行したということなんですけど、極めを狙いながら蹴れるタイミングがあったんで蹴ったという。自分の中ではダメージを与えるというよりも、意識を散らすような感じでしたね。

――
隙をつくるための波状攻撃という。でも、アレをやられたら動けないし、顔面蹴り上げなんでダメージも大きいですよね。

伊澤
 で、あの蹴り上げが効いたので、手が空いてきて、三角の体勢に入れたということなんですよね。

――
は~、なるほど! そして、その三角も一本獲ろうというよりも、あの体勢で殴り続けようという。

伊澤
 そうです。練習の中でも「極める」というより「削る」という意識でやってたので。浜崎さんも寝技が上手なので、そこで強引に極めにいくと逃げられてポジション取られるという危険性もあったので、自分がいいポジションを取れたら無理していかないという意識でいましたね。

――
RIZINでのハム・ソヒ戦では浜崎さんが三角の体勢に入られたまま殴られるシーンがありました、あの試合も参考にしたんですか?

伊澤
 いや、それが全然その試合は観てなくて(苦笑)。あとから「浜崎さん、三角で固められて~~」という話は聞いたんですけど、「へえ、そうなんだ。全然知らなかった」みたいな。ただ、自分の得意なかたちではありました。

――
その後、殴り続けてフィニッシュという、まさに完勝でした!

伊澤
 あの瞬間も「あ、勝った」というだけでしたね。普通に「試合で勝ってよかった。……以上!」みたいな。

――
やっぱり驚きはなかったですか(笑)。それでも、事前の下馬評は優勢だったわけではないと思うんですよ。そんな中で、伊澤選手としては何割ぐらいのパフォーマンスが出せたという手応えなんですか?

伊澤
 まあ、出来としては70パーセントぐらいなのかなと思いますね。本当は上をとって攻めるほうが魅力的ですけど、そこで下を選んじゃったところがまだ自分の弱さなのかなあと思いますし。あとは、打撃がそんなに見せられなかったので、そこをもうちょっと見せられたらよかったのかなとも思います。でも、やっぱり、いつもの試合より「軽いな」というのが一番でしたかね。

――そこの感覚が強いんですね。

伊澤
 自分自身、今回はめちゃめちゃキツイ練習をしてきたし、泣かされるぐらい追い込んできたんですよ。そこで、60キロとか70キロぐらいの男子選手といつもガチンコで練習していたんで、それに比べるとどうしても小さいじゃないですか。だから、普段の練習のほうが怖いなって。

――
そのへん「女子選手は女子選手と練習したほうがいい説」ってあるじゃないですか。それについて伊澤選手はどう感じてます?
この続きと、扇久保博正、平本蓮、船木誠勝、伊澤星花、齋藤彰俊、佐藤天……などの1月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「15万字・記事18本の詰め合わせセット」はコチラ

この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック! 1記事110円から購入できます!