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──以前から小佐野さんの連載で人材輩出工場としてのドラゴンゲートの話が出てきましたが、ここにきてあいかわらずのすごさはありますね。
小佐野 鷹木信悟がIWGP世界を獲ったりね。
──鷹木選手の新日本プロレス入団はアヤがあったわけじゃないですか。もともとジュニアの選手として契約して。
小佐野 あのときは高橋ヒロムがケガで長期欠場となって。新日本としてはジュニアの選手がほしかったから鷹木に声をかけたんだろうけど。
──でも、鷹木選手はヘビーで活躍してたわけですよね。
小佐野 ドラゲーってみんな身体がちっちゃいからジュニアヘビーみたいな見方をされるけど、彼らは階級でやってないから。みんな無差別級。
──階級の概念がないわけですね。
小佐野 だから新日本でジュニアとしてデビューしたときはビックリしたし、ちょっともったいないなと思ったけど。
──もったいないですか?
小佐野 たとえばあの年(2018年)の春、鷹木は全日本のチャンピオン・カーニバルで活躍して、開幕戦で当時・三冠王者の宮原健斗に完璧に勝っちゃったんですね。あの人はヒールなのでドラゲーではブーイングを浴びるんだけど、全日本ではどこの会場にでも大歓声で迎えられて。彼のガンガン攻めるスタイルが全日本に合ってたんです。
──キャラクターじゃなくてファイトスタイルが歓迎されてたってことですね。
小佐野 うん。ユニットで参戦してたわけじゃないからヒールだろうが関係ないからね。石川修司とやった試合なんかも、あんなに体格差があるのに全然見劣りしなかったし。その石川戦はプロレス大賞でベストバウトにノミネートされたくらいだから。
──階級の概念が戦いの中で、自分のスタイルを作り上げてきたんですね。
小佐野 彼は他団体に出ていくことが多かったから田中将斗なんかともけっこうやっていたはずだし。だからこそ新日本のジュニアではもったないなと。そのときの新日本はジュニアのトップでやれる選手がほしかったんだろうね。だって最初からロスインゴに入ったでしょ。ロスインゴでジュニアを充実させるのはけっこうな役割だから。
──新日本としても高い評価をしていたってことですね。
小佐野 鷹木の実力を知ってる選手や関係者からすれば「えっ、なんでジュニアなの?」って思ったはずなんだよね。でも、あのときはあくまでジュニアのテコ入れ。鷹木本人の中にはいずれヘビーでやってやろうっていう考えはあったと思うんだけど。
──階級の概念のないスタイルだからこそだったんですね。
小佐野 闘龍門一期生のCIMAにしたって40歳を超えても田中将斗と普通にすごい試合ができる。あとドラゲー出身レスラーは喋りもうまいでしょ。そこはドラゲーならでは。ドラゲーの選手たちのマイクがすごいなって思うのは、まず噛まない。噛んでもリカバリーできる。あとは、よく聞き取れる(笑)。これが一番大きい。普通のレスラーはガーっと怒鳴ると何を言ってるかわかんないけど。
小佐野 ストロングハーツのエル・リンダマンとかすっごいうまくて全部聞き取れる。それにその人その人の喋り方になってるから、セリフを言ってるわけじゃないんだよね。
──ただの「セリフ」に聞こえないんですね。
小佐野 何か台本を暗記して喋ってる感じではない。そこは重要だよね。変な話、絶対言わなきゃいけない要点だけで、あとは自分の言葉で喋ればいいから。
──ドラゲーは新人の頃からみんなマイクがうまいんですか?
小佐野 初めは喋らせない。だんだんキャラができてパーソナリティができてからっていう。
──そうやって優秀なレスラーが育成されていくわけですね。
小佐野 いろんな団体で活躍してるよね。戸澤陽はWWEだし、新日本にはオカダ・カズチカ、石森太二がいて。
──ウルティモ校長の育成メソッドがすごいという。
小佐野 そこは大きいとは思うよ。だってそのノウハウでみんな育ってるわけだからさ。あの人はルチャ・リブレを経験して、日本のスタイル、WCWやWWEのアメリカンスタイルでもやって。それらのいいとこ取りを教えたのが闘龍門だから。だから闘龍門ってルチャの団体だと思われたがちだけど、浅井嘉浩の中ではルチャじゃないから。自分がやってきたものがまぜこぜにしたものが闘龍門。
──ルチャはあくまでベースのひとつ。
小佐野 そうそう。ベースはルチャなのかもしれないけど、ルチャではない。ドラゲーの試合を見てるとみんなスピーディーだけどルチャじゃないからね。飛べる選手もいるけど、飛ばない選手もいるわけだから。
──ウルティモ校長が団体から去ってドラゲーに名称が変わるわけですけど。引き続き人材が育ってるのはすごいことですね。
小佐野 やっぱり初期の人たちがすごかったんだよね。ちゃんと教えられた人たちがいたから、その後の選手も鍛えられたんじゃないのかな。たとえば吉野正人は8月1日の神戸で引退するけど、今年で41歳で首が悪かったり身体はボロボロなんだけど、少なくとも体型は崩れてないもんね。ちゃんと身体を作ってる。
──プロレスラーってフォルムが変わらないことが重要ですよね。
小佐野 モッチー(望月成晃)も50過ぎてるわけでしょ? それで身体をちゃんと作ってハタチくらいの子たちと試合してるから。モッチーはいまNOAHに上がってるからNOAH用にちょっと太めにしてるけど。ちゃんと合わせてるところもプロフェッショナルですよね。
──大雑把な話かもしれませんが、四天王プロレス以降の日本のプロレスは闘龍門のスタイルが日本のプロレス界を変えてるんじゃないかと思います。
小佐野 それまでのプロレスと何が違うかといえば、スピードと試合の作りが全然違う。
──いわゆるハイスパートレスリングとは明らかにスピードや展開が違いますけど、括りとしてはハイスパートですよね。
小佐野 まぁ形としてはハイスパートなんだけど……ハイスパートの連続なんだろうね。だから、よくもまぁ動くわなっていう。いまはREDというヒールユニットが出てくると、ちょっとテイストが……技じゃないプロレスになってきてるところはあるんだけど。
──ドラゲー以前に細かいところまで練り込んでやってるスピーディーなプロレスってありましたか?
小佐野 もしかしたら初期のみちのくプロレスはそうなのかもしれないですね。
──あー、なるほど。
小佐野 みちのくもユニバーサルプロレスから派生した団体だからベースはルチャだけど、ルチャじゃなくなっていった。飛び技をつかったハイスパートってことでサスケ、カズ・ハヤシ、TAKAみちのく、ディック東郷が活躍して、他にも人材もたくさん育てている。結局、みちのくはウルティモが教えたわけじゃないけど、ウルティモはユニバーサルにいたという縁もある。あの当時のウルティモの試合はジャパニーズ・ルチャと呼ばれたけど、ルチャを日本人仕様にしたのがジャパニーズ・ルチャで、それが日本のジュニアの主流になっていったから。そのウルティモ・ドラゴンの源流はタイガーマスクなんだけどね。
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ドラゲーの思想、団体論からプロレスのフリースタイル、ロックアップに言及するインタビュー面白いです。