毎大会恒例! 笹原圭一RIZIN広報のインタビュー!!  今回はRIZIN東京ドーム大会を振り返ります!(聞き手/ジャン斉藤)


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・レスリングエリートをMMAファイターに育てる方法■宮田和幸インタビュー

・ボンサイ柔術の戦友が語るクレベル・コイケの強さ■関根シュレック秀樹


 

――
MMAにとって18年ぶりの東京ドーム大会はどうでした?

笹原 何か東京ドームはすごくそわそわする会場というか……谷川(貞治)さんも来場されていたんですけど「東京ドームってやっぱり色気があるよねぇ」と言ってて。

――
んあ~!(懐かしのサダハルンバ語)。特別感がある会場なんですね。

笹原
 その感じはすごくわかるんですよ。ボクもPRDIE時代の記憶が残っているので、それこそPRIDE.1のときに高田(延彦)さんが控え室として使っていた部屋の前を通るだけでドキドキしますから。

――
高田延彦vsヒクソン戦の緊張感がよみがえってくる……。

笹原
 それくらいPRIDE.1の記憶が強烈に残っているってことなんですけどね。 いまの会社(RIZIN)では社長(榊原信行)ぐらいしかあの緊張感を共有できないんですけど。社長も「東京ドームは何か違うんだよな……」って言ってましたから、やっぱり不思議な緊張感があるんですよ。

――
“東京ドームの格闘技イベント”を体感した関係者も減ってますよね。

笹原
  ボクは18年前どころか、25年前のPRIDE.1とやっている仕事がほとんど変わっていないので、 それが幸せなことなのか、どうなのか(笑)。RIZINオフィシャルカメラマンの保高(幸子)さんともそういう話になって。当時の保高さんは駆け出しのカメラマンだったそうですけど。 

――
ボクもプロレス格闘技を見ながら麻雀を打つ日々なので、変わりのなさに絶望しますね(笑)。

笹原
 18年間って子供が生まれて成人するまでの時間ですからね。PRIDEを知らずにRIZINを見る人もいる。ひとつの大会でも見方が当然違ってきますよね。

――
オープニングVもCOMPLEXの「BE MY BABY 」が使用されていましたけど、あれも若い世代はなんでこの曲なのか意味わからないですよね。知ってても知らなくても楽しめるんですけど。

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RIZIN東京ドームのオープニングVより

笹原
 大会が終わってもボクの頭の中には「BE MY BABY 」が流れ続けていますけど(笑)、本当はなぜあの曲を使ったのか、みたいなことまで掘り下げると、もっと楽しめるんですけどね。

――
そこらへんはDropkickの他の記事でもちょっと触れてるんですど……あのオープニングVのPRIDE振り返りは写真で構成されてますけど、会場ではUFCの協力により実際のPRIDE映像が使われた限定版だったそうです。

笹原
 じつはそうなんです。だから会場観戦組の方々はものすごく貴重な映像を見られたということなんです。

――
よくUFCから映像を借りられましたね。

笹原
 チャーリー柏木がUFCに問い合わせたら「会場で使うぶんにはいいよ」と。配信や放送なんかで流すのはNGだけどってことでした。

――
すべてNGというわけじゃないのが興味深いですね。

笹原
 まぁでも映像を借りる・貸し出すくらいの話はできる関係性があるってことです。

――
そういう発言でご飯が何杯も食べられるRIZINファンはいっぱいいます(笑)。ただ、朝倉未来選手が負けてしまったことで「格闘技人気が下がる!」と心配しているファンも多いんですよ。

笹原
 あー、そうなんですね。でもPRIDEは東京ドームの高田延彦vsヒクソンから始まったじゃないですか。未来選手の敗北はたしかにショッキングだったかもしれませんど、高田さんが負けたときの絶望感ったらなかったじゃないですか。

――
正直、終末感がありましたねぇ。

笹原
 いまでいえば「RIZINも修斗もパンクラスもDEEPもすべて終了です。明日から大会もやりません!」みたいな感じじゃないですか(笑)。

――
佐伯さんが「ジュエルスも入れてよ!」と吠える声が聞こえてきました(笑)。

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笹原
 PRIDEは敗北からスタートしたからこそ「負けからどう這い上がるのか」というテーマがイベント自体に刻印されてしまったわけです。なのでPRIDEを母とするRIZINも当然、そこからは逃れられない。未来選手もこの敗北からどうやって這い上がっていくのか。負けたら負けたでここからドラマが紡がれるわけですから。

――
RIZINの中でも、堀口選手の復活とかはまさにそのテーマですよね。

笹原
 未来選手が「引退するかも」という発言をしていたじゃないですか。まぁ正直負けた選手からそういう言葉はこれまで7万回くらい聞いているので、「そういうモードね」くらいの感じなんですよ、我々は(笑)。でも勘違いしないでほしいんですが、未来選手の言葉を軽く考えているとかじゃなくて、格闘技で受けた敗北や屈辱って、結局格闘技でしか贖えない、という思考に選手が戻ってくることをボクらが確信しているからってことなんです。

――
実際に翌日、引退発言を撤回しましたけど。それは「もうRIZINが終わってしまう……」くらい、のめり込んでるファンが多いってことでしょうね。

笹原
 熱狂的なファンがRIZINに付いていることは、つくり手として嬉しいことですね。いろんな声を見ていると、RIZINは他人の人生を狂わせるなあって思いますよ。PRIDEやDREAMのときもこの手の熱はありましたけど、あのときとは何か違うなあという印象がありますね。

――
SNSで直接ものが言えることが大きいんでしょうね。

笹原
 ああ、SNSの存在は大きいですね、たしかに。

――
ボクは毎日中日ドラゴンズの試合を見ながらテレビ画面に文句を言い続けてますけど、RIZINの場合は選手本人に「その考えはおかしい!」「ざまあみろ!」とかぶつけてるわけですからね(笑)。 

笹原
 喜怒哀楽をSNSで表現できるからこそ、こういった熱が生まれることを加速させているかもしれませんね。

――
それと自分と同じ感情を共有したいという願望も強いでしょうし。 

笹原
  今回でいえば、サトシやクレベルの勝利に「柔術最高!」と叫ぶ人がいれば、「柔術じゃなくて、サトシやクレベルが最高なんだ」と主張する人がいて。 いろんなところで争いが起こっていてみんなエネルギーがすごいですよね。「もっとほかのことにそのエネルギーを使えよ!」って言いたくなるくらい(笑)。それくらいRIZINが生み出した熱がいろんな人に伝播しているっていうことなんでしょう。天心選手の1vs3の企画もそうだし、斎藤裕選手の判定もそうだし、みんなのエネルギーが凄くて、自分では手に負えないくらいの元気玉を背負わされている感じです(笑)。

――
猪木さんが「世の中には怒りが足りない」って言ってますけど、全然足りているという(笑)。 

笹原
 大会の翌朝から「三角絞めでタップは是か非か」みたいなことで盛り上がっているんですよ。もう、こっちからしたら翌日くらいゆっくり休ませてくれって感じですよ(笑)。まぁこれも選手が大舞台で、真剣に取り組んでいるからこそなんですけどね。

――あの試合形式はどうなんだ、みたいな批判の声もあった天心選手にしても、試合後のマイクは何か熱いものがあったというか。天心選手本人が一番満足してない感がマイクを通して伝わってきて。 

笹原
 天心選手のYoutubeにもupされていますけど、いわく「試合前にメイウェザー戦のことが頭をよぎった。恐怖に囚われてしまった」と。ボクもリングサイドで見ていて、すごく変な空気感を感じていたんです。なんか不穏な感じというか。

――
そこは視聴者とのギャップは確実にあったんですね。どうしてもYouTube っぽい企画として見ちゃうでしょうし。やっぱりハンディキャップマッチってアンドレ・ザ・ジャイアントのように見た目のハンディがないと難しいのかなって。

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笹原
 そこの温度差はどうしても出ちゃいますね。リングサイドで見ているぶんには緊張感がとんでもなかったんですよ。 天心選手からすれば、リングに上がったら3人の対戦相手がいて初めてやるルールですから、いつもと勝手が違う感じが、リングインした時に伝わってきましたし。

――
全然スケールが違いますけど、ボクも初めての雀荘で打つときには多少、緊張しますからね(笑)。

笹原
 このままインタビューを打ち切りたくなるくらいスケールが違いますけど、そういうことですよね(笑)。「1vs3」で戦ったらどうなるかを想像できても、 実際にやってみたらその想像との乖離はあったでしょうし。あの天才・那須川天心でさえ15キロ近い体重差がある人と練習はすると思いますけど、ガチンコで殴り合うことなんてないでしょうし。 

――
これもまたスケールが違いますけど、麻雀で赤ドラが1枚入るだけでゲーム性が全然違いますからね。

笹原
 競技麻雀ばかりしていた人が、いきなり赤5筒・赤5索・赤5万全部入ったルールでやるみたいなもんですよ……って、こんな例え誰もわかりませんよ!(笑)。でも、ここからが那須川天心の天才たる所以なんですが、「3人倒そう」とする自分が空回りしていることに気づいて、このままだとまずいと冷静になって一度引いて、1ラウンドは無理せず倒されないようにパンチをかわすことを考えたと。

――
一度、自分を捨てたわけですね。「破壊と建設」の概念だ。 

笹原
 我々レベルだと、もう面倒くさくなって「こうなりゃリーチだ!」みたいな感じになると思うんですけど、あの局面でというか、戦っている最中に軌道修正できるのはやっぱりすごいですよ。

――
格闘技をろくに知らないウチの奥さんが1vs3を見て「これは本当に意味がわからない」と固まっていたので視聴率が心配だったんですけど。 

笹原
 それが昨年9月のRIZINより上なんですよね。斉藤さんの奥さんが興味を持って見たように、一般世間の人からすれば「知っている人が戦っている」ことが大きいんでしょうね。

――ああ、マスってそういうことですよね。一般人ってMMAやキックルールの違いもわかってなかったりしますし。 

笹原
 それは我々の努力が生き届いていないってことも当然ありますけど、一般世間というのはそういうもんなんだろうなっていうことですよね。BTSのメンバーの名前を我々が言えないことって、 BTSファンからしたら「は?ありえない!」ってことなんでしょうけど、どれだけ情報が流れてきても、ボクも斎藤さんも覚えようなんて気にならないことと同じですよね。

――BTSと言われても「GSPやJDSと違うのかな~」というオヤジギャグな切り返ししかできませんよ(笑)。地上波の放送で新規ファイターを売り込めばいいっていう考えもあるけど、一般世間は「知らない人は見ない」わけですし。そう考えると那須川天心も朝倉未来も世間にお披露目する前から地熱はありましたから。

笹原
 テレビに出せばスターになるわけではなく、世間を振り向いてくれる存在にならないとテレビに出ても跳ねないってことではありますね。試合翌朝の『めざまし8』の最初のトピックスが朝倉未来の敗戦で、 コメンテーターの橋下徹が三角絞めのことに触れて、「引退しないでほしいですね」って言っていたらしいんですね。フジテレビのRIZIN担当が仕込んだとかじゃなくて、話題になったので普通に触れていたと聞きました。

――それだけ注目されていたってことですね。

笹原 そうです。衝撃的な決着シーンだったことも大きかったと思いますし、大会後のツイッターとかも、日本中がRIZINのことを議論してんじゃないか(笑)くらい活況でしたからね。

――
決して冷めた言い方するつもりはないんですが、タップする・しないって状況によるとしか言えないんですけどね。なんならRIZIN直前の UFC では、腕十字で腕を脱臼させられたあとに三角絞めを固められて肘打ちを喰らい続けてもタップしなかった選手がいましたし(笑)。

笹原 ホントそうなんですよね。試合直後とか、うかつなことを言うと炎上しそうなくらい熱くなっていましたよね(笑)。斉藤さんがRIZIN RADIOで言ってましたけど、RIZINってホントに格闘技啓発イベントになってますよね。RIZINで何か起きるとみんなが勉強できる。

――
そこで異常な熱が生まれるのは、全肯定と全否定のぶつかり合いが起きるからでしょうね。

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・ムサエフが「あの人」に詰め寄った!?
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・朝倉未来の「タップしない」発言の受け止め方……などなど11000字総括はまだまだ続く!

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