不定期更新「ジャン斉藤のMahjong Martial Artas」――今回のテーマは魔裟斗の川尻達也批判にイライラする理由です!


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令和3年の今頃になってK-1MAX時代の川尻達也戦をディスりはじめた魔裟斗。武蔵と一緒にやっているYouTubeでの発言が、不利なルールで戦った相手へのリスペクトに欠けていると物議を醸しているが、魔裟斗の自著『青春』を読むと、K-1の誇り高き姿勢がすごく伝わってくるので魔裟斗からすれば通常運転だったりするのだ。

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この『青春』は魔裟斗引退直後の2010年3月に出版された本だが、KIDが超大物になったあとでも2004年の山本KID戦はやりたくなかったとボヤキ気味。

「何をわけのわからないことを言っちゃってんの?K-1ルールで2戦しかしてないルーキーが。俺に勝てるわけねえじゃん……」と呆れ返り、何も言葉が出てこなかった。

K-1世界トップレベルの僕と、K-1デビュー2戦目のKIDの戦いはすでに勝負がついていてつまらない試合になると、格闘技関係の記者や報道陣の人たちはこの時認識していたはずである。

K-1の頂点に君臨する男として、格の違いを主張する魔裟斗の言い分はもっともだが、結果的に試合はスイングし、高視聴率を獲得。

この高視聴率記録によって、僕が悲願としていた-1中量級が、ヘビー級、そして総合格闘技の試合をも抜かす人気にまで昇りつめるということがようやく達成されたのだった。

総合格闘技の選手(KID)と試合をしたからこそ化学反応だったわけだが、山本KID徳郁という格闘家に対する感想もとくに触れずじまい。KIDにまさかのダウンを奪われたシーンはこう振り返る。
第1ラウンド中盤に、僕が後ろに下がったタイミングでKIDの放った左フックがたまたま顔面に入り、ダウンを取られるという失態をさらしてしまった。僕としては少しもダメージは受けていなかったけれど、汚点をつけられた気がした。

ダウンは偶然であり、ダメージはない。そう言われても競技としてはダウンはダウンなので、「たまたま」で片付けられても……。なお魔裟斗がKIDのたまたまを蹴ったシーン、すなわちローブローで試合の流れが変わった件に関する記述はなし。例の川尻戦に関しては、川尻の「か」の字もなかったので、よっぽど眼中になかった模様ですよ川尻さん!(すいません、読み直したら川尻戦のことはちょっとだけ書いてありました!とくに文句は言ってなかったです)。 この『青春』には他ジャンルの人間を見下す記述があちこちにあって。たとえばシュートボクシング出身で、魔裟斗以前にK-1中・軽量級のトーナメントで優勝し、プロレスでも活躍していた村浜武洋はこんな扱い。

KIDは、この年2月に開催されたK-1 WORLD MAX日本人トーナメント1回戦で村浜武洋というプロレスラーにKO勝ちをしてから、自称「神の子」としてメディアに取り上げられ人気急上昇中だった

村浜武洋というプロレスラー!! このくだり以前に本書には村浜の名前は登場してるのだが、「プロレスラー=ピエロ」を倒しても価値はないと悪意をもってあらためて紹介しているとしか読めないのだ。そんな感じで他ジャンルの選手に遅れをとることを許されない魔裟斗の意地がはみ出す、この『青春』。一時代を築いた魔裟斗がそういったプライドを持つのは当然であり、K-1ルールでランペイジ・ジャクソンに負けたシリル・アビディに「K-1ファイターがパンチで? 情けない」と一刀両断するのは正しい。

そして魔裟斗がMMAで戦わないこと、K-1ルールで戦う理由もまったく正しい。いわゆるAサイド理論である。
「向こうはおいしいと思ってるわけですよね。こっちがビックネームなので、ビッグネームに挑んで、もし勝ったらってことだから」「俺より小さいネームになんで俺がリスクを冒していくの?」(YouTubeより)

まったく正しい魔裟斗にイライラしてくるのはなぜか。魔裟斗が2015年に現役復帰して選んだ試合はKIDとの再戦、五味隆典とのキックルールだった。わざわざ復帰して、自分にとってはBサイドのジャンル(総合格闘技)相手においしい思いをしようとしてるメイウェザー的な計算がもろ見えだったからだろう。それに魔裟斗戦で仲間を大勢引き連れて入場してきた川尻に対して「男としてダサい」云々言っているが、K-1でジャッジやルールを曲げてまで守られてきた魔裟斗に、勇気をもって敵地に乗り込んだ川尻のことをとやかく言われたくないのだ。

というわけで、あまりにも腹が立ったので、さんざん批判しましたが、階級下のゲガール・ムサシ相手にK-1ルールでKOされた過去を持つ武蔵がちゃっかり魔裟斗の論調に乗っかってる姿に大笑いしたのでプラマイゼロだ。「アビディ何しとんねん」(by武蔵)って、「何しとんねん!!」は、こっちのセリフですよ!