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3月20日、修斗・後楽園ホール。侵略者・大塚隆史を大差の判定で破り、修斗世界バンタム級王座の防衛をはたした岡田遼。試合後「
やり残したことはない」と来年で現役から引退する考えを明かした。このまま修斗でキャリアを終えるというムードが作られた中でのRIZINバンタム級JAPAN GP参戦となった。



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――
千葉大学大学院卒という学歴がすごいですよね。

岡田 たまたまです(笑)。

――
たまたまでは難しいですけど(笑)。

岡田
 まあ勉強はめちゃくちゃしましたね。 

――
母子家庭だったこともあって、進学するなら学費がそこまで高くない国立大だったとか。

岡田
 保育園の頃から「家から一番近い国立の大学に行け」ってずっと母親に言われてたんですよ。小学校に入る前から洗脳されていて。女手ひとつなので収入面でなかなか厳しいところがあってで、国立大だったら……という母親の意地だったらしいんですけど。

――その思いに岡田選手も応えたわけですね。

岡田
 それでも、入学したらお金が足らなくて奨学金を借りて、いまも一生懸命返してるところです(笑)。

――
あ、そうなんですか。「親孝行のいい話だなあ」と思ってたんですけど。現実的な話なんですね(笑)。

岡田
 そうなんですよ(笑)。

――
格闘家にならず、普通に就職する手もありましたよね。

岡田 そこが分岐点でしたねぇ。同期はみんないい会社に就職して「オマエはどうするの?」「格闘技をやりたいんだけど」「は?」みたいな(笑)。

――卒業する頃の日本にはメジャー団体がなくて、職業としては厳しい時代だったじゃないですか。

岡田
 バカでしたね。でも、人生は1回だけだし、若いときしか格闘技はできないので、普通に働くんだったら何歳でもできるし。それにどうしてもこのベルトがほしくて……この修斗のベルトは、ボクが大学生の頃に格闘技を教わった松根良太さん、そのあと扇久保(博正)さんが巻いていたもので。自分の人生を支えてくれて、そして尊敬できる人たちが巻いたベルトが格闘技の原動力だったんです。

――
そのベルトを巻きたかったと。

岡田
 これを取れないと死ねねえなあ、みたいな。自分の生きる意味というか。ミスチルの『君が好き』という歌に…

――
急にミスチル!

岡田
 「君が好き。僕が生きるうえでこれ以上の意味はなくなっていい」って歌詞があるんですよ。ホントそのままで。自分が生きるうえで修斗のべルトがあるんだったら、これ以上の意味はなくてもいい、という位置づけですね。

――
修斗の思いは深いんですね。ミスチルは好きなんですか?

岡田
 まあ、カラオケで歌うくらいで。

――扇久保選手は……

岡田
 吉田拓郎ですよね(笑)。

――
そうです!(笑)。

岡田
 吉田拓郎では『落陽』が好きですね。扇久保さんは『落陽』以前は『人生を語らず』が入場曲だったので、吉田拓郎で知ってる曲はその2曲です。

――扇久保さんが使ってる曲だけって知らないみたいもんですよ(笑)。

岡田 そうですね(笑)。

――先ほどバンタム級JAPAN GP抽選会が終わりましたが……最後の最後でその扇久保選手と同門対決が回避されましたね。

岡田 ホント危なかったですよ……。今日はそこだけが気がかりでしたね。 「誰でもいいから扇久保さんの隣に座ってくれ!!」ってずっと思ってて。

――くじを引いた結果、岡田選手は16人中15番目の選択でしたから。

岡田 これが16番だったら……。

――扇久保選手しか残ってませんでしたねぇ。

岡田 16番だった春日井(“寒天”たけし)選手は一度、扇久保さんと試合をしてるんですよね。そういうこともあって、春日井選手が15番目だったら、もうひとつ空いていた元谷(貴)選手を選んでいたと思うので。ギリギリで危なかったです。

――事前に師匠の鶴屋(浩)さんや扇久保さんと「もし当たったら全身全霊で戦う」と話はしていたそうですね。

岡田 そうなんですけど、確率的に1回戦はないだろうと思ってたんですが、こういうことってあるんだなあって。

――あたりまえですえど、同門対決はやりづらいですよね。 

岡田 同門の人と試合をやったことないんですけど、練習と試合はやっぱり全然違うので。扇久保さんはやっぱり兄貴みたいな存在なので……斬れないですよ。試合って斬り合いなんですけど。決勝戦でできるのが一番いいんですけどね。

――RIZINからはどのタイミングでオファーがあったんですか?

岡田 こないだの防衛戦(3月20日/大塚隆史戦)の前から話はあったはあったんですけど。ボクはとにかく修斗へのこだわりが強かったので、防衛戦が第一ということで話は止まっていて。

――
防衛成功後に話がまとまったんですね。試合後に現役はあと1年……というコメントを残されてことで、 RIZIN出場はないのかなと捉えたファンは多かったんです。

岡田
 トーナメントは5月から始まって大晦日に終わるので、まあちょうどいいかなと。トーナメントが終わったら、また修斗で防衛戦をして……引退試合は絶対に修斗でやりたいなって思ってるので。 RIZINに出ても修斗に戻ってこられるので、このトーナメントはすごくタイミングがよかったですね。

――
RIZINからのオファーがワンマッチだったら受けなかったんですか?

岡田 そうですねぇ……契約内容にもよると思うんですけど、これが普通の継続参戦だったら、出たかどうかはわからなかったですね。 トーナメントだったから出ることを選んだところはあります。

――修斗と提携しているONEに興味はなかったんですか?

岡田
 進学先第一志望がUFCで、それがダメなら考えましょうという感じで。結局UFCのオファーはなかったので……このまま修斗でキャリアが終わるかもなという考えはありました。そんな中、しっかり防衛戦の義務を果たせて、トーナメントのオファーがあったのでRIZINに参戦しようと。

――
岡田選手の話を聞いていると、UFCという目標と、修斗へのこだわりが判断基準になってるんですね。

岡田
 まず修斗があって、外の世界ではUFCには惹かれてるんですけど。 ONEはもちろん試合は見てるし、好きは好きなんですけど、自分がONEの舞台に立つことがまったく想像できなくて。これといった理由はないんですけども、フィーリングというか、自分がONEに出ることはないんだろうなと。

――
RIZINもトーナメントじゃなかったらピンとこなかったと。

岡田
 そうかもしれないですね。 トーナメントのほうが「よし!」という気持ちにはなりました。バンタム級で日本最強を決めるというトーナメントだと聞いたので、 修斗バンタム級チャンピオン抜きでやるのはどうなのかな、と格闘技好きとして思うので。

――
UFCからオファーがなかったことには悔しい思いもあったわけですよね。

岡田 ボクがここの位置にたどり着くのが少し遅かったですよね。たとえば、もし5年遅かったら、違った展開があったかもしれないし。アメリカントップチームに修行に行くのがもうちょっと早かったら、また違う未来があったのかなって思うんですけど。


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