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下馬評を覆して田丸匠を破り、RIZINバンタム級JAPAN GP出場権を獲得した渡部修斗のマジカルインタビュー。抽選会では朝倉海から“指名”を受け、試練の続きのRIZIN参戦を語ってくれた(聞き手/松下ミワ)


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――
RIZIN.27の田丸匠戦は激勝でした!

渡部
 ありがとうございます!

――
マジカルチョークが極まったときは感情が爆発していましたね(笑)。

渡部 ハハハハ、そうですね(笑)。自分でもあんなに感情的になるとは思わなかったんですけど、なぜか急に爆発しちゃいました。自分でも「こんなに感動するんだ!」とビックリしましたね。

――
さらに、試合後のマイクもめちゃくちゃ面白かったです! 

渡部
 本当ですか? まあ、いろいろ思うことがあったので……本音を言っただけだったんですけど。

――
「10人見たら、10人ともボクが負けると予想されていた!」と涙ながらに訴えるという(笑)。選手って試合前に勝敗予想とか見るんですね。

渡部
 自分はいろんな人の予想を見ましたね。でも、自分が勝つと予想している人は1人も見なかったです……(ションボリ)。

――
試合前にかなりイヤじゃないですか?

渡部
 うーん、ちょっとでもいいことを言っていただけていたら、試合するうえで自信になるかなと思ってたんですけど、まさかの誰もいないという……。逆に自信がなくなったというか、「ボクはそういう感じで見られているんだな……」みたいな。

――
まさに逆効果。

渡部
 だから、やっぱり悔しかったです。「実績がない」とか「強いヤツに勝ってない」とか散々言われてて。でも、自分は与えられた試合を戦ってきただけなんですよ。だから「見てろよ!」と思ってました。

――でも、試合後のコメントなんかを拝見すると、渡部選手ってかなりの戦略家なんだなという印象を持ちました。

渡部
 そうですか? まあ、相手の試合映像があったら、「こういう攻撃が通用しそうだな」とか「これは気をつけよう」とか、いつも大まかには考えますけど。

――というのも、結果的に渡部選手の想定どおり試合が進んでいたんだなというか。そこは、本当に作戦がハマったんですね。

渡部 まず、田丸選手はスタミナ切れは間違いなくあるとわかっていたので、2ラウンド目からが勝負だというのは感じていました。あとは、オーソドックス相手に対して重心の高い左の蹴りが多いので、それをキャッチしてテイクダウンをするという練習はずっとやっていましたね。

――その2つがまさにドンピシャで。1ラウンド目、田丸選手のかかと蹴りやヒジ打ちなどかなり厳しい攻撃があったと思うんですけど、そういうのも「ここを凌げば大丈夫だから」という、心の余裕があったから耐えられたということなんですか?

渡部
 正直、心の余裕まではなかったですけど、なんかムチャクチャな強さは感じなかったんですよ。ただ、「うまいな」って。かかと蹴りとかも「修斗ルールで戦ってきた選手なのに、こんなに早くRIZINルールに適応するんだ」と思いましたし。ただ、それが強さとして感じてはなかったんですよね。

――
でも、予想以上にパワーがあったと感じていたんですよね?

渡部
 力は強かったですね。あとは、1ラウンド目にスイープされてバックを取られたシーンがあったんですけど、そのときに「足が効くなあ」と。なので、2ラウンド目からはそれだけは気をつけようと思いました。それがなければイケるという手応えでしたね。

――
田丸選手の試合後のコメントで印象的だったのが「相手は思ってた以上にずる賢かった」という部分で。あれって、どういう意味だったんですかね?

渡部
 ああ、言ってましたよね。たぶん、田丸選手としては「最初は弱めに来てたくせに、最後のチョークは急に強く来たな」という感じで言ってたと思うんですけど、「最初は弱くやってた」というよりも、自分は体力を温存しながらやっていて。おもいっきりやると腕が張っちゃうんでね。だから、相手のバックに付きながら相手の消耗具合を見て、けっこう息がキレてたんで、その中でしっかりカタチを決めにいこうと思ってました。

――
確実に獲れるところを狙っていたということなんですね。

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渡部
 時間がかかっちゃったんですけどね。ただ、相手もかなり消耗していたので、「これ、極まらなくても3ラウンド目はもっと消耗しているな」と思ってました。

――
そう考えるゆとりもあった。

渡部
 そしたら「ラスト1分」と聞こえたので、このままでもいいけど、最後やっぱり極めたいなと。2ラウンドで極めちゃったほうがラクですからね。だから、ラスト1分でおもいっきり腕を回してみたら、得意なカタチでできたので。体力もぜんぜん残っていたので、そこで思いっきり力を使いました。

――
田丸選手は「ラスト1分で急にフィジカルが上がった」とも言われてました。

渡部
 バックをキープしているときはほぼ力は使ってないくて、ただ足をクラッチさせて足のコントロールでやってるだけなのでね。でも、ラスト1分で絞め上げるときは、力をグッと振り絞ったので、「フィジカルが上がった」というのはそのことだと思います。

――
そう考えると、渡部選手って自分のペースを崩さないですよね。自分のやるべきことを、しっかり頭を使いながら遂行するというか。

渡部
 そうですかね? なんか、やることが変わらないからなんじゃないですかね? でも、耐えるところは耐えて、いけるところはいって。たしかに、メリハリつけるようにはしています。

――
逆転勝利に見えたけど、それこそが渡部選手の戦略だったと。これでRIZIN初勝利ですが、やっぱりこれまでとは反響も違いました?

渡部 けっこう周りの反応はよかった……というか、通知が止まらないです(笑)。

――やっぱり(笑)。そして、そんな大一番がやっと終わったところなのに、もう次の試合が決まってしまいました。しかも、それがバンタム級グランプリ1回戦の朝倉海戦です。

渡部
 ハハハハハ……、そうなんですよ(苦笑)。「出られるなら出たい」と言ったのは自分ですけど、まだ試合が終わったばかりだし、身体も痛いし、頭も痛いのに……。

――
次戦のことを考えている場合じゃない(笑)。

渡部
 それに、いままでこんなにポンポン試合が決まるなんてことなかったんですよ。いつも、ちょっとぐらいは余韻があったのに、それがこんな速攻で決まるなんて……。
――正直言って、まだあの勝利に浸りたいですよね。

渡部
 浸りたいというよりは「休みたい!」。それが本音です。まだちょっと頭が痛いし、じつは胃腸炎にもなっちゃってるし……。

――
え? 胃腸炎ですか?

渡部
 そうなんです。計量が終わってご飯を食べたら、すぐに胃を壊しちゃって。計量が終わったあと、うどんと、うな重を食べたんですけど、そこからおかしくなっちゃって。試合のときもずっとお腹が張っている状態で、だからほとんど何も食べられなかったんですよ。

――
それは、普段のリカバリー方法だったのに?

渡部
 いや、いつもよりちょっと早くバババッと入れちゃいました。それで完全に胃を壊しちゃいましたかねえ。昨日まで64キロぐらいしかなくて、試合のときもぜんぜん体重がリカバリーできなかったし。

――
相当ツラかったんですね……。というか、そのツラい中での試合だったのに、あの激勝だったんですね!

渡部
 ……頑張りました。でも、試合が終わってからさらに悪化して。なんか、締め付けるような痛みになってきちゃいました。

――
もしかして、いまも調子がよくないんですか?

渡部
 ええっと、昨日ぐらいからなんとか回復してきましたかね。なので、もうちょっと休みたいんです。

――
だから、会見でも顔色が……。

渡部
 やっと昨日からご飯らしきものを食べられるようになれたので。やっとこれから身体を戻していこうというところだったんですよ。

――
そんな中で抽選会に参加し、いま、対戦相手が元チャンピオンの朝倉海選手に決まったという状況下にいるわけですね。

渡部
 もう、大変です(苦笑)。

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――
ハハハハ! 率直に、抽選会はいかがでした?

渡部
 いやあ、緊張しましたね。

――
しかも「1」を引くってなんか凄いです!

渡部
 逆に、自分は「なんで『1』なんだよ」と思いました。選べないぐらいのほうがよかったんですけどね。……あ、結局「1」だから選べないのか。

――あの方式だと、ある意味で最も選べないのが「1」ですね。

渡部 だったら、もっと最後のほうがよかったなあ。

――「2」を引いた朝倉海選手が真っ直ぐ自分のほうに向かってきたときは、どういう心境だったんですか?
渡部 いや、来ないと思ってたので。だから「え、来るんだ?」と。

――来ないと思ったのはなぜ?

渡部
 だって、自分とやってもメリットないだろうし、もっと盛り上がる相手というか、ファンが見たいカードのところに行くんじゃないのかなと思っていたので。だから、意外と堅実なのかなと思いましたね。

――「堅実」だから、自分が選ばれたと?

渡部
 やっぱりラクな相手に思われているのかなとは思いました。でも、RIZINだと自分は毎回そういう試合だからなあ。

――たしかに、今回の田丸選手もハードでしたし、RIZIN初戦で戦った井上直樹選手は今回のグランプリの優勝候補と言われている選手ですもんね。ただ、考え方によっては朝倉海選手とやることによって、東京ドーム決定じゃないですか。

渡部 そうなんですよ。こんなことないですよねえ。

――もの凄くオイシイというか、チャンスです!

渡部 つい数日前の自分にいまの現実を教えても、きっと信じないでしょうね。

――たしかに「田丸戦に勝ったけど、次は朝倉海戦だよ」と言っても、ポカンとなっちゃいますよね(笑)。

渡部
 そのぐらい、まったく想像がつかない展開で話が進んでいってるんで、本当にビックリしています。

――
それは、ご自身の中ではどういう心境なんですか?

渡部
 なんて言うんだろう、自分の人生でこんなにストーリーが展開していくことがあるんだなというか。1回戦で海選手と戦うために、田丸選手に勝ったのかなと錯覚するような感じですよね。

――
まるで夢物語の中を進んでいるような。

渡部
 そうそう。自分はずっとインディ団体で戦ってきてたので、それが急にこんなにポンポンといくんだな、と。

――
しかも、渡部選手のキャリアの中でプラスにこそなれ、絶対にマイナスにはならない試合ですよね。

渡部
 まあでも、せっかくなら人生変えたい、変えるような試合をしたいです。やっぱり、弥益(ドミネーター 聡志)さんとかの試合も観て、弥益さん負けちゃいましたけど、人生変わるような試合だったと思うんですよね。

――
たしかに! ドミネーター選手は朝倉未来選手との試合で、知名度も人気も一気にアップしましたもんね。
渡部 それを見て「こういうことってありえるんだな」とか思いましたし。そう思っていたら、今度は「まさかの自分? 」みたいな。

――ハハハハハハハ! やっぱり大チャンスですね。

渡部 ……これって、持ってるのかなあ?

――いや、持ってるでしょう!

渡部
 ……って、周りの人はよく言ってくれるんですけど、堂々と「持ってる」と言える結果にしたいですよね。まあ、そうは言っても1つの試合なので、全力を尽くして頑張りたいなと思います。


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