朝倉未来はよりによってジョーカーを引いてしまったのか? 知性のナイフと変幻自在のシャッフルの打撃を持つ男、元DEEPフェザー級王者・弥益ドミネーター聡志1万字インタビューです(聞き手/ジャン斉藤)
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――先ほど出席されたカード発表記者会見ですが、しゃべりがウィットに富んでいてとても面白かったです。筑波大学院卒という学歴からしても頭がいいんだろうなって。
弥益 いやいや、ハードルが上がってくのが怖いので勘弁してもらえますか(苦笑)。こういう業界だから目立っているだけで、逆にそういう世界からすれば、胸を張れるようなことでもないとは思ってますので。自分はもっと上の大学出身の方に学歴のコンプレックスを抱いていた時期もありましたし、だからいざ「学歴凄いですね」と言われると「こんなの全然ですよ……」って言いたくなりますね。
――学歴が高くても人間的にどうなんだろう……というタイプの方もいますけど、弥益選手は知的な感じが伝わってくるというか。
弥益 恐縮です(笑)。
――現在は大手食品会社に勤務されていて、就業後に格闘技の練習をされて、DEEPのチャンピオンまで登りつめたんですよね。
弥益 会社ではずっとデスクワークなので、顔が多少腫れていても困らないですね。
――弥益選手はツイッターだと毒舌キャラなので、紳士然として普段とはギャップがあると言われませんか?
弥益 ツイッターのイメージが独り歩きしてるところはありますね。DEEPの芦田(崇宏)戦と、計量失敗叩きのイメージが強すぎて毒舌で他人のことディスっている、人の道を外れてるイメージがどんどんと一人歩きして(笑)。
――DEEPの解説でも言いたい放題やってますよね(笑)。
弥益 自分を見てくださっているツイッター上の格闘技ファンの人たちも、そのキャラクターに乗ってくれているので。そのイメージが強くなってしまってるところあると思うんですけど。ただまあ、自分この業界で生きづらくなってもそんなにダメージないので(キッパリ)。
――あ、エンジンがかかってきました(笑)。
弥益 もちろん周りの人や仲間の人とは仲良くやっていきたいですけど(笑)。嫌われたりしてもそんなにダメージもないですし、他の人が言えないことは自分が言っていい立場かな、と不必要な使命感みたいなのも勝手に感じてるぐらいなんで。
――遠慮する立場にないってことですね。自分の素の部分を誇張してるというか。
弥益 そんなイメージで問題ないと思います。ちょっとたまにお酒が入ってコントロールしきれないところが……。
――変な話、ストレス解消もあったり。
弥益 まあ、それもあるかな……いや、それはないと言わせてください(笑)。
――今回の朝倉未来戦のオファーはいつ頃あったんですか?
弥益 ちょうど2週間前ぐらいですかね。正直今年はもう完全にオフだと思っていたので、マネージャーからオファーの電話があった瞬間もポテチ食べながらで「えっ、体重だけ確認しもらえますか」って(笑)。
――大晦日のRIZINはないと。
弥益 はい。当然ないと思ってました。
――大晦日は朝倉未来選手の再起戦が予定されていて、フェザー級の日本人トップファイターがリストトアップされる。前DEEP王者で芦田(崇宏)選手に2度勝っている弥益選手の実績からすれば、候補者に入っても不思議ではないですよね。
弥益 うーん、冗談まじりで「あるんじゃない?」って言われてることあったんですけど。「ないな」と自分の中では区切ってましたね、そこは。
――それはなぜですか?
弥益 やっぱり前回の防衛戦で負けてるのが一番大きいのかなと。結局ベルトがないとなると、弥益ドミネーター聡志をどうやって打ち出すかっていう話になるのかと。たしかに「元チャンピオン」とか「第9代チャンピオン」という言い方をすれば聞こえはいいのかもしれないんですけど。はたして仮にこないだで負けたとはいえ、世間の注目を浴びる朝倉選手の相手として、見ている人を納得させられるのかな……ってところがひとつ気になってはいました。なので自分ではなく、何かしら他の引っ掛かりを持ってる人が選ばれるだろうなとも思ってました。
――現DEEPチャンプの牛久(絢太郎)選手や、現在RIZIN参戦中の芦田選手が選ばれるんじゃないかと。
弥益 芦田選手はそもそもRIZINで1勝してますし、かなり昔に朝倉選手とやるかもしれないみたいな話も聞いてるんで、そっちのほうが引っかかりがあるのかなとは思っていたので。自分はたぶんないだろうなっていうのはずっと感じてましたね。
――では意外なオファーだったんですね。
弥益 こないだタイトルマッチで負けましたけど、あの試合こそ勝ったらRIZINからいいオファーがあるタイミングだったじゃないですか。負けた直後にマネージャーから「オマエは持ってないな」と言われてしまって(苦笑)。自分は持ってるタイプの人間だと思ってたんですけどね。で、今回マネージャーから電話があって「朝倉未来だよ!」みたいな。
――マネージャーも興奮している(笑)。
弥益 そのあとあらためて「オマエやっぱ持ってるなあ」と言い直してしていただいたので。“持っている”ということでお願いします(笑)。ただ今回RIZINさんが作ったカード表ですが、これ7年前の写真なんですよね。
――ガハハハハハハ!
弥益 そんなに古い写真しかない元チャンピオンってのもなかなか珍しいんですけどね(笑)。
――会見では「対戦相手の朝倉選手の復帰戦ということで、絶対に落とせない試合の相手に自分みたいな『ただ格闘技を習っているだけの会社員』を選び出すという素晴らしいリスクマネジメント能力によって、自分がここに座っています」とかなり攻めた発言が飛び出しましたね。
弥益 ハハハハハ。もう厳選に厳選を重ねてこれなら勝てるっていうところだと思うんですよね、はい。
――芦田選手、牛久選手、弥益選手の中から誰か選べと言われたら、ボクは弥益選手が一番面白くなるとは思ったんですよね。で、実際に会見の段階から凄く面白くて。
弥益 ありがとうございます。その3人だったら自分が一番面白くなりますし、自分が一番勝率が高いと思います。
――そういう自信はあると。朝倉選手の斎藤裕戦はどう見ましたか?
弥益 朝倉選手本人も言ってましたが、やっぱり待ちすぎてましたし、余裕を持ちすぎて余力を残している感じはしました。どっちが必死だったか?っていう話ですよね。その姿勢がもちろん見てる人にも響きますし、ジャッジに響きますし。結果どっちが頑張ってたのか、精一杯やってたかっていうところが見る人に響いたと思うんですよね。
――朝倉選手は前回の反省を活かすのか1ラウンドから攻めると。
弥益 ありがたいです。早く終わらしたいですからね、もたないのでスタミナが(笑)。
――あ、そういう理由(笑)。ああいう発言自体、駆け引きだと思わないですか?
弥益 駆け引きだったら自分から行くしかないので。相手の出方ではなく、自分を出せるかどうかと思ってます。
――弥益選手の打撃はシャッフルスタイルなので独特で面白いですね。
弥益 自分が格闘技を始めたジムは、わりとできたてだったので、そういう意味でも放任主義だったんです。基本の基本は教えるけど、そこから先はもう自由に勝手にスパーしててみたいな感じなんです。それで自分はナジーム・ハメドの打撃を見て「これは楽しいな、これやろう」と。途中で自分の大学の同期でもあるし、格闘技の同期でもある奴が……
――神田周一選手。
弥益 アイツがアメリカのアルファメールに海外修行に行って、ドゥエイン・ラドウィックからシャッフルのエッセンスを持ち帰ってきて、そうやって積み上げてきましたね。
――弥益選手のリングネームの「ドミネーター」はシャッフルの第一人者ドミニク・クルーズから取られてますね。あの芦田選手にも打撃で打ち勝って。
弥益 2回も勝ってるんですよ(笑)。
――そんな「じつは……」みたいな言い方(笑)。朝倉選手の打撃はどうですか?
弥益 やっぱりうまいですよね。相手の打撃をよく見てカウンターを打ちますし。なので打ち合ってこないと思いますけどね。
――「1ラウンドから攻める」とは言っても。
弥益 朝倉選手はケンカキャラですけど、そういう格闘技的なケンカはしてこないタイプだと思ってるので。やっぱり立ち回りのうまさ。どんな出方になるかは自分もわかんないです。朝倉選手自身もわからないと思います。
――元王者という実績から抜擢はされましたが、弥益選手の発言からは、ストレートにいうと“噛ませ犬”として選ばれたんじゃないかという捉え方もあったり。
弥益 それはもちろん。生け贄だなっていうのは認識してます。
――でも、そういう雰囲気があの会見では出なかったんですよね。弥益選手が自虐的にそういうボールを投げたからかもしれませんが。
弥益 こういう場は初めてだったので、記者の方のリアクションが掴みきれなくて。実際自分の言ったことがどういう風に受けとられているのかっていうのがか全然わかんなかったですよね。なんかもう自分が早口で何か喋ってて、ただ単純に滑ったんじゃねえか……っていう気もしていて(笑)。
――弥益選手のやつって内心ニヤリとするものだったりしますから(笑)。
弥益 自分の前に中原太陽選手が佐山聡さんのことを言ってたりして、タイガー・スープレックスの話をしているのに記者の方から全然反応がなかったので。いまここにいる全員で滑らされてるんだっていう気持ちがずっと強かったし、ちょっと怖かったですね(笑)。
――記者会見で服を着たままですけど、朝倉選手と向かい合った印象はどうでしたか?
弥益 じつは練習をちょっとしたことがあって。ずいぶん前ですね、3年4年前。
――朝倉選手がRIZINに出る前ですかね。
弥益 そこから朝倉選手が跳ねていくさまは見ていたので。印象としてはわりと世間が見ている姿っていうのは彼の素とまでは言わないですけど、その延長線上にある姿なのかなと思ってます。無理に作ってるわけじゃない感じはしてますね、印象としては。
――YouTubeの姿は実像に近い。だからこそ人気が出たんでしょうね。
弥益 そうですね。逆に無理してるんだったら、どっかで壊れちゃってると思います。
――フィクションに耐えきれないという。朝倉選手と練習してみた印象は?
弥益 普通にMMAのスパーを1~2本ぐらいですね。あの当時の朝倉選手はまだ東京での練習環境が整ってないぐらいの頃だと思うんですけど、それでも凄く強かったですね。そこから練習することはなくなって、RIZINに出て幻想をまといはじめたことによって、自分の中で像がボヤけていったというか。どれだけ強いんだろう。いや、これ逆に弱いんじゃないか……ってボヤケちゃって(笑)。
――YouTuber の人気を専攻していることで格闘家としての実像が見えづらくなっていると。会見では「斎藤チャンプに負けて、幻想みたいなものは崩れたかもしれないですけど、それによって単純に強い選手という姿が浮かび上がったと思います」と、称賛とも挑発とも受け止められる発言でしたね。
弥益 ハハハハハ、あれはいちおう褒めてるんですよ。褒めたつもりなんですけど、キャラ的に穿った見方をされがちなんですけど。練習したときも凄い強いなと。RIZINで斎藤チャンプという国内有数の選手とやっても正直、自分は朝倉選手の勝ちでもいいかなって思ったぐらいの内容だったんですよ。それを受けてたしかに幻想は取り払われたんですけど、結果浮き彫りになったのはもう国内トップクラスの日本人選手だったっていう印象でした。
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コメント
朝倉未来、普通に負ける可能性あるよね
斎藤選手、川名選手、大原選手、瀧澤選手、ドミネーター選手、と今年はコロナのお陰で興味深い選手が沢山出て来て嬉しい!
リアリストが勝つところをみたい
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(ID:1964895)
ファンタジーじゃなくリアルを生きてる人なんだな