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日本のプロレス界に影響を与えたウォーリー山口さんが3月10日にお亡くなりになりました。いまから4年前の2015年に収録したロングインタビューを追悼掲載します。1970年代の古き良きプロレス界――少年時代からプロレス業界に入り込み、外国人レスラーとの交流を重ねていたウォーリー山口。のちにプロレスマスコミに転身、「ピラニア山口」として『ゴング』を中心に活躍する一方で、プロレスショップの経営、学生プロレスの育成、はてには「ヤマグチ・サン」という日本人マネージャーとしてWWEのリングにも足を踏み入れた。プロレスに関することならなんでも引き受けたウォーリー。その「プロレスなんでも屋」の歴史を振り返ってもらった。【1記事から購入できる関連記事】全日本プロレスの「うっかり八兵衛」が明かす全日本秘話■木原文人✕小佐野景浩
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山口 今日は何を聞きたいの? 俺の何を知りたいんだよ?
――ウォーリー山口さんのプロレス界の歩みについてお聞きしたいな、と。
山口 それについて話し出したら30時間以上かかっちゃうぞ〜(笑)。
――ネタは尽きないですか(笑)。
山口 長くなるぞ〜。今日は手短に話すけどさ(笑)。
――じつは1年前くらいにウォーリーさんの取材をしようとしたんですけど、住所だけしか入手できなくて。たしか品川近辺を尋ね歩いたことがあるんですよ(笑)。
山口 へえー。その住所は◯◯◯◯になってる?
――あ、違いますね。
山口 違う? じゃあ西馬込?
――そうそう、西馬込です。
山口 ロング・ロング・タイム・アゴーだよ。延べ16年は住んでいたけど、西馬込から離れて10年近くは経ってる。あそこまで行ったんだ?
――近所の聞き込みもしましたね。「ウォーリー山口さんという方は住んでなかったでしょうか?」って(笑)。
山口 西馬込の事務所にはリングも置いてあったんだよ。
――ウォーリーさんが経営していたプロレスショップ『マニアックス』ですよね?
山口 『マニアックス』と言っても、そこには長い歴史があるからさ。もともとは、俺が大学時代に、かの竹内宏介(『ゴング』創始者)に命名されたユニットなんですよ。当時のマニアックスにいた仲間が清水“会長”勉、宍倉“アナクラ氏”清則、小佐野“トド”景浩、小林“ヤシクン”和朋、寺内“にぶんのいちベエ”正孝、そしてジミー“カチャーラ”鈴木~かな。
――のちのプロレスメディアを支えるメンバーが集っていたんですね。
山口 俺が店舗として『マニアックス』をやり始めたのが中原街道沿いのステーキ屋の下。『タモリ倶楽部』から取材を受けたりしたよ。んで、その時点で西馬込に引っ越すことは想定されていたというか。半地下にリングを置いて、俺の事務所兼お店もやってね。
――リングを作ったのは何かビジネスを見据えてのことなんですか?
山口 なーにも考えていない。道楽だよ、道楽。リングを作るのに400万もかかったから、道楽では済まないけど(笑)。
――そのうち学生プロレスに貸すようになったんですよね?
山口 うん。そうしたら学生プロレスやTPG(たけしプロレス軍団)の連中がやってきた。
――邪道さんや外道さんも『マニアックス』のリングで基礎を学んだんですよね。それはTPGから依頼があったんですか?
山口 ないよ、そんなもの。彼らはゴミみたいな扱いだったからね。銀河スタジオでTPGの公開オーディンションがあってさ。それを見に行ったらマサ斎藤さんがテストをやらせてるわけだよ。
――『ビートたけしのオールナイトニッポン』の番組内で行なわれた入団試験ですね。
山口 そこで高山(外道)や秋吉(邪道)たちと「おまえらトップ取りたいよなあー」「そうですね……」なんてやりとりをしてね。ウチにリングがあると知って10人くらい来たかな。スペル・デルフィンもその1人だよ。
――そこで練習することでプロレスラーの道は見えていたんですか?
山口 なーんもない。保証も未来もへったくれもないよ。TPGもそのうちどうにもなくなったでしょ。だからゴミみたいな扱いだったって言ったの。
――『マニアックス』は行き場を失ったレスラー志望者の受け皿になったんですね。
山口 あのリングがなかったらいまの邪道&外道、デルフィンは生まれていないよな。
――邪道&外道はいまや新日本とNOAHの現場を取り仕切ってますからね。ある意味でトップに上り詰めたという。
山口 よし、俺との対談を組もう!
――絶対に嫌がると思いますよ(笑)。2人の見込みはありました?
山口 秋吉はしょっぱかったねぇ。
――外道さんは?
山口 高山はボービー・イートンだったね。ミッドナイト・エクスプレス! “日本のボービー・イートン”だったよ、俺的には。バンプの取り方もナチュラルだし。
――その『マニアックス』のリングに馬場さんが現われて、学生プロレス勢を指導したという信じがたいエピソードがありますよね。
山口 あったなあー。俺と馬場さんの関係はおいおい話をするけど、こっちから「社長、来てください!」なんてお願いしていないよ。元子さんから「ちょっとアンタ、リングを作ったの? お父さんが行きたいって」ということで。天上人が下界に降りてきたわけですよ(笑)。
――ハハハハハ!当時の学プロって、プロからすればタブーじゃないですか。
山口 そうだよ。プロからすれば「ふざけるな!」という世界ですよ。
――それがどうして馬場さんが指導を?
山口 なんでだろうね? まあ、ヒマなんだよ。当時のお父さんはヒマだったんだよ(笑)。
――ヒマだから!(笑)。
山口 理由を聞いたことないけどね。「社長、なんで来たんですか?」なんてはさ。当時の全日本は景気も良くなって後楽園ホールも毎回満員。馬場さんは前座で悪役商会とやるようになって余裕があったんだろうね。馬場さん、ジャージ姿で来たもんな。元子さん、和田京平さんの3人でさ。それで最初はソファーに座って学プロの練習を見てるんだよ。
――学プロの選手もそれはそれは緊張したでしょうねぇ(笑)。
山口 そうしたらさ、しばらく練習を眺めていた馬場さんが立ち上がって、リングで指導し始めるんだよ(笑)。
――うわあ!(笑)。
山口 天下のジャイアント馬場が学プロ連中に手取り足取り教えるんだよ(笑)。
――学プロのベーシックな動きが全日本流なのは、馬場さんの指導の影響が大きいんですかね。
山口 そうかもしれないね。そこにいたのがMEN'Sテイオー。彼は全日本というか馬場さん大好きだもん。
――『マニアックス』にはTPG絡みでコーチ役だったアポロ菅原さんも来てたんですよね。
山口 わけのわからない国際プロレス流のボディスラムを教えていたよ(笑)。
――団体によって違うんですねぇ。そんな『マニアックス』の存在が90年代のプロレス多団体時代を導いたといっても過言ではないですね。
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