歴史に残る死闘となったフライ級キングオブパンクラスのタイトルマッチ、仙三vs若松佑弥――。激闘の模様は無料で公開されているコチラ(https://abema.tv/video/episode/238-11_s0_p13)をご覧になっていただきたいが、35歳仙三は若き最強のチャレンジャーをどう迎え撃ったのか? ボクシング東日本新人王に輝き、8戦無敗の戦績を残しながら悔いが残る引退、そして戸惑いのMMA挑戦。そこには「逃げた自分」と決着をつける戦いでもあったのだ。
――若松佑弥選手とのパンクラスフライ級タイトルマッチは歴史的死闘でした!
――激闘の代償として、仙三選手は右手を骨折されそうですね。
仙三 はい。試合後の控え室に戻ってから、けっこう時間が経ってから痛みが出てきて。
――どのタイミングで骨折したんですか?
仙三 いやもう試合自体の記憶が全然なくて。最初の方は覚えてるんですけど……あとで映像を見て4ラウンドにパンチで倒されたことを知って。いままで記憶が飛んだことってないんですよ。勝った瞬間も覚えてないです。マイクアピールをしてるときに「……あっ!」と気が付いて。という感じなんですね。
――今回は無敗の新進気鋭の若手がチャレンジャーでしたけど、下馬評では仙三選手が不利とされてました。チャンピオンとしてそういった前評判をどう捉えてたんですか?
仙三 まあ、いつものことだなって。毎試合自分の評価はそういう感じなので、とくに気にならなかったです。デビューしたときから、自分が勝つと思われた試合は一度もないんじゃないかなって(苦笑)。
――「チャンピオンなのに!」という忸怩たる思いはなかったと。
仙三 なかったですね。 自分はいつも挑戦者のつもりなので。
――若松選手にはどんなイメージがありましたか?
仙三 打撃に一発の強さがある強敵ですね。若松選手が上に来る前から好きな選手だったんですよ。
――注目したんですね。
仙三 ひとりだけズバ抜けてるなと思ってたんです。いずれは上がってくるんだろうなと思ってたんですけど、一番やりたくない相手だなと。
――KOを量産する若松選手の打撃を脅威ですよねぇ。
仙三 正直一発ももらわないなんて無理なので、一発二発は確実にもらう覚悟はしてたんです。たとえ、もらっても意識飛ばなければ勝てると思ってたんですけども、意識が飛んじゃったんで(苦笑)。
――やはり強烈だった。
仙三 でも、全然戦えると思ってましたね。 MMAでもハンパじゃない選手たちと戦ってきたし、ボクシングの新人王やB級トーナメントで優勝したときも、とんでもない強打の選手とやってきてたので。心が折れることはないなって。
――仙三選手は1ラウンドから距離を取って、ときおり飛び込んでパンチを当てていきましたね。
仙三 1ラウンドのことは覚えてるんですけど、何発か打ってスカされたんで「読まれてるな」「研究されてるな」って。そこは予測してなかったんです。「パンチは当たる」と思って試合に臨んだので、スカされたことで軌道を変えることにして。
――若松選手の動きに対応したんですね。
仙三 それはボクシング時代の技術ではなく、MMAをやり始めてから、相手の状態によっていろんな軌道で打てるようになりましたね。
――4ラウンドまでは仙三選手がペースを握ってましたよね。
仙三 あとで映像を振り返ったんですが、4ラウンドも倒されるまでは自分がラウンドを取ってたと思うんですよ。もう記憶がないから何を考えていたかはわからないですけど、「行ける」って油断したというか、そこはチャンスを逃さなかった若松選手も凄かったんですけども……これはいま振り返ってのことなんですけど、若松選手はボディがけっこう効いていて、スタミナが切れかけていたと思うんですね。
――仙三選手のボディパンチとヒザがかなり当たってました。
仙三 それで「もうパンチが死んだはずだ」と思って、自分が距離を取っちゃったと思うんですよ。そのときに若松選手は一発で仕留めるパンチが打てるまで回復したんですね。あそこで自分が距離を取らずにしつこくインファイトを仕掛けていたら、あの一発は生まれなかったんじゃないかな……って。
――ポイントでは完全に上回っていたぶん、仙三選手に余裕ができたことが、あわや逆転劇を……。
仙三 若松選手のパンチは殺したし、気力やスタミナも残っていないに違いない。距離を保ってジャブでいなし続ければ、負けることはないな……と、あのときの自分は思ったのかもしれないですね。それで回復した若松選手のパンチを食らっちゃって、試合の記憶が……。
――正直あのままKOされてもおかしくなかったですよね。
仙三 映像を見てビックリしました。追撃もけっこう食らってましたし。
――よくあの体勢から立ち上がりましたね。ちょっとでも遅れたり、動きが止まっていたら……。
仙三 そこは気持ちで立ち上がりましたよね。「死んでも勝つ!」と思ってましたから。
――死んでも立ち上がるって矛盾にもほどがありますけど(笑)。
仙三 そうですね(笑)。どんな状態でもケージを利用しても立ち上がることは練習してたんですけど、記憶がなくても自然に立ち上がってたんでしょうね。
――大ピンチを乗り越えた仙三選手は、最終5ラウンドでラッシュを仕掛けてTKO勝利をものにします。
仙三 そこも記憶はないんです。映像を見て「こうやって勝ったんだ!?」って。若松選手も意識は朦朧としてましたね。
――最後まで倒れなかった若松選手の意地が見えましたし、2人とも戦闘本能だけで戦っていたというか。
仙三 周りからこうやって褒められるのも、若松選手のおかげですね。戦うことができて本当に感謝しています。
なぜボクシングを引退したのか? 「なんで総合なんかやっただろう?」という戸惑い……仙三インタビューはまだまだ続く!
コメント
コメントを書く