アメリカのインディプロレスの“現在”を伝える連載! アメリカインディープロレス専門通販「フリーバーズ」(https://store.shopping.yahoo.co.jp/freebirds)を営む中山貴博氏が知られざるエピソードを紹介していきます! 今回のテーマはアメリカのデスマッチキングはモノホンの銀行強盗だった!




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2010年12月、クリスマスを3日前に控えた22日の昼下がり、アメリカ・ニュージャージー州コリングスウッドのPNC銀行に、これから強盗をしようというのに、なんの変装もしていない一人の男が入ってきた。

街中がイルミネーションに彩られ、キリスト教ならクリスマス、ユダヤ教ならハヌカ、アフリカ系アメリカ人ならクワンザと、それぞれの祝日に合わせて人々が休暇をとり、家族と共に過ごすホリデーシーズン真っ只中だ。彼には家もなく、金もなく、そのうえ「オレのことなんて誰も知りやしない」と思い込んでいるフシがあり、そこに男の誤算があった。

その日の夕方、楽しい時間を過ごしていたはずの一人の女性が、ニュース番組を見て釘づけになった。そこには、銀行の防犯カメラに、強盗を犯し、銀行から出て行く自分の彼氏「ニック・ゲイジ」の顔がはっきりと写っていたからだ。

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ニック・ゲイジとは、大日本プロレスに、ザンディグ率いるCZW軍の一員として来日経験もあるデスマッチレスラーだ。

ゲイジは、10年ちかく強い鎮痛剤を乱用してきたせいで、ドラッグ中毒になっていた。
この半年前に、CZWのデスマッチトーナメント大会「TOD 9」で、彼と対戦したアブドーラ小林は当時を振り返り「ニック・ゲイジの目が怖くてねぇ。まるで人を殺すかのような目つきだったね(笑)」と以前、彼の経営していたお店「海坊主」で語ってくれた。

この日もクスリをキメて、ハイになっていたゲイジ。
銀行に入り、備え付けの入金表に金額を殴り書きし、「金を出せ!出さなきゃ撃つぞ!」と叫びながら窓口の女性銀行員に近づいた。
ゲイジが指示した金額はとても大金とはいえない約3000ドル(当時のレートで換算すると約25万円)。店員はその金額分の札束を差し出すと「サンキュー。大丈夫だ」と受け取って銀行から出て行った。後の事は何も考えていない行き当たりばったりの犯行だった。

ゲイジはガールフレンドを誘い、アトランティックシティのカジノへ行った。彼女は写真が公開されるまで、彼が銀行強盗をしてきたことなど全く知らなかった。
ニュースで映像を見たプロレスファンたちのあいだで「あのニック・ゲイジが銀行強盗をしでかした!」と衝撃の事実が知り渡るまでに、そう時間はかからなかった。



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