80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマは「みんなが愛した謎の美人マネージャー、エリザベス」です!
Dropkick「斎藤文彦INTERVIEWS」バックナンバー
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――今回のテーマは“マッチョマン”ランディ・サベージの女性マネージャーとして人気の高かったエリザベスです。
フミ エリザベスはWWEにおける女性キャラクラーの草分けではあるんですが、プロレスラーではありませんでした。のちのディーバと呼ばれる女性キャラクターの先駆けとは言えますが、WWEのリング上でバンプを取ったことはないんです。しかも驚くことにWWEでは、ほとんどしゃべったことがないんですね。
――あ! そういえば、エリザベスの声を聞いた記憶がない……。
フミ 1980年代はハルク・ホーガンやロディ・パイパーらが活躍し始めて、WWEのプロレスが大河ドラマ化していった時代だったんですが、その流れの中でもセリフは一切なし。エリザベスはパントマイムですべてを表現していたんです。
――凄い表現力!
フミ セリフをしゃべらずあのWWEでトップポジションにいたという凄い人なんです。マッチョマンに「さあ、行け!」「そこにいろ!」とまくしたてられると、手を口元に当てながら困ったような顔をしたり、うつむき加減に恥じらった顔をする。ハウスショーでは最上階のお客さんにさえ、セリフがなくても伝わる動きをしていたんですね。
――大会場でもしっかりと存在感があったんですね。
フミ 困ったような足取りでリングの周りを行ったり来たりしたり、場外乱闘に巻き込まれそうになると鉄柱の裏に身体を潜めたり……どんなに遠くから見てもエリザベスが何をやっているのかがわかる。髪型は80年代に流行った外巻きなので、動くたびにゆらゆらと揺れて、エリザベスのか弱さが見えるんです。
――じつは凄いことをやってたんですねぇ。
フミ エリザベスはマネージャーといえば、たしかにマネージャーなんですけど。ルー・アルバーノやミスター・フジといった従来の悪党マネージャーとは違ったキャラクター。それまでのマネージャーといえば、おしゃべりがあまりうまくないレスラーのサポートをするのが仕事のひとつなんですね。
――レスラーに代わって煽るわけですね。
フミ エリザベスはおしゃべりをしたことは一度もない。いつもサベージのひとりしゃべりなんです。
――サベージにサポートはいらないんですよね(笑)。
フミ そんなエリザベスは一度だけしゃべったことがあるんですが……そのシーンはエリザベスとサベージの恋愛ストーリーのクライマックスになるので、のちほど説明しますね。この2人がWWEのリングで結婚式を挙げたのは1991年なんですが、マッチョマンのWWEデビューは1985年。その2年前にサベージとエリザベスは夫婦になっているんです。
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