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一寸先はハプニング人生! アントニオ猪木!!■小佐野景浩の「プロレス歴史発見」

2017/07/20 12:26 投稿

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  • 小佐野景浩
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プロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回のテーマは「アントニオ猪木」です! イラストレーター・アカツキ@buchosenさんによる昭和プロレスあるある4コマ漫画「味のプロレス」出張版付き!





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――今回はIGF整理問題で渦中の猪木さんについてうかがいます。

小佐野 この連載で何度も触れていますが、私は高校時代に『炎のファイター』という新日本プロレスのファンクラブをやってましたので、猪木さんの大ファンだったんですよ。

――小佐野さんといえば「全日本プロレス!」というイメージが強いですけど(笑)。

小佐野 新日本だけじゃなくて、もちろん全日本や国際プロレスも見ていたけど、やっぱり子供のプロレスファンは猪木さんのことが大好きだったんですよ。小学生卒業式の日に、猪木vsストロング小林のテレビ放映があったとか、そういうこともいまだにしっかり覚えてますから(笑)。

――それくらい印象深いんですね。

小佐野 あの頃ってプロレスラーの自伝はあまりなかったけど、『燃えよ闘魂 アントニオ・猪木自伝』が東京スポーツから出ていて。最初の表紙は猪木さんの顔のイラスト、増刷したらタイガー・ジェット・シンに卍固めをかけている試合写真、増補改訂版はビル・ロビンソンに逆エビ固めをかけている写真。私は全部買いましたよ(笑)。

――猪木ファン!(笑)。

小佐野 私が通っていた小学校は、猪木さんと同じ鶴見の東台小学校。転校しなければ、中学校も猪木さんと同じ寺尾中学に進んでいた。そういう猪木さんの経歴も自伝を読んで知ってるんです。

――ファンクラブ時代はレスラー取材もしていたそうですけど、猪木さんをインタビューしたことはあったんですか?

小佐野 ファンクラブ時代に猪木さんと喋ったことは一度もなかったかな。新間さんにかわいがってもらっていたから、レセプションとかには行けたんですよ。でも、そこで猪木さんにサインや記念撮影をお願いできなかったです。ほかのレスラーはともかく、猪木さんには近寄れなかった。恐れ多くて声をかけちゃいけんじゃないかなって。小・中学生の会員は無邪気に「猪木さん、お願いします」とか平気で頼んでるから羨ましかったですよ(笑)。

――プロレスファンとして馬場さんのことはどう見てたんですか?

小佐野 大人のプロレスファンは馬場さんが好きだったと思う。外国人より身体の大きな日本人が大暴れする。戦争を経験した世代からすれば痛快なことでしょうし、高度成長期の頃だから、世界に羽ばたく日本を馬場さんに重ねたと思うんですよね。

――力道山だけではなく、馬場さんも戦後復興の象徴だったんですね。

小佐野 でも、子供からすると、そんなことは関係ないし、ジャイアント馬場はかけ離れた存在でしたね。猪木さんのほうが若いし、カッコよく見えるでしょ。それにちょっと暴走するところがある。

――アンチヒーローとしての輝きですね。

小佐野 馬場さんは優等生で反則はしない。でも、猪木さんは感情をむき出しにして、ナックルパートで相手のことを殴る。子供からすれば刺激的。あとマネしたくなる技を持っていますよね。「卍固めはどうやるんだろう」とかね。

――コブラツイストからの卍固めへの発展はマネしたくなりますよね(笑)。

小佐野 馬場さんの技ってマネのしようがないんですよ。チョップなんてなんの工夫もないし、16文キックに足が大きいから成立するんであって。ボクくらいの年代はやっぱりアントニオ猪木なんです。

――そんな小佐野さんが猪木さんの一番好きな試合はどれですか?

小佐野 やっぱり1回目の猪木vsドリー・ファンク・ジュニアの60分フルタイムドローなんですけど、その試合は会場でもテレビでも見ていないんですよ。なぜかというとあの試合は昭和44年12月3日にやってるんですが、大晦日に録画放送してるから。NET(現テレビ朝日)がNHK紅白歌合戦にぶつけたんですよ。ウチの家族は当然紅白を見るから、猪木vsドリーは見られなかった。

――当時はビデオもなかったですし、大晦日は紅白一強の時代ですもんねぇ。

小佐野 日本テレビの日プロ中継は馬場さんがメイン、NETの日プロ中継は猪木さんがエースだったでしょ。ドリー戦があったのはNETの放映が始まった年だったと思うんだけど、12月の頭にやった猪木vsドリーをわざわざ大晦日に放映したんですよね。

――その頃から猪木さんと大晦日の因縁はあったということですね。

小佐野 翌45年8月の福岡でやった猪木vsドリーはテレビで見ました。新日本になってからは猪木vs小林、猪木vs大木金太郎の実力日本一決定戦が始まって、そのあとはルー・テーズ、カール・ゴッチ、ビル・ロビンソンとのプロレスルネッサンスシリーズがあって、異種格闘技戦シリーズが始まるんだけど。異種格闘技戦はあまり好きじゃなかった。だってプロレスとしては面白くないだもん。私はプロレスラーのアントニオ猪木が大好きだったから。

――日プロでのドリー戦や、実力日本一決定戦で日本人対決をやりあう猪木さんが好きだった。

小佐野 国際プロレスのエースだった小林さんとの試合なんて、力道山vs木村政彦以来の超大物日本人対決でしたからね。国際も見てたし、猪木一辺倒のプロレスファンじゃなかったから「どういう試合になるのかな」っていう興味が凄くあったんです。大木さんとの試合になると、2人の日プロ入門当時からのストーリーを知っていますから。昔は馬場さんを含めて三羽烏と呼ばれた2人が喧嘩腰でやりあい、猪木さんが初めてリングで涙を見せてね。

――猪木さんの“キラー”と呼ばれる部分はどう見えてたんですか?

小佐野 全日本は豪華外国人レスラーがたくさん来るんだけど、不透明決着が多かったんですよ。まあ、出落ちみたいなもんですよね(笑)。

――それもまた昭和プロレスというか(笑)。

小佐野 全日本にも試合内容を期待してるんだけど、「……やっぱりな」っていう展開が多い。たとえば全日本で馬場さんと小林さんがやっても完全決着はつかなかったんじゃないかって思うし、ファンからすれば「まあ、そうだよね」って変に納得してしまう。でも、新日本の場合は違うんですよ。新日本の場合は「こうなるだろうな」って考える裏を突いてくる。全日本と比べて新日本はハミ出してくるし、「こんなことをしちゃっていいの?」ということを猪木さんは平気でやっちゃうんですよ。

――その頃からファンの一歩先を行くプロレスだったんですね。

小佐野 地上波のゴールデンタイム中継でアナウンサーが「放送時間いっぱいです、さようなら!」って猪木さんの試合が終わらないまま番組が終わってしまう。コマーシャルがいくつか流れて、再び試合会場が映って提供クレジットが映される中、「ダーッ!」と雄叫びを上げている猪木さんの姿がチラッと見える。視聴者には何が起きてるのかはわからない。絶対にテレビの尺に収めないアントニオ猪木がいたはずだし、会場で見たくなりますよね。




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