Omasuki Fightの北米MMA抄訳コラム――今回のテーマは……「UFC離脱組、それぞれの決断」!! アンソニー・バーチャック 、リック・ストーリー、マイケル・マクドナルドの3選手がUFCを離れたときの心境に迫ります!
●アンソニー・バーチャックの場合
いよいよ今週末に迫ったRIZIN 2017 in YOKOHAMA – SAKURA - 、メインイベントで川尻達也を相手にプロモーショナル・デビューを飾るアンソニー・バーチャック(30)の元には、UFCから契約更新のオファーが来ることはなかった。UFCとの4試合契約の最終戦にあたるUFC Fight Night 90(2016年7月)のディレノ・ロペス戦で判定勝ちを収めたにもかかわらず、である。
「当時は4試合契約なら、2試合か3試合が済んだところで契約更新の話が来たものだった。それが来なかった」
「ショーン・シェルビー(UFCマッチメーカー)は、いい試合だった、2017年に再契約したい、と言ってくれていたんだ。だからそこからは、欠場者が出るたびにシェルビーにメールして、出場をアピールした。感謝祭のお休みも返上して、回答を待ちながら練習をした。シェルビーは、“かけあってみるから数日待ってくれ”、とは言ってくれるんだ」
「ところが数日たって、“どうかな、練習や減量をもっと本格的にやるべきかな”、と問い合わせると、“いや、今回は難しい”、となるんだ。こうしてショートノーティス・ファイトを何度も空振りした。僕はもうすぐ31歳になる。子どもも4人いる。UFCが再契約してくれるのを、じっと待っているだけというわけにはいかないんだよ」
そこでバーチャックは、他団体の試合に出てみることにした。しかしその練習中に、“心の風邪”を患ってしまったことに気がついたのだという。
「ある団体で試合をすることになって、合宿に入ったんだ。ところがどうも気持ちが乗らない。どうしても“UFCじゃないもんなあ”と思ってしまうんだ。試合は試合だし、しっかり準備をしないとケガをしてしまう可能性もあるというのに、気持ちに全然火がつかない。ひどいうつ状態だった」
「あんなふうに長い間補欠として放置されていると、自尊心が傷つけられていくものなんだ」と語るバーチャックは、UFCとの関係が宙ぶらりんであったことが強いストレスになっていたことに気がつく。そしてバーチャックは、自分はどんな戦いをしたいのか、これからどうしていきたいのか、原点を見つめ直した。
「選手のキャリアにはいいときもあれば悪いときもある。野球やフットボールでは、選手は年間契約をしてもらえるから、山あり谷ありがあっても直ちに解雇されるわけではない。でもUFCでは、最初の2試合で谷があったら解雇されてしまう。だから誰もが安全な試合をするようになる。僕のUFC以前の試合を見てほしい。大砲で火の玉を撃ちまくるような試合をしている。時速1,000マイルで疾走するような試合だ。でもUFCではムチャはしなかった。安全な試合をしたんだ。それが裏目に出た」
「僕はファイターとして自分本来の姿に戻りたい。ブルファイトでずっと前進し、攻撃をやめない。観客が総立ちになるような試合をしたいんだ」
「僕は子どもの頃から、世界を飛び回るような仕事を夢見ていた。すでにブラジルとカナダでは戦った。これからは日本へも行きたいし、ロシアにも、ヨーロッパにも行きたい。ファイターにはそういうチャンスがあるんだから、こういう立場をフル活用していきたい。これからはやりたいことをやって、行きたいところへ行く。海外の有名選手との戦いも経験しておきたいし、さいたまスーパーアリーナのような聖地も踏みしめておきたい。若い頃の夢を実現させていきたいんだ」
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