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「FMWアイドル女子レスラー」の今はキリスト教伝道師……里美和ロングインタビュー

2017/02/03 13:14 投稿

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FMW旗揚げ戦でプロレスデビュー。アイドルレスラーとして活躍した里美和さんは現在キリスト教伝道師として活動をしている。プロレスラーを引退したのも神に使えるためだったという里さん。13000字インタビューで里さんの身に起きた奇跡に迫ります! イラストレーター・アカツキさんによる昭和プロレスあるある4コマ漫画「味のプロレス」出張版付きでお届けします!(聞き手/小野 仁)



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――まずはFMW入りの経緯から振り返っていただきましょう。

 ジャッキー佐藤さん(元ビューティ・ペア)が五反田のトレーニングジムで開いていた教室に通っていて、ジャッキーさんから「大仁田厚さんという人が新団体を旗揚げするのでやってみないか?」と声がかかり、それでオーディションなしでOKっていうことになったんです。

――その新団体がFMWだったんですね。

 馬込にあった事務所の地下の道場で、モンキーマジック・ワキタさん(スペル・デルフィン)や秋吉さん(昭二=邪道)、高山さん(圭司=外道)……元TPG(たけしプロレス軍団)の方々が練習をされていて、私もそこで稽古をつけてもらうようになって。

――いまや皆さんプロレス界の重鎮ですね。

 美術学校に通っていたツッチー(シャーク土屋)も帰りにのぞきに来たりとか。オーディション受けてたら、私は絶対に落ちてたなって思うぐらいの人数が集まって、テストメニューも過酷でしたね。身長・体重も規定なし、男女も問わない、総合格闘技団体としてプロレスラー志望に限らず格闘家も求めるってことだったので柔道や空手、テコンドーの心得のある人たちが集まって。

――当時はプロレス団体の数がまだ少なかったですものね。旗揚げ戦(1989年10月6日、愛知・露橋スポーツセンター)で里さんたち女子部の1期生3選手(土屋恵理子=シャーク、松田久美子=ツッパリ・マック)がデビューしましたが、当初は酷評を受けましたよね。「あれはプロレスじゃなくて踊りだ」とか。

 もう、もちろんでございます(苦笑)。まだ技も何もできていないうちに名古屋でデビューするってことになって。1人じゃなくて3人一緒だったことはちょっと心強かったですけど。振り返ってみても、よく試合に出させてもらったなって思うぐらい。でも、練習は凄いしてましたよ、ホントに。

――デビュー前に過労でドクターストップがかかったほどだったそうですね。

 急性肝炎になっちゃって。と言っても、A型とかB型とかC型ではなく、ちゃんと証明書もあるんですけれど毎日9時間の練習をしていたので。

――毎日9時間の練習ですか!

 五反田のジャッキーさんのところ、馬込の道場、それから浅草のアニマル浜口さんのジムにも通って、3時間ずつぐらいやって。それでアルバイトもして……。

――それは倒れないほうがおかしいですね!?

 そうですねぇ。深夜にデニーズで働いてたんですけれども。その生活を何ヵ月間か続けていたら、黄疸が出て……。本来なら入院だって言われたんですけど、通院で済ませてもらって点滴を打ちながら練習を続けました。90分間の点滴だったんですけど、早く道場に行きたい一心で、その時間も惜しくって。早く液剤が落ちるようにして終わりました。

――もうダッシュで練習に向かうような?

 ダッシュしたいんですけど、点滴を早めて打つと、起き上がった直後は平衡感覚が乱れてフラフラする感じで。

――プロレスをやってる場合じゃなかったんですね。

 それ以上のことにならなくて、急性のままで終わってよかったですけど。

――デニーズのアルバイトはデビューしてからも続けていましたよね。当時、テレビのニュース番組だったかで里さんの日常生活が「新興プロレス団体の若手女子レスラーに密着!」のように取り上げられて、オフにウエートレスとして働いている姿を見ましたよ。

 そうですそうです! ありましたねぇ。最初のうちはファイトマネーだけでは、どうしても生活できなかったので。でも、「狭いながらも楽しい我が家」みたいな感じで、あの頃は本当に家族感があって。大仁田さんが自らカレーを作って、みんなで食べたりとか。みんなで小さなバンに乗って移動して、大仁田さんより先に寝ると鼻にピーナッツ詰められたりして(笑)。

――お金はなくても楽しかったんですね。

 地方回りで田舎の山奥まで行っておじいちゃん、おばあちゃんの前で試合をやっている状況から、どんどんどんどん団体が大きくなっていって。川崎球場や横浜スタジアムへ進出したんですからねぇ。

――大仁田さんの得意ネタに、FMW旗揚げシリーズの飛騨古川大会(89年12月3日)がありますよね。話すたびにエピソードが大げさになって、観客の数が「5人だった」「3人だった」と減っていくという(笑)。

 アハハハハハ(苦笑)。いや、でも本当に、ほかの団体ではやらなかったような、洋上マッチ(90年7月22日、宮崎県日南市油津港湾の海面にリングを設置した)とか。あんなのもよくできたなって。どう作ったのか、いまでも不思議なんですけど。


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里美和ブログからhttp://blog.goo.ne.jp/miwatti88/e/99ce77d31a4c19841da1109518e86b00



――洋上マッチのときは、里さんが海に落ちていく姿が専門誌に大きく載りましたよね。

 あ~。「ひぃ~、ドボ~ン!」みたいな(笑)。あとはノーリングマッチ(90年9月20日)とか。奈良県の橿原市で、台風のせいでリングトラックが間に合わなくて中止になりかけたんですけど、雨の中お客さんたちが集まってくれたので、体育館にあったマットを敷いて、その上で試合したんですよ。あのときは、お客さんたちの「どうしてもやってくれ」って要望も強くって、会場の外で「大仁田! 大仁田!!」ってコールが上がってるのを聞いたら、大仁田さんが「やるぞ!」って。

――本来は大会中止の流れだったんですね。

 「ええっ!? リングもないのにどうやってやるんですか???」みたいな。いまではリングを使わない興行もあるみたいですけど、それもFMWが元祖になりますよね。

――ああ、そうですよね。大仁田さんを先頭にFMWが作った前例がヒントになって、いろいろな形で現在まで引き継がれていますね。

 懐かしいです……。何も考えていないときでした。ただ楽しんでたっていう。

――FMW女子1期生の中で、里さんに男性ファンの人気が集中していましたよね。……と言われて、「はい、そうでした!」とは、なかなか言いづらいでしょうけど(笑)。

 ハハハ! 同期はみんなボーイッシュなタイプでしたからね。

――土屋選手、クラッシャー前泊選手を始め……。

 マックも森松(由紀=ドレイク森松)も。みんなボーイッシュだったので。

――里さん一人だけアイドル的存在でしたよね。

 最初は……(笑)。

――まだ技術が身についていないと思っているのに人気が先行する状態で、チャンスもわりと多かったじゃないですか。ご本人としてはいかがだったのでしょう?

 う~ん、たしかに同期と比べてチャンスは与えられてましたよね。工藤さん(めぐみ)が私たちの側(女子正規軍)に来るまでは……。

――いえ、その後も伝説の汐留大会(90年8月4日。大仁田とターザン後藤が初の電流爆破デスマッチで激突)で、マグニフィセント・ミミさんの全欧選手権に挑戦したりとか。

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試合動画 https://youtu.be/0XdHD7DefiM?t=8m29s

 思い出したくない(苦笑)。3日前だったか、かなり急に言われて。誰かの代理だったんですよ、あれって。「実力ないのにこんなの赤っ恥かくだけじゃん」って。まだまだベルトなんて、とてもとても。普通の試合(ノンタイトル戦)でいいのに……逃げたい隠れたいって気持ちでしたね。

――では、人気が出てしまって声援が集まることも、重荷に感じていましたか?

 いや、それは嬉しかったですよ。でも、疑問でしたけど。「こんな弱いのに、なんで?」って(笑)。きっと弱いから応援してくれるんだなって。

――いや、弱いだけでは支持されませんよ。やられながらも懸命に立ち向う姿勢が伝わってきましたからね。

 あ、なんか「おしん」とか言われてましたね。

――それともちろん、ルックス的な要因もありましたけど。

 いや、まぁ、周りがボーイッシュだったから。

――またそれを言いますか(笑)。

 いやいやいや(笑)。たしかに、ベビーフェイス(女子正規軍)のときはファンクラブが3つぐらいあったんですよ~。

――個人のファンクラブが3つあったって、凄いことですよ!

 のちに猛毒隊に入ったら、一気になくなりましたけど(笑)。どれも公認のファンクラブで、関東とか関西とか地域で分かれてたみたいな。

――相当な人気ぶりだった証明ですね。ところで、現役時代の最高の思い出は?

 1度だけ試合を観に来た母親の前でベルトを獲れたことですね(91年10月14日、福岡・博多スターレーンでコンバット豊田からWWA世界女子王座を奪取)。しかも、そのとき胸骨を折っていたんですよ。本当に泣きながら闘うみたいな。対戦相手の豊田さんも「こんなケガしてるヤツとタイトルマッチやらせるなよ! チャレンジャーを代えたほうがいい」って言ってたんですけど……。だって、そこに豊田さんのドロップキックなんてモロに入ったら、複雑骨折になってしまうぐらいの破壊力ですよ。実際にドロップキックをやられたときに手で胸をカバーしたんですよ。そうしたら、指が全部、逆に曲がっちゃうみたいな。

――うわあ、里さんが胸骨を折っていると承知の上で、そこまで強烈なドロップキックを豊田さんは打ってきたんですか……。

 はい。でも、最後は小技で丸め込めたんですよ。そのベルトを獲った試合のときに、お母さんが最前列にいて。私がプロレスラーになりたいと思ったのは、お母さんの影響なんですよ。お母さんは柔道や空手、合気道をやってた人で。その血を引いて、私も幼い頃から柔道を習って。お父さんは優しかったんですけど、お母さんは私がいじめられて泣いて帰ってこようものなら、「やり返してこい! 相手の骨の1本も折って帰ってこい!」みたいな(笑)。

――強いお母さんだったんですね。

 その試合のときも、セコンドじゃないですけど、「やり返さんかい!!」という声が聞こえてくるわけですよ。このままリングに上がってくるんじゃないかって思ったぐらいで(笑)。

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――
WWA王者時代の試合では、ボクサーのクリス・クルーズ・クリストファーを挑戦者に迎えた初防衛戦(同年12月9日、NKホール)が語り草になっています。

 パンチを食らいすぎて脳が揺れちゃって、その試合のことをあんまり憶えてないんですよね。ボクサーのパンチを甘く見ていました。相手はパフパフを付けてたじゃないですか。

――パフパフ!?  ……ああ、グローブのことですね?(笑)。

 はい。だって、私なんて、天田麗文さんとかに素手の拳で何度も殴られてますから(苦笑)。それに比べたら、あんなのでパフパフパフパフ叩かれたって大丈夫……と思ってたんですよ、タイトルマッチ当日まで。

――パフパフを甘く見てたんですね。

 相手は挑戦者決定戦でツッチーに勝ってますけど、「ツッチーは攻めのタイプだから意外と打たれ弱いのかな? でも、私は受けのタイプだから打たれ強いぞ! 天田さんに素手で殴られてんだぞ! パフパフ付いてたらクッションじゃん」みたいな。いやぁ、ナメてましたねぇ。



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