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<全文公開中>4100億円が動いた! UFC売却の端緒は『ハスラー2』にあった!?■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク

2016/10/06 08:00 投稿

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多くのMMAファイターをマネジメントするシュウ・ヒラタが北米MMAシーンを縦横無尽に語りまくるDropkickニコ生配信コーナー。深くてタメになったトークを活字でもお届けします!(今回掲載されているものは9月に配信された一部を書き起こしたものです)。全文公開でお届けるテーマは「UFC新オーナーの恐るべき実力」です!


今月の配信は10月7日21時から! 前半は非会員の方でも聞けますよ〜。









――シュウさん! まずUFCのオーナーチェンジの話から聞かせてください。

シュウ 前UFCオーナーのフランクとロレンゾのフェティータ兄弟は日本円にして4100億円でUFCを売却しましたよね。

――4100億円って額が凄すぎて何が起きてるのか想像がつかないんですよ(笑)。

シュウ いままでのMMAからすれば、ありえない額で買収されたわけじゃないですか。その背景にはいろいろあるんですけども。UFC新オーナーとなったアリエル・エマニュエル率いるWME-IMGはメディアの世界ではとてつもなく大きな会社なんですよ。

――日本でいうと、大手広告代理店の電通と、大手芸能プロダクションのアミューズを足して10でかけたような会社みたいですね……。

シュウ WME-IMGはトップアスリート、トップのエンターテイナーをマネジメントしているエージェントなんです。ハリウッドスターやプロスポーツ選手、日本人では浅田真央なんかも一時期マネジメントしてました。

――MMAファイターではロンダ・ラウジーをマネジメントしているんですね。

シュウ はい。そしてWME-IMGはテニスプレイヤーのセレーナ・ウィリアムスをマネジメントしながら、じつはテニスのUSオープン自体の代理人をやってるんです。USオープンのテレビの放映権やスポンサーを引っ張ってきてるのはWME-IMGなんですよね。

――今度からはUFCファイターをマネジメントしつつ、UFCというイベント自体の運営していくわけですね。

シュウ エージェントがこうして力をつけたのは1980年代まで遡るんです。そのきっかけとなったのはトム・クルーズとポール・ニューマン。2人が出演した『ハスラー2』という映画ですよね。

――あの『ハスラー2』がエージェント隆盛の時代を切り開いたんですか。

シュウ あの映画はですね、ハリウッドの配給会社が先行して作ったわけじゃなく、エージェンシーが企画を立てたものなんですよ。『ハスラー』の続編を、ポール・ニューマンとトム・クルーズで作るけど、脚本は決まっていない。しかもクルーズは、出世作となった『トップガン』の公開前だったんで「リスキービジネス」(邦題『卒業白書』)でブレイクしたばかりの若手だったんです。それなのに『ハスラー』、ニューマン、クルーズの名前だけ各方面からお金が集まっちゃって、マーティン・スコセッシを監督として雇えた。そんなプロジェクトだったんですね。

――そして『ハスラー2』はヒットしましたね。

シュウ それまでは配給会社は作品を流通させてお金を稼いでいたじゃないですか。彼らが必要なのはコンテンツなんですよ。そのコンテンツを作るクリエーターたち、エンターテイナーたちが力を持つことになったんですね。

――WME-IMGはMMAというコンテンツに目をつけたわけですね。

シュウ いまのアメリカのテレビの世界では大きな流れができてまして。日本でテレビ番組の価値を図るには視聴率がありますけど、イマイチわかりづらいじゃないですか。

――あくまで目安ですね。

シュウ アメリカでは視聴世帯数がバッチリと出るんですよね。要するに何万世帯が見てるとかまでわかる。いまアメリカのテレビ番組の中で一番重視されているコンテンツは、ドラマよりもライブものなんです。その番組の広告料が一番高い。日本でいえば『半沢直樹』のような人気の高いドラマって、みんな録画で見てるんですよ。でも、録画だと広告は見ないんですよね。

――録画だとスキップされちゃいますね。一方、スポーツはリアルタイムで見て楽しむもの。

シュウ はい。だからライブコンテンツがテレビの世界でいま一番価値があるんです。ちなみにWME-IMGは去年の段階でミス・ユニバースを買収してますし、カウボーイが馬に乗っていろいろと競技をするPBR(Professional Bull Riders)も買い取ってるんですよね。

――UFCだけじゃなくて各方面のライブコンテンツを買い漁ってるんですねぇ。

シュウ ライブコンテンツの重要性をわかってるので、サッカーのリアルマドリッドより高い評価額、4100億円でUFCを買ったんです。これだけの大金を払ったということは、これからテレビの世界ではライブものが圧倒的な力を持ち、広告収入で圧倒的な金額を弾き出すことを見越してるからですよ。

――4100億円以上の価値がある!と。

シュウ はい。それ以上の見返りがあると計算してるわけですよね。それくらいMMAは巨大なビジネスになってるということですよね。

――WME-IMGはさらに大きなビジネスに磨こうとしてるんですね。

シュウ そもそもUFCにFOX中継(地上波)の話を持ってきたのもWME-IMGなんです。それまではスパイクTVで年間数十億円だった放映権料が、一気に約百億円に引き上げたのはWME-IMGの力なんです。

――WME-IMGがあいだに入っただけで!

シュウ  これまでUFCというのはフェティータ兄弟のファミリー・ビジネスだったわけじゃないですか。スパイクTVと交渉したときに1OO億円を要求したら笑われたらしいんですよね。「UFCにそんな金額を払えるわけがないだろう(笑)」と。ところがハリウッドの世界に力を持ってるWME-IMGに頼んだら、あっという間にFOXから100億円の契約を取ってきた。

――WME-IMG、凄いわ!(笑)。

シュウ このWME-IMGがMMAに携わったのはもっと昔のことなんです。IFLという団体があったのはご存知ですか?

――チーム対抗戦MMAイベント! 猪木さんが東京サーベルズを率いていたりした。

シュウ あのIFLにスポンサーを持ってきたのはWME-IMGで、あのときからMMAというビジネスをモニターしていった結果、UFCに価値を見出して買い取ったというわけですよね。

――最近好調だから飛びついたわけではないってことですね。ここでニコ生視聴者から質問です。「UFCのPPVビジネスの戦略に変化はありますか?」

シュウ UFCの収入面の柱はテレビ放映権、PPV、それと広告。これがスリーメジャーなんですよ。チケットの収益も大きな収益のひとつなんですけど、この3つと比較したらチケット収入なんてどうでもいいレベル。そして、このスリーメジャーに関しては、大げさな言い方ではなくWME-IMGはアメリカだけではなく世界すべてのテレビ局とディールできる立場にあるんですよ。

――スリーメジャーがさらに膨れ上がると。

シュウ UFCとFOXの契約は来年更新されるんですけど、来年のUFCはいろんなプラットホームで中継されることになるのでは?と言われてますね。そうするとUFCがアメリカのスポーツ市場を席巻する可能性が高いですし、いままではファミリービジネスだったものが、WME-IMGというジャイアントがついたことで本当のプロスポーツとなる領域に入ったんですよ。

――ファミリービジネスというと、ついつい全女の松永兄弟を思い浮かべてしまうんですが(笑)、フェティータ兄弟もやり手ではあったんですよね?

シュウ 彼らもとても優秀でアグレッシブなビジネスマンでしたけど、WME-IMGは100倍くらいアグレッシブなんで。

――100倍!(笑)。これによってUFCに次ぐMMAイベントのベラトールにも影響は出てきそうですね。

シュウ ベラトールの親会社はバイアコムですよね。バイアコムも巨大なメディア会社で資金はありますが、MMAというスポーツリーグを作るというコンセプトではなくて、広告が取れるテレビコンテンツとして継続してるんですね。つまりライブコンテンツとしての重要性です。

――そこはUFCにも通じるところですね。

シュウ ただ、WME-IMGの力によってUFCが唯一のメジャーになって、ベラトールはマイナーという構図ができちゃいそうですね。フットボールに例えると、UFCがNFLなら、ベラトールはCFL(カナディアンフットボール)というか。それはUFCからFAしてベラトールに移籍した元UFCライト級チャンピオン、ベン・ヘンダーソンの移籍後の第1戦のファイトマネー、そして彼についたスポンサーの数からもわかるんです……。<この項、続く>




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