もくじ

1.HOTトピックス

  • ざっくり紹介:悪い冗談?ドーハでの国連気候変動枠組条約第18回締約国会議
  • フォーカス:バングラデシュでアメリカで、「ウォルマート」のホラーストーリー
  • トリビア:人気トークショーホストを泣かせちゃったエイミー

2.DN大好き:コペンハーゲンからドーハまで:DN!が気候会議にこだわるワケ
3.書籍&映画:ジュリアン・アサンジの新刊書 Cypherpunks
4.コラム

  • アンチTPPと永田町・霞ヶ関     安田幸弘

5.字幕スクリプト付き動画:TPPは貿易協定の衣を着た企業による世界支配の道具 
6.DNコーパス アクティブ市民のための英語



HOTトピックス



Democracy Nowから最新のトレンドを抽出してざっくり紹介。ニューヨークを中心に、米国の良識派や進歩的文化人やアクティビストが、いま注目している話題をお届けします。字幕では古くなってしまう事件、気になる事件のフォローアップ、トリビアなどのコーナーも有り


ざっくり紹介:悪い冗談?ドーハでの国連気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)



国民1人あたりの炭素排出量が世界で一番高い(1人年間約44トン、米国ですら1人17トンなのに!)石油で大もうけの産油国カタールのドーハで開催された国連気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)。国土の大半が砂漠のカタールでは、飲料水は海水を淡水化して使っています。グラス一杯の水にも石油エネルギーをどっさり使う国 で、地球温暖化をくい止めるための会議を開く?まるで悪い冗談です。

会議の第2週目を現地取材したデモクラシー・ナウの報道は、小島嶼国連合や先住民協議会長など、地球温暖化の影響が生存に直接影響しかねない国や地域、環境NGOの代表たちによる痛烈な米国批判の声を伝えました。オバマ大統領をなじる際の最大の侮辱「ブッシュ以下」という殺し文句さえ、聞かれます。COP18の焦点は何だったのでしょう?米国がドーハで「懲りないイジメっ子」と呼ばれるにいたったいきさつは?

エゴを通した米国

そもそも国連気候変動枠組条約とは、人間の行為が引き起こす地球温暖化をくいとめるため、二酸化炭素など大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを人類共通の関心事であるとして確認する条約です。まずは大枠の目標をできるだけ早く確認し、できるだけ多くの国を参加させることが目的なので、細かい取り決めはなく、拘束力もありません。枠組条約には1992年の地球サミットで154カ国が署名し、締結国間の会議(COP)が1995年に始まりました。1997年COP3で採択された「京都議定書」は、枠組条約の掲げる大目標を実現するための具体的な措置や基準を決めたものです。2008年から2012年の5年間を第一約束期間とし、削減目標を先進国に対して設定し法的拘束力を課しましたが、途上国には新たな義務は導入されませんでした。2011年3月時点で議定書の締結国の数は192カ国 。米国はいまだに批准していません。京都議定書が採択された時の米国の大統領はクリントン。早々に議定書に署名しましたが、議会が中国などの「途上国が参加しないのなら、意味がない」と批准に反対しました。ブッシュ大統領になると、「米国の経済に害となる 」「地球温暖化を説く科学は疑わしい」として2001年に議定書から離脱してしまいました。

消えた「気候正義」

COPが大きな盛り上がりを見せたのは、2009年にコペンハーゲンで開かれたCOP15でした。2007年以来、中国が米国を超えて世界の排出量トップの国になっており、2009年には第2位の米国と合わせると排出量は世界の4割近くを占めているのに、京都議定書は両国に義務を課せませんでした。実効性のある議定書の次期の枠組が待たれており、2009年末までに合意を得るとされていたのです。国連史上最多とされる119人の首脳が集まり、NGOの代表や活動家も、「公正で意欲的で拘束力のある」次の一歩を求めて先進国や大国主導の会議に圧力をかけるために勢力を結集しました。「気候正義」という概念が広く語られるようになったのもこの頃からでした。地球温暖化をもたらしている政治・経済システムそのものを問題視し、汚染国は「気候難民」を出している、あるいは自国の発展が排出量規制のために遅くなる、あるいは排出規制のための技術を導入しようにもお金のない途上国に対して「気候負債」があり経済的支援をすることこそ「正義」だとする声が力を得たのです。