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小飼弾の論弾 #265 「OpenAI CEO解任騒動は汎用人工知能を巡る戦い?1分で10日間の天気を予報するAI、謎の高エネルギー宇宙線検出」

2023/12/05 07:00 投稿

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 「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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 今回は、2023年11月28日(火)配信のテキストをお届けします。

 次回は、2023年12月12日(火)20:00の配信です。

 お楽しみに!

2023/11/28配信のハイライト

  • 万博とアルゼンチンと日本の将来
  • ガラケーの完成度と「日本の面白い製品は1塁止まりが多い」
  • サム・アルトマン解任騒動とガバメントクラウドについて
  • 「AIにブレイクスルー?」と「AIの危険性と人の手」
  • 視聴者からの質問「通信制大学に入学する価値は?」と「とりあえず図書館」
  • 「謎の高エネルギー粒子」と「リニア新幹線の高温超伝導実用化」

万博とアルゼンチンと日本の将来

山路:寒暖差がちょっと激しすぎて、もう体がどうにかなりそうなんですけれども(笑)、大丈夫ですか、弾さん。

小飼:まぁなんとか。

山路:なんかもう常にどんだけ寝ても眠いみたいな、

小飼:でも確かに秋なんだなぁとか思うのは、久しぶりにいっぱい食べてます。

山路:普段食べてないってこと?

小飼:たぶん、あまりに食べなさすぎて、妻が作り置きしてくれる分量がちょっと半端でなく多いというのもあるのかもしれないと思った。

山路:意外に食が(笑)、

小飼:食欲の秋というのであれば、そうか、秋は食欲か、みたいな感じで。だから、そんなに確かに食べられなかったんだよね。今年は夏がやたら長かったじゃないですか。だから僕がちょっと体重を落としすぎたのも、まぁ、たんなるって言っちゃあれだけど、夏痩せというやつではないかという。60キロ切ってたもんなぁ。少し戻した。

山路:私は11月入ってから蚊にむちゃくちゃ刺されたりしました。異常気象、続いてたりもしますけど、西日本のほうでは今度は雨が降らないみたいなこともあり、これが異常気象なのかどうかはわからないですけど、それで琵琶湖の水位まですごい下がったりとか。琵琶湖の水位が下がり続けて、マイナス65センチ。

小飼:それはけっこうなもんだね。

山路:これはもしかして『翔んで埼玉』のプロモーションの一環なんじゃないかみたいな(笑)。

小飼:いや、でも、じつは続編をやってると気がついたのがつい今日の話で、それ知らないで話を振られたら、なんで『翔んで埼玉』の話が琵琶湖と関係あるんだっていう。

山路:弾さん、『翔んで埼玉』は見ました?

小飼:最初のやつは配信で見ました。

山路:新しいやつ、私もさっそく見に行ったんですけれど、今度は滋賀県人が酷い目にあって、なかなかよかったですよ。鼻の穴に鮒ずしを詰められるとかね(笑)。

小飼:全国分やるのかなぁ、これ。

「正常気象が最近ないので今のが異常なのか不明」(コメント)

小飼:平年という言葉があの信じられなくなりましたね(笑)、今年、特に今年は。

山路:じゃあ天気の話が出たから、先にこの天候のAIの話やっちゃうかなぁ。異常がどれかわかんないっていう話があったけれども、異常がわからないところでも、この天気の予測というのは可能なのだろうかみたいなこともちょっと興味ある、DeepMind。AI、Google系の、Google参加のAIの開発の、

小飼:アルファ碁の、

山路:そうです、が天気を予測するAIを開発したというんですけれども。これが1分間で10日間の天気が予測できてしまうという。使うコンピュータリソースもめちゃめちゃ少ないそうなんですよね。

小飼:いや、だからこれも計算ではなくって、要は確率過程を追ってるわけでしょ。いや、それで当たるというのがちょっと納得しがたいところがあるんだけれども。

山路:40年分の天気情報を学習させたっていうようなことが書いてありますよね。

小飼:そう、だから前の天気がこうだから次はこうなるだろうっていうのと、今の天気予報の予測というのは、もう完全に物理学にのっとってやってるわけですよ。そう、現在の地球の状態がこうで、太陽の日照がこうだから、次はこうなるだろうっていうのを計算で出してるんだけれども。

山路:このDeepMindのやつに関して言うと、すごい広い範囲をカバーした村の古老みたいな感じなわけですよね。昔こうだったからこうじゃね、みたいな(笑)。

小飼:だから極端に言うと、学習経験をもとにしたAIっていうのは前にも言った通り、3は素数で5は素数で7は素数だから、これはだから9も素数に違いないっていう間違いをやりかしがちなんですよね。

山路:さっきその異常気象の話しましたけれども、すごく不規則な、今までになかったような変化をするようなことが増えていったら、

小飼:いや、だから人間に見えないけれども規則はあるわけですよ。というよりも、規則を勝手に見出してる。だから人間にはそこにパターンがあるようには見えないけれども、アトランダムには見えるけれども。

山路:じゃあ意外に、この異常気象が人間にとって、あーもうなんかすげー今年の夏はもう突然暑くなったり大変だわと思ってても、意外にもしかしたら予測できちゃうかもしれない?

小飼:予測できたというよりも、異常気象が続いた時にはそれが正常だと判定する確率は上がるはずなんだよね。正常というのか、次もこうなるだろうと。

山路:以前、気象予報のそういうコンピューターモデルみたいな話してる時に、弾さんが最近天気予報の精度が上がったのは、結局センサーが増えたからだっていう話をしてたじゃないですか。

小飼:そうそう。観測地点が増えた。それで観測点ごとの観測精度というのも上がった。

山路:結局、細かく観測したデータがあるからこそ、こういうDeepMindのこのGraphCastみたいなことも実現可能になったとも言えるわけではありますよね。

小飼:それはそうだ。

山路:しかし、これってたぶん、このGraphCastだけでどうにかなるというわけでもないんですよね、おそらくは。今までの従来通り、物理シミュレーション的なことをやるということも、両輪では進めていく必要はある?

小飼:もちろん。

山路:そもそも地球の気象のやつって、完全にそのメカニズムとして解明され尽くしてるわけでもないですもんね。

小飼:いや、ほぼ解明はされてるんだけれども、やっぱ観測精度が足りない。だから、もっと精密な予測をするためには、もっと精密なメッシュが必要。だから、完全な予測には完全な地球が丸々1個必要だというのが物理学の言ってることなんだけどね。

山路:まぁまぁ、それだと本当にコスパが悪いというか(笑)、地球もう一つ作ってって『銀河ヒッチハイクガイド』みたいな話になっちゃいますからね。

「ウェザーニュースの有志で人力予想も頑張ってそう」(コメント)

山路:確かに最近の天気予報アプリって、Yahoo!天気にしても、人からの投稿募集、けっこうありますよね。今あなたのいるところで雪降ってますか、雨降ってますかみたいな。

小飼:そう、でもじつは今のところは雨か雪までの予測というのはけっこうちゃんとできるんだけど、どっちになるのかというのはけっこうずれたりする。

山路:観測値が多いほうが有利みたいなとこはありますよね。

「10日間の予想はもともとあるから、そんなに画期的じゃないんでない」(コメント)

小飼:それが当たるかどうかというのは、これまた別問題だと思うよ。

山路:これが今回のが画期的だっていうのは、今までの10日間のその大気予測モデル、予測しようとすると数百台のマシンで構築されたスパコンを数時間稼働させる必要があったのが、このGraphCastに関して言うとそのGoogle製のAIプロセッサを1分稼働させるだけで予測可能って(笑)。
 いろいろ盛っているところはきっとあるんだろうけれども、かなりコンピュータリソースは少なくて済むみたいな話はありますよね。なかなかすごい話だと思いました。じゃあそのAIの話出たところで、これもすげーなと思ったのが、この悪事に使うAI(笑)。

小飼:要はCEOの電話音声を真似て、ニセCEOに送金オーダーを出させたという。

山路:そうそう。しかもこの記事を読んでいただくとわかるんですけど、めちゃめちゃ手が込んでるんですよね。この詐欺の手法を仕掛けられて、騙されない奴って。たぶん弾さんでも騙されるんじゃないかと思うんですよね、正直(笑)。

小飼:受けるほうとして、それは確実に騙されるほうでしょうね。
 よほど会話の中におかしな点、不審な点がないと、たとえば世間話はじめたら、その人が絶対知ってなきゃいけないことを知らなかったり、その逆だったりっていう。でも普通はビジネスの時にそんなことは話さないよね。いきなり本題に入られたら、もう。

山路:しかもこれ、CEOから経理部とかそういうふうなことの指示だったりもするから、そんなにいちいち聞き返さないだろうみたいなところもあるだろうし。あとこの巧妙なところってのは、そもそもこのCEOから携帯電話で金を送金する担当部署に電話がかかっているんですけど、CEOの電話をあらかじめ乗っ取ってあるんですよね。

山路:SIMスワップっていう手法で、この携帯電話が乗っ取られてて、その乗っ取られた携帯電話を使って生成AIの音声で経理部かなんかに指示を出して、それ、絶対にもう無理じゃないですかと(笑)、そんなの。CEOの音声だって、YouTubeでそのCEOが喋ってたデータを元に生成して会話を作ってるわけだから、そんなんて、それこそべつに『論弾』が話してる、YouTubeで流れてるやつで私の声作るのってもう簡単じゃないですか。

小飼:うん。いくらでもサンプルあるしね、もう既に。

山路:この時代、どうしたらええねん、みたいな。こんな手法が出てきたら、

小飼:いやー、そこでマイナカードですよ、とかって言い出しかねないよね。

山路:(笑)

小飼:いや、だからそうしたらさ、不正取得っていうのも意外と簡単にできそうなんだけどね。

山路:なんか役所、あ、大丈夫ですか?

小飼:(椅子を調整しながら)なんか椅子がおかしかったんで、ちょっと。いや椅子が何者かに乗っとられた(笑)、

山路:それはまた巧妙なソーシャルハッキングですね。役所の仕事って逆にこう、うざいから、今それがめんどくさい手間をかけてるから防波堤になってみたいところあるけど、逆に大したことを見てなかったりもするじゃないですか。手間をかけさせてるだけで、印鑑を押すけども、その印鑑の本人証明にべつにそれ、つながってないやろうとか、そんなこといくらでもあるじゃないですか。本気になったら、ソーシャルハッキングに弱い仕組みかなと、

小飼:たぶん万博の予算もそうやって倍になっていったんでしょうね。

山路:あっはっはっは。万博ね(笑)。いやー、どこまで増えるんでしょうかね、万博の予算。どうします、万博の話、いきます? 万博はもう疲れるだけだから、いいかな(笑)。リングとかどんどん出てきて、わけがわからないんですけれど。

小飼:ただ、それとてオリンピックの10分の1ぐらいなんだよね。オリンピックは数兆円でしょ。

山路:建設費と別にさらに800億円がかかるという。しかし、なんかこの馬場維新代表が万博を辞めたら、未来永劫、日本は世界的なイベントをできなくなると言ってるんですけれど、そんなことべつにないですよね(笑)。

小飼:それは全然ない。

山路:都市博辞めましたもんね(笑)、直前で中止したから。

小飼:おまえはなにを言ってるんだ、というね。というのかさ、万博はわりとカジュアルに中止できるもんだよ、だからArgentinaが中止したじゃん。

山路:アルデンチンね。

小飼:ブエノスアイレス万博、流れたじゃん。そもそもブエノスアイレスで万博をやる予定だったって、知ってた人どれくらいいるんだ?オリンピックに比べると、ドマイナーなイベントだからね。

山路:大阪万博に関しても、できそうもないっていうニュースが流れてなければ、大阪で万博やるって知らない人もいっぱいいたんじゃねえのかなと思うんですけれどもね。まぁまぁ、それはさておき。じゃあちょっとその、

小飼:そう、Argentina、ちょっと新大統領、うーんって感じなんだけど。

山路:アルゼンチン新大統領、中央銀行廃止して、ドルペッグ制にするといってる人ですか。じゃあちょっとその話、どうですか、アルゼンチンの新しい大統領は中央銀行なくして、も通う貨はドルにして、完全にアメリカと連動する、

小飼:通貨ドルにしようとしたこと、一度あるじゃん。それで破綻しとるやん、お前ら。歴史というにはあまりに最近の出来事だよ。だからいったんドルペッグして、ドルペッグやめたというのは。

山路:これってアルゼンチンってもう、じゃあどうすりゃいいんですかねって、たぶんアルゼンチンの人もなんとなく薄々、ドルペッグ制にしようがどうしようがそれで解決できそうじゃないって思ってるような気はするんですけども。

小飼:その一方で、毎日300gの肉を食ってる人たちでもあるんだよな。

山路:ああ、つまりなんというのか、高コストな暮らしをしているとも言えるわけだ、

小飼:まぁ地球に優しくないといえば、まぁでも、その分、土地が豊かだという見方もできるよね。

山路:べつにアルゼンチンで作られた肉食ってるわけなんだもんなぁ。環境負荷は高いにしても。

「これ、ユーロみたいにできませんか」(コメント)

小飼:前にも言った通り、EUがうまくいってる理由っていうのはEUの1番強い国でも、圧倒的に強いわけではないこと。ドイツとフランスとイタリアっていうのは似たような規模と、ドイツが頭一つ抜けてるけど、頭一つぐらいで、圧倒的にでかいっていうことではないでしょ、これがアジアになると中国が圧倒的にでかいし、これが南米になるとブラジルが圧倒的にでかい(笑)。

「アルゼンチンの経済ってなんでこんなにひどいの」(コメント)

山路:確かに不思議ですよね。アルゼンチンって一昔前はすごい豊かだった国じゃないですか。

小飼:今でも基本的スペックは豊かなんだよね、資源もいっぱいあるしさ。だから前にも言ったように、一日300gの肉を食える人たちなんだよね。

山路:それ、単純に政治がよくないってことなんですか?

小飼:もう本当にそうだよ。だからポピュリズムだね。フォークランド紛争をおっ始めたのもポピュリズムのなせる技だし。人気取りのためにやったのよ。

山路:フォークランド紛争を?

小飼:うん。だからイギリスに実効支配されているマルビナスを、フォークランド諸島というのはArgentinaではマルビナスっていうので、を取り返そうと。
 結局、それで誰も得しない戦争になって。イギリスが本当に僅差で勝ったんだよね。でも、本来であればイギリスが圧倒的に勝利すると思われてたんだけど、圧倒的でなかったというのが驚きだったわけだよ。

山路:イギリスもその時に、そんなに戦費を使えなかったっていうことなんですかね?

小飼:いや、その時、軍縮を止めたんだよね。サッチャーが来る前までは軍縮をかなり進めてて、持ってる空母とかもあちこちに売ったんだよね。

山路:いろいろつながってるなぁ(笑)。しかしアルゼンチンのこのていたらくっていうのは、そのあたりから始まってるとも言えるのかな?

小飼:いや、ペロンのあたりからじゃないかな、だとすると。妻のほうが有名ですね、エビータのほうが有名。

山路:はぁはぁはぁ、あのあたり。あれって何年くらいでしたっけ?

小飼:えーと、50何年だったっけな。我々が生まれる前の話だからな。

山路:ほー。そんなもう、前から衰退が、あれ?

小飼:衰退がというのか、ポピュリズムの台頭といえばいいのか。

山路:根っこが。そうか、そんなものなのか。

小飼:でも、74年に亡くなるまで任期にあったのか。復活してるのか。

「日本が将来アルゼンチン化するんじゃないかと思うと怖い」(コメント)

小飼:いやー、似てはいるな。

山路:あとイタリアも似てませんか、このイタリア、日本、アルゼンチンあたり、なんかこう(笑)。

小飼:ああ、ただね、イタリアは大陸制覇してたことがあるわけよ。いちおう、ローマの遺産というのはあるわけだよね、

山路:観光資源という意味で?

小飼:いや観光資源という、あともう一つ、その後に逆にバラバラになったので。だから、じつはイタリアになったというのはわりと最近なんだよね。

山路:意外に新しい国という見方もできる?

小飼:意外と新しい国なの。その辺は日本に似てるかもしれない。日本も便宜上、日本という言い方をしてたけど、各藩に分かれてたんだけれども。だから、これ、まとまらなきゃダメじゃんっていうのも、明治維新のきっかけになったんだよね。

山路:じゃあなんか、意外にみんな新しい国、

小飼:そうなんです、古くて新しいんですよ。

山路:意外に中国とかのほうがその辺の仕組みっていうのは古いのかもしれないですよね。

小飼:でも一般的な中国人に中国4000年とか5000年とかって言っても、キョトンとしますよ。
 中華人民共和国からだから、まだ70年という理解なんですよね。

山路:じゃあ本当の意味で古い国みたいな意識のある人ってそんなに、

小飼:ただその意味でも、領土意識というのは違うんですよね。今中国が自国の領土だと主張して世界もほぼ認めちゃっているのは、チベットですとかウイグルですとかっていうのがなんで中国なのか、始皇帝の頃の中国というのはまだずっと東寄りの、西のほうというのは別の民族が支配してたじゃないかっていうけれども、じつは清の時の領土なんですよね、今、中華人民共和国がうちのものだというのは、台湾も含めて。

山路:清というふうになってくると、だいぶ、

小飼:プラスモンゴルだけど、厳密に言うと。

山路:わりと新しいといえば、みんな本当にここ2、300年ぐらいの話とも言えるわけか。

小飼:ではある。

「ウイグル人はこのまま民族少数派になるまで弾圧を受け続けるしかないのかな」(コメント)

山路:他のイスラム教徒の国々はウイグル人をどうして支援しないのかというのも不思議な感じはしますけどね。そこは目を瞑るんだとか。

小飼:支援が難しいところでもあるよな。

「日本はやっぱりユナイテッドキングダムに似てるよね」(コメント)

小飼:まぁでも、日本も明らかに征服王朝ではあるんだよね。だから、天皇の系統というのは縄文人ではないです、後から来た人たちですよね。なんだけれども、ブリテン島の場合は、ノルマンコンクエストというのは、ちゃんと史実としてあるわけですよね。日本のは、有史以前の話なので。

山路:なんか日本史とかをチラッと見ていると、その時点での文明レベルの違いに愕然としますよね(笑)、なんかこう。田舎の村と都会のもうレベルの違いが、国としてあるじゃないですか。

小飼:だから、そもそも文字持ってなかったんだから。まぁでもそれはぜんぜんべつに恥ずかしい話でもなんでもなくて、人類のほとんどはそうなの。アルファベットだって、もともとアルファベットではなくて、フェニキア人のものだから。

山路:まぁ確かに(笑)。

小飼:だからみんなそういう叡智というのは貸し借りしているわけよ、ぜんぜん恥ずかしい話ではないよ、それは。

ガラケーの完成度と「日本の面白い製品は1塁止まりが多い」

山路:じゃあその叡智の貸し借りの話で、ちょっと最近Xで話題になってた話。もうこれ、定期的に出る話なんですけど、iPhoneは日本企業に作れたかという(笑)。

小飼:ああ、すごい難しかったけれども、じゃあiPhoneに1番、僕が似たいきさつのモノっていうのは何でしょう、だから一つは例がある。

山路:日本が作れたモノでってこと?

小飼:日本が作れたモノっていうのは。だからiPhoneの特徴っていうのは、何があるか、じゃないんですよ。何がないか、なんですよ。キーがない。

山路:キーボードがない。

小飼:ペンがない。でね、惜しい作品はあったんだけど、でもそれは置いといて、もともとそういうモノがあったのに、それを取り除いたところが画期的だったんだよね、iPhoneって。いや、だから本来あるべき機能っていうのをなくしてしまったことで、その製品のジャンルを確立したものっていうのは、僕が思い出すのはやっぱウォークマンですね。

山路:あー、はいはいはい。

小飼:録音機能がなかった。

山路:スピーカーもなかった。

小飼:そう、テープデッキ、だからコンパクトテープデッキだったのに、録音ができなかった。後に録音のモデル録音できるモデルとかっていうのはいくらでも出るんですけど、少なくとも最初のやつはなかった。こんなんでいいのかって言ってて、これでいいのだって言ったんですよね。だから盛田さんが言ったことになってるんだけども。だから、「これでいいのだ」をやったというのがじつは1番大きいんですよね。じつはあの物理キーボードとかがなくて、タッチパネルで全部やる製品っていうのはあったんですよ、日本にも。パイオニアが出してたんですよ。

山路:なんだっけ? えっ? 物理キーボードなくって、そんな製品あったっけ?

「生まれてねー」(コメント)

山路:ウォークマンができた時代に生まれてないんですか(笑)、

小飼:あった、02、

山路:ああ、J-PHONEのってことですか、

小飼:そうそうそう、

山路:J-PE02という、あの当時のガラケーって本当にすごい、なんていうか個性様々な機体が出ましたよね。

小飼:なんだけど、その時はちょっと性能がショボすぎたんだよなぁ。じゃあいちおうちょっとリンク出しておきましょう、あーImpress Watch、最高だな、ちゃんとアーカイブ、1999年のアーカイブが残っている。

「いろいろな機能をつける競争をしてましたね」(コメント)

山路:本当にそう、

スタッフ:すいません、関連リンクでちょっとまとめてたページがあったので出してみたんですけど、その中にありますか?

山路:ああ、はいはいはい、見たことある。

小飼:でもね、当時はちょっと性能がショボすぎたんだよね。だから時代をちょっと先取りしすぎた。でね、これもある、だから作れたよりも、iPhoneに関して作れたのは重要なのは作れたことよりも、作り続けられたことなんです。

山路:初代で終わらなかったってこと?

小飼:そうそうそう、3Gが出て、3GSが出て、4が出て、5が出てっていう、5Sが出て6が出てっていう。

山路:特に初代iPhoneって最初話題になったけど、数ヶ月で失速して、そんなに、あんま大したことないじゃねーかとか散々言われたんですよね、実際には。

小飼:ちゃんと続けられたことが偉い。僕はあんま野球とか好きじゃないし、得意でもないけれども、1周してきてやっと点が入るわけですよ。日本の面白い製品は1塁止まりが多いんです。

山路:私もガラケー、その当時はガラケーという言葉はなかったですけど、この機能がいいなと思っても、それが継続されないんですよね。次のモデルになったらなくなってたりとか、結局そういうふうな継続性がなくて、使いづらかったなぁというのはありますね。

「iPhoneの1.0とか見たことないのですが、あるのですか?」(コメント)

小飼:それは本当にただのiPhoneと呼ばれていました。

山路:初代iPhoneと言いますよね。

小飼:なんと回線はあの2Gです。今やない、今や、最低日本では最低でも4Gなので、3Gですら廃止されてしまったので。

山路:あと、日本では発売されてないですしね、初代のiPhoneっていうのは。日本で発売されたのはiPhone 3Gから。

小飼:先見の明の凄さではなくって、じつはAppleは先にiPadを作ってたんです。iPadを作ってたんですけど、iPadの試作品をジョブスが見た時に、先に携帯を、これの携帯バージョンを作れってドヤ顔に言ってましたね。

山路:しかし、いろんな本とか読むと、その電話を作ろうと思ったっていうのも、じつはジョブズのアイディアではなかったみたいな話もありますけどね(笑)。

小飼:きっかけは、売れに売れてたiPodと電話が一緒になればいいよねって考えてた人たちっていうのがけっこういて、じつはMotorolaがRAZRという機種を出したんですよね。iPodの機能付きの。でも、じつにそれが残念な出来で、これを見たジョブズが自分らでやるしかないなって思ったとき、いや待てよ、これ、うちらも当時名前は決まってなかったけど、iPadがあるじゃん、だからそれでやればっていうので、でも、それもさらにそうストレートに決まったわけではなくて、最初に決まってたのは電話付きのiPodだったんですよね。電話付きのiPodを作るにあたって、iPodを進化させたiPodプラスプラスで行くのか、あるいはMacをすごい小さくしたMacマイナスマイナスで行くのかっていうので戦いがあったわけです。iPadというのはMacマイナスマイナスとして作られていたので。そっちのほうが勝ったんですよね。

山路:このiPodを電話にしようとするのは、あらゆる操作が面倒くさかったって話が出てますけどね(笑)。そらそうだろうっていう。

小飼:いやー、でもやっぱりいかにこれが、ピッタシいろんなところにハマったかっていうのは大きいです。でも、Appleがやっぱ凄かったのはさらにその後で、初めはあの小さなMacとして作ったじゃないですか、機能限定版のMacとして作ったじゃないですか。でも、こっちのほうを進化のメインに据えるんですよね。だから、それが明らかになったのがiPhone 4の時で、あの時にRetinaディスプレイというのが初めて搭載されました。要するにMacよりも明らかに機能的に優れたものというのが、iPhoneのほうに先に搭載されたと。だから以降、ハードウェアで1番先進、最先端のハードウェアというのはiPhoneに搭載されて、それが後にMacにやってくるという。だから今やCPUですら、そうですよね。そこですね。

山路:iPhone 4あたりからですかね、日本でも火がつき始めたっていうのは。

小飼:いや、全世界的にそうよ。

山路:よく耐えたなっていうところはありますけどね。

小飼:でも日本は孫さんの時に、3Gが来たからね。

山路:孫さん、だけどiPhoneがまだできてなかった、iPhone 3Gとかできてなかった段階でジョブズに交渉して、それを発売約束取り付けたっていうのはさすがに天才経営者、だって世界とほぼ同時発売ですもんね、iPhone 3Gに関しては。

小飼:3Gはそもそも回線がなかったんじゃないかな(笑)、じつは回線規格が世界共通になるのは3Gのあたりからなんですよね。それ以前っていうのはけっこう各国バラバラだったんですよ。

山路:iPhoneの3Gがこの2008年の7月発売で、私、iPhone 3G、2008年の8月に買ってるんですけど、弾さん発売直後ぐらいに買ってましたっけ?

小飼:そうですね。

山路:弾さんがこのiPhoneを買ったと聞いて、Macbookの、iBookの新しいやつか、それともiPhoneか、どっち買ったほうがいいんですかね? みたいなことを聞いてみたら、断然iPhoneと言われて、iPhoneを買いに。

小飼:でも日本の場合、その前にさらにiPod touchが先に売ってくれてたっていうのは大きいね。

山路:iPod touchはiPhone 3Gの前に出ましたっけ?

小飼:前に出ました。

山路:それでみんな、ちょっとお試しがある程度はできたっていうこともあるのか。

小飼:そう。

山路:(iPhoneは)やっぱメニューをいじるだけでも楽しかったっていう覚えがあって。iPhone 3G、初めて買った時。このシュッシュッシュッシュッと動くの、これ絶対、本読むやつ出てくるなと思って会社作って、電子書籍とか売りましたけどね。

小飼:でも1番画期的だったのは。ソフトウェアアップデートで、ちゃんと中身が新しくなるっていうことでしたよね。それを見逃してた人多かったね。
 当時はハードウェアとしての出来というのは、いわゆるガラケーのほうが良かった、確かに。だからすごい完成度が高かった、当時のガラケーは、ガラケーというふうに呼ばれる前のガラケーの完成度は高かった。

山路:確かにソフトウェアのやつは、なんかもしかしたら販売店とかで何かでかい不具合があった時にそれをアップデートするみたいなのがあったかもしれないけど、ユーザーが個人でっていうのは、少なくともメジャーではなかったかな。

小飼:そうそうそう。

「ずっと799ドルで円安で高かった」(コメント)

山路:あれ、その時って円安だったっけ、円高だったっけ、2008年ぐらいって、ちょっと忘れたんですけども。日本で高い高いと言われてたような覚えはありましたね。ただソフトバンクがめちゃめちゃいろいろ補助金とか利用して、補助金じゃねーや、販売奨励金とか利用してすごい安く配ったって言われましたけどね。いや、懐かしいですよね。

スタッフ:ちょっと引き算みたいな感じでっていうんで、ファミコンなんかはどうだったんでしょうか。ゲーム機のファミコン、

小飼:いや、だから成功してるじゃないですか、だからよく、なんで日本にAppleができないのかつって言ってるけれども、任天堂とソニーがあるだけですごいんです。

山路:大抵の国にはないからね。

スタッフ:以前、弾さんウォークマンも要は再生だけっていうのねって言ってましたよね。

「iPhone欲しくて、ドコモからソフトバンクに乗り換えたものです」(コメント)

山路:私もなんかauからソフトバンクに乗り換えたなぁ、懐かしい。本当にコピペとかないのって、どうかしてるやろうって思いましたけど。

小飼:ないない尽くしだったね、

山路:ただないない尽くしを踏まえても、それまでの携帯電話より使いやすかったんですよね、あれはびっくりした。

「キーボードがないなんてと言われたらしいね、ファミコン」(コメント)

山路:あー、そうなんですか。

小飼:iPhone 7で、Suicaが載ったんだよね。いや、だからあれを見たとき、これでいよいよもう社会のインフラになるのだな、これはと。

山路:本当、なんかiPhoneが出た時ってけっこうおサイフケータイの機能ないじゃんみたいなこと文句つけてる人っていうのは、

小飼:それも文句の一つとしてあったね。いや、だからけっこういきなりの発表で、あれはいきなり完成度が高かったよね、iPhone 7は。

山路:ただ、それにしても、『THE ONE DEVICE』っていうiPhoneの開発物語とかも読んだんですけど、ジョブズが発明したっていうのは嘘というか言い過ぎにしても、その時に集まってた技術だったりとか、トレンドだったりとか、そういうものをある意味iPhoneっていう一つの言葉にして出したのはAppleじゃないですか。なんでそんなことをできたんですかねっていうのは、ちょっと今でも不思議に思う、それは運なんですか?

小飼:すごい運も大きいけれども、やっぱり人材が揃ってたっていうのは大きいですよね。やっぱりジョブズが戻ってたっていうのが大きくて、ジョブズがNeXTと共に戻ってきてたというのが大きくて。いや、だからOS Xを採用しなかったら、本当にAppleってもう今なかったのは確実だからね。いや、だからもしこれでBeOSのほうを採用してたら、なかった、今のMacは。そう考えると、今やコンピューティングの世界っていうのは1番多い多い端末というのはAndroidで、次がiPhoneでっていうのを考えると、Unixが勝った世界なんだよね。じつはこれ1番びっくりしてて。

山路:もしかしかしたらどこかでその世界線を、誰かがいじっとるのかも(笑)、

小飼:これですらそうよ、(Apple Watchを見せながら)これですら64ピットOSが走ってるのよ。

山路:確かに(笑)。

小飼:どっしぇーなんだけどね。

「今のiPhoneの大きさを知ったら、ジョブズが怒って生き返るかな」(コメント)

小飼:iPhoneはやむを得ないとは思うんだよね。大きいと言っても、1番大きいのでMaxがついてるやつ、プラスがついてるやつで、もうそれはもう両手持ち専門って感じじゃん、でも今の大きさになったっていうのは、何回も何回も使われ続けて、ライバルと切磋琢磨した結果でもあるよね。iPhoneに関しては、ある意味カメラの数から言っても落ち着くところで落ち着いた感はあるんだけれども。ちょっとあのマウス、Lightning充電は許せないよな。

山路:(笑)あれはジョブズを生き返らせるのに十分な感じがしますけどね。

小飼:あれは本当に、もう草葉の陰でブチ切れてるんじゃないか(笑)。

山路:ただ、ジョブズ、すごい人だったとは思うけれども、ジョブズがあれずっと生き続けたら、Appleって今の時価総額は達成できてない気がするんですけど。

小飼:でもあれよ、いちおう時価総額世界一になったのはジョブズ存命の時ではあったから。

山路:そうか。

小飼:でも、それからやっぱり順調に伸ばしていったっていうのは、クック体制なので。

「そんなことないでしょ」(コメント)

山路:ああ、そうですか。コメントでも、そんなことないでしょって言われちゃったけど(笑)、CEOとして、すでに大きくなった会社を安定的に運営させるのには向いてなさそうな人の気も、

小飼:それは同感で、一つジョブズがなくなってから変わったっていうのは、それまでのAppleというのは無配当の会社だったのよ。それが2012年だったっけな、Appleが配当を開始したの。本当にジョブズの死後なんだけど。今や世界で1番配当する会社になったからね。

山路:額的にね。

「でもピークは続かない」(コメント)

山路:ただ、そのピークずっと続けてますよ、Apple(笑)。わりとすごい数字は続けてるとは思いますけどもね。

「バフェットの影響かな」(コメント)

山路:ああ、なんかそれはあるのかもしれないですね。

小飼:今やどっさり持ってるもんね、Apple株を、バークシャー・ハサウェイ。

「あの人が生き返ってきたら、まわりの人にとっては相当にウザいことが永遠に続くという地獄ともいえる」(コメント)

小飼:いや本当に、本当に。だから遠くから眺めていると眩しいけど、近くによると痛いという、典型的な人だったね(笑)。

山路:「それな」って賛同のコメントが。ティム・クックはまだ人間ぽいというか、ちゃんとコミュニケーションが取れそうな気がしますけれどもね(笑)。

小飼:でも、ティム・クックはジョブスの無茶振りを1番間近で受けた人なんです。

山路:それを全部クリアした人ですもんね。

小飼:じつはあのアイヴではないんですよ、アイヴはデザイン的な無茶振りは受けたけど、でも具体的にこの量のiPhoneを作れって言って、それを全部手配したっていうのはもうクックなので。

山路:なんかそれこそ、端末1台1台、どこにあってどういうふうにみたいな状態に今あるみたいなことまで把握できる、調達網とか輸送網みたいなことを構築したっていう話もありますもんね。

「(ジョブズと)エレベーターで一緒になっただけでクビっていう伝説」(コメント)

山路:ありますよね。

小飼:(クックは)ロジスティシャンなんですよ。

山路:絶対イヤな上司ですよね。『THE ONE DEVICE』っていう本では、死んだ人とかがけっこう30人くらい出てくるんですよ、iPhoneの開発で(笑)。あと離婚しちゃった夫婦とか、iPhoneチャイルドでしたっけ、iPhoneを開発してる間に子供が大きくなっちゃったってやつ、iPhoneベイビーか、なんかいたりとかしたそうですけれどもね。じゃあちょっとそのiPhoneの思い出話に花を咲かせたところで、

小飼:まぁでも確かに日本企業のは、さっきのパイオニアのJ-Phoneの端末もそうだけど、惜しいと思わせる要素はあったよね。でも、しつこいようですけども、1塁止まりなんですよ。で、なんで1塁止まりなのかというのをよく考えたほうがいい。

 

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