「十文字曳参のヲタコンテンツ批評」
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【ヲタ評×のうりん】
農業高校二年生の畑耕作は、ある日大ファンであるアイドル、草壁ゆかの引退を知る。落胆する耕作の前に現れた転校生は、なんと草壁ゆか本人だった。農業&おっぱい&馬鹿! 抱腹絶倒の農業系お色気コメディー、のうりんの魅力とは!
のうりん Vol.1 [Blu-ray]
ゆーかたん! ゆーかたん! ゆーかたん! ゆーかたん!
本作はGA文庫から発売中のライトノベルのうりんのアニメ化。内容は大人気アイドル草壁ゆかに熱を上げる農業高校生の畑耕作と、アイドル引退後に転校してきた草壁ゆか、主人公に恋心を寄せる幼馴染とメガネが繰り広げるドタバタ農業コメディー。
今やラノベ原作のアニメは珍しくもなんともない。その中でも特に多いのが学園異能力バトルと学園ラブコメだろう。毎年毎期、似たような量産型ラノベがアニメ化されては流星の如く忘れ去れていく中、本作品はライトノベルやるじゃんと言わしめる非常によく出来たアニメである。
のうりんはバカテスの系譜に連なる正統派お色気馬鹿コメディーだが、その中でも抜きん出て面白い。話は原作批評になってくるが、特筆すべきは主人公のキャラ造形だろう。90年代後期から現在にかけて、男性の女性化が著しい。虚構世界のキャラクターもそれに引きずられる形で、草食系男子に近いキャラ造形が増えている。
ようは、ムッツリなのだ。内心はスケベだが、それを表に出さず、または、遠まわしに表現する事で、スケベの責任を回避している。ラッキースケベなどが最たるものだろう。こっちにその気はなかったが、向うが勝手に仕掛けてきたという形だ。それもまた一つの様式美なのだが、近年はあまりに多く食傷気味である。
その点のうりんの主人公は、90年代中期以前に見られる諸星あたる、横島忠夫等のようなストレートなスケベである。ここで勘違いしてはいけないのは、ストレートなスケベとはあけっぴろげな変態ではない。一般人としての常識と慎みを持ちながら、自らのスケベに正直である事を指す。
その結果、畑耕作という主人公は非常に好感が持てる人間らしいキャラクターに仕上がっている。普通に優しく、普通にスケベで、普通に一生懸命。性描写に対して辺に気取った所がないので、不自然さがなく、のびのびと自由に物語を生きている。
エッチな事があれば飛びついて、だからこそ、女の子に殴られる。ラッキースケベに比べて、これは非常に自然な流れと言えるだろう。主人公のキャラクターに合わせて、他のキャラクターの性質も決まってくるので、自然とサブキャラクターの自由度も増す。2000年代に培われた草食系男子、ムッツリ男子の系譜から外れる事で、のうりんはコメディーとしての自由度を大きく広げているというわけだ。
アニメに関しては、原作の面白さを最大限引き出す方向で働き、パロディ、オマージュ演出の描写には特に力が入っている。一話冒頭に見られるゆかたん(草壁ゆか)のライブ時のサイリウムの動きやファンのガヤを見ただけで、製作陣の作品に対する高い理解度が伺えるだろう。
また、作中ゆかたんの愛称で呼ばれるアイドル、草壁ゆかの声優に声優界のトップアイドル田村ゆかりを起用した点も評価が高い。メタ的な演出の多いこの手のアニメにおいて、この配役は現実と虚構の壁を薄くし、視聴者の没入感を高めるの大いに役立っていると言える。
本作は決して突飛なアニメではないが、原作の面白さと製作サイドの愛の溢れる演出が合致して、安定感の高い笑える作品となっている。
アイドル草壁ゆかと田村ゆかりの二重性と、ストレートスケベな主人公、ひたすらバカとしかいいようのないハイテンションギャグに、アラサーに刺さるちょっと古いパロディーと、銀の匙にも負けない農業ネタなど、本作の魅力は枚挙に暇がない。
個人的にはアラフォー教師ベッキーの活躍を推したい所である。
そんな魅力多き本作、興味のある方は是非DVD&原作小説の購入をオススメする。
十文字曳参(じゅうもんじ えいさん)
アニメ、マンガ、ノベル全般を愛する孤高の評論家。
作家、文筆家としても活躍する。
ぬこPの依頼で「ヲタクの評価」のコメンテーターに就任。
「CoTri(当チャンネル)」と「ヲタクの評価」のコラボ企画として、
不定期で色々な作品について語る予定。
ヲタクの評価(テスト運営中)
http://yuruwota.myplayers.jp/
十文字曳参 著
SDイラスト こたつねこ
企画 こたつねこ(ぬこP)
配信 みらい図書館/ゆるヲタ.jp
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