【ヲタ評×てさぐれ!部活もの】
今期のダークフォースにして事実上のgdgd妖精s三期。アイワナビーなクリエイター志望必見のメタフィクションアニメ、「てさぐれ!部活もの」の見所とは!
てさぐれ! 部活もの Vol.1 [Blu-ray]
カメラが下からグィ〜ッとパーンしてタイトルロゴがドーン!!!
という事で、第九回のテーマは『てさぐれ!部活もの』
本作品は『gdgd妖精s』『直球表題ロボットアニメ』を手がけた石舘光太郎氏の新作で、例によってMMD等の3Dツールを生かしたプレスコアリング(音声先録り)の手書き風CGアニメである。
と、例に挙げたアニメを見た人はこれだけで大体理解してくれると思うけど、見てない人は「なにそれ? 超地雷っぽいんですけど」と思うはず。
毎回低予算かつ実験的かつ自由でぶっ飛んだ内容を展開する石舘作品だが、一つ難があるとすれば放送開始直後の初動が非常に悪い所にある。
というのも、これらのシリーズは基本的に3DCGで描かれ、絵作りに関して言えばはっきり言って雑。また構成も前半パートや助走の茶番劇を踏み台にした声優達のアドリブ芸なので、自称アニメ通が一部視聴して早々に切りかねない内容となっている。
かくいう僕も例の通り、gdgd妖精sは口コミ的ブームがようやく広がり始めた二期になってようやく視聴する気になったクチだ。
とはいえ、上記の事で本作を悪いクソアニメに分類するのは早計だ。むしろ本作及び前シリーズは各種ジャンルが飽和したアニメ業界に一石を投じつつ、視聴者には新鮮な楽しみを、クリエイター及び予備軍にはある種の挑戦や問題提起を投げかける型破りの(そしてある意味型通りの)怪作である。
特に本作はメタフィクション的な作りが強く、前半の台本パートでは毎回一つの部活に焦点を絞り、○○部を題材にした漫画にありがちな事を次々に挙げて各題材の基本要素や構成を視聴者と共有し、そこから創作に関しては素人である声優達のアドリブである新しい○○部物を考えように発展する。
その過程は一般視聴者にはアニメや漫画製作の内臓とも呼べるお約束が覗けて好奇心をくすぐるし、素直にあるある~と納得出来る。製作側に関わる者やそれを目指す人には、こういったお約束を散りばめればそれっぽく出来るけど、そんなんでいいの? と、尻を蹴飛ばされたような気分にさせる。
そして声優のアドリブパート。なにを隠そうこれこそが本作及び同石舘作品の魅力で、声優達が即興で荒唐無稽かつ意味不明な回答を半ば素になって回答する様はとにかく無性に笑えてくる。
素人ならではの柔軟な発想と言えば聞こえはいいが、ようはファミレスや居酒屋で繰り広げられる戯言と大差ない。だが、それがいい。それでいい! 基本的に多くのアニメは特定視聴者の感情移入や自己投影を意識して作られているが、そうするとどうしても展開が平凡で平均的になる。
発想に関しては素人である声優の個人的かつ独断と偏見に塗れた回答はキャラクターを通り越した向こう側に立つ声優個人の魅力を感じさせ、キャラクター萌えから、キャラクターを演じる声優萌えという特殊な構図を演出する。
簡単に言うと、普段見れない声優の巣が随所から毀れる様はどこか背徳的で、計算できない失敗やまったく同意できない謎の発想は見ていて飽きるという事がないのだ。
先に記した3DCGも、本作はアニメ塗りを意識した作りとなっており、一話を見終える頃には違和感も消え、もはや味にすら感じられるだろう。
メタフィクションネタ、先録り音声に合わせた低予算だが小回りの利いたCG、演者によるアドリブの多様と、何もかもがアニメらしくない本作は、むしろアニメとはなんだろう、アニメとはこのくらい自由でなんでもありなんじゃないかと提起しているように思える。
そういった意味で、業界に興味のある方には是非とも視聴を勧める作品だし、そんな事とは関係なく、本作は面白い。巨大な悪や癖の強いヒロインとの修羅場もいいが、疲れて帰って来た時に何も考えずぼんやりと見て、平凡な笑いと癒しに包まれたい、そんな時こそ本作の出番というわけだ。
いやー、言いたい事が多すぎて今回は真面目な口調で語ってみたけど、本当はもっと言いたい事あるんだよね!
あーだこーだ難しい事を書いたけど、興味のある人はとりあえずOPだけでいいから見てみてよ! あの馬鹿みたいな(最高の褒め言葉)OPを聞くだけで、本作の魅力は十分伝わると思うから!
それで気に入っちゃったら当然、前シリーズも合わせて円盤を買うんだぞ!
それではまた次回!
十文字曳参(じゅうもんじ えいさん)
アニメ、マンガ、ノベル全般を愛する孤高の評論家。
作家、文筆家としても活躍する。
ぬこPの依頼で「ヲタクの評価」のコメンテーターに就任。
「CoTri(当チャンネル)」と「ヲタクの評価」のコラボ企画として、
不定期で色々な作品について語る予定。
ヲタクの評価(テスト運営中)
http://yuruwota.myplayers.jp/
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配信 みらい図書館/ゆるヲタ.jp
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