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<第23回>

hideとは一度だけ、お互いに酔っ払って(ジャレあって?)大ゲンカをしたことがある。
ロックアーティストの溜まり場「レッドシューズ」がまだ西麻布の交差点にあった頃だ。

俺の目の前にhideが座っていた。会話も楽しく弾んでいた。

かなり時間も経った深夜近く、hideは相当お酒が回ってきたらしく、

「俺はオヤジが好きだ!」
と言いながら、

何と吸いかけのタバコの火を自分の左手甲に押し付け始めたのだ!


「ギタリストの大切な左手に、何やってんだよっ!?」
と叫ぶ俺。

しかも左手甲に、次々に3ヶ所もだ!

”ヤバイな。このままじゃダメだ......。少し熱を冷まそう”

そう思って、俺はhideを完全に無視して左右隣席のスタッフと話を始めた。

ん?しばらくしたら、誰かテーブルの下から俺の足を蹴ってくる。
げげっ!hideが俺を睨みつけている。

俺「何?!」

hide「何じゃねぇ!表に出ろっ!!」

俺「何だとぅ!?上等じゃねえか!!」

当時はいい歳して、肥後もっこす(九州熊本出身)の俺は、喧嘩を売られると買ってしまっていたんだ。
ま、一度も勝ったためしがないんだけどね(苦笑)。

俺の襟首を掴んで表に引っ張りあげるhide。

「飲み物や椅子が倒れる音や、スタッフの止める騒がしい声にハッと振り向いたら、星子さんのメガネが宙を飛んでましたよ!」
(昨年、久しぶりに出会ったSUGIZO談。少し離れたカウンターで、当時media youthのKIYOSHIと飲んでいたらしい)

でもさすがに、俺はミュージシャンは殴れない。

既に足腰にまで酔いが回っていた俺は、hideにつま先金具付きのブーツ(コレは凶器だっ!)で蹴られ、
店前の路上にウッと倒れてしまった。

”い、痛ーッ!何も本気で蹴ることねぇじゃねーか...”

その俺の上に、路上の看板や自転車がガンガン降ってくるんだよね(ア然)。

「やめてください!!」

必死にhideを羽交い絞めにして制止する愛弟子のKUMA。

身を挺して被いかかぶさっているスタッフ数人の体の下で、

"あ...ありえねー"

と心の中で叫ぶ俺。

これを阿鼻叫喚って言うんだな(泣き笑い)。

蹴られた左肋骨があまりにも痛いので、明け方だというのに、近くの広尾病院にタクシーで駆け込んだ。
何故か左右の席には、既に仲直りした(早っ!)hideとKUMAが心配そうに座っていたけどね(笑)。

翌朝(正確には、当日の午前中)、アルコールが冷めて”痛み倍増で唸っている”俺の自宅に、hideから電話がかかってきた。

「大丈夫?」
大丈夫じゃねえ!つーの。

でも俺は、
「うん、大丈夫。心配しなくていいから」

激痛に耐え切れず、その日から3日間、俺は会社を休んだ......。


今でも寒い日は、左肋骨がチクチク痛む。
その度に、毎年hideを想い出す。

とんでもねー奴だな......。