KISAKI BANDWORKS 30TH ANNIVERSARY SPECIAL対談
TAKA(defspiral)×KISAKI×苑(摩天楼オペラ)
――まずは、TAKAさんと苑さんに声をかけた経緯から教えてください。
KISAKI バンド活動30周年を記念し、今の自分が残し続けたい楽曲を30周年に合わせて30曲作り、それを3枚のアルバムに収録しようということで制作を始めました。アルバム用の作曲をしてゆく中、曲が生まれるたびに、「この曲は誰に歌ってもらおうか」といろいろと考え続けてゆく中、「この人に」と思ったアーティストの方々に声をかけ、それで今回の3枚のアルバムが生まれています。第一弾となるアルバム『Providence』は、創作を続けていく中で早い時期に生まれた曲たちであり、先行で制作を進めていた曲たち。その中から、「涙を枯らし、祈りを込めて生まれた魂の旋律」というテーマを元にまとめあげた作品になりました。 これは、3枚のアルバムに収録したどの曲にも言えることですけど。生まれた楽曲を聴きながら、歌っている人の姿を想像したときに思い浮かんだ人に歌や演奏をお願いしています。TAKAくんと苑くんも、その中の人たちでした。
――2人との付き合いも…。
KISAKI もう長いよね。苑くんと初めて会ったのは、まだ摩天楼オペラとして活動を始めて間もない時期だったよね。
苑 2007年にお会いしています。今でも覚えていますけど。初めてお話をさせていただけたのが、2007年8月にさいたま会館で行われた「漆黒のシンフォニー」のイベントへ出演したときの楽屋の廊下でした。
KISAKI そこまでよく覚えてたね(笑)。僕もあのとき摩天楼オペラのライブを観て衝撃を受け、それからよく、当時僕がやっていたUNDER CODE PRODUCTION主催のイベントにも声をかけて参加してもらっていたからね。
苑 UNDER CODE PRODUCTIONへ所属していたNEGAさんと2 MANでTOURをまわったこともありましたし、ヴォーカルの儿くんとは、今でも飲みに行く間柄です。
KISAKI 摩天楼オペラとはけっこう接点もあったし、その恰好良さはずっと観てきたから、今回、誘いをかけた形でした。これも、参加してくれたアーティストのみんなに共通していることですけど、お互いに深い繋がりがあり、強い信頼関係や、「この人なら任せられる」という安心感のある方のみに声をかけています。でないと、大切な30周年のアルバムを彩る曲たちを安心して任せられないじゃないですか。そして、defspiralのTAKAくんですけど。彼との付き合いはめちゃめちゃ長いです。お互い、19歳か20歳頃からの付き合いだよね。
TAKA そうだね。当時の僕は、TRANSTIC NERVEとして地元の兵庫で活動をしていました。
KISAKI 俺も、あの頃は大阪に出てきて間もない時期。それこそ大阪でもそうだったし、姫路へライブに行ったときも、よく対バンしていた間柄。あの頃は、一緒のオムニバス盤に参加したこともあったよね。
TAKA あったね。あの頃は、よく対バンしていた関係だったからね。
KISAKI 姫路の公演でTRANSTIC NERVEにゲスト出演してもらえば、逆に、TRANSTIC NERVEの大阪公演へ俺らがゲスト出演したりと、互いにサポートしあう関係でした。
TAKA 今でも覚えているけど、姫路Betaの楽屋やフロアで、いろんな展開や戦略についての相談など、よく語り合っていたからね。まさにKISAKIくんは、同じ時代を歩み続けてきた戦友ですよ。
KISAKI 一緒に関西シーンを盛り上げていた中、TRANSTIC NERVEはX JAPANのhideさんに見いだされ、上京してしまったけど(笑)。お互い、音楽性は違っていたけど。あの頃はそんなの関係なく、集まれば一緒に盛り上がっていた間柄だったからね。
苑 その関係性が羨ましいです。
KISAKI TAKAくんも、苑くんもそうだけど。自分も含め、それぞれに環境に変化がありながらも、その関係が変わることなくずっと続いているのは、すごく嬉しいこと。だからこそ、今回の僕の30周年アルバムでの共演にも繋がったわけだし。2人と一緒に楽曲を作れたのは、すごくいい思い出になっていくはず。
――お二人が歌っている楽曲は、出来上がった曲を聴いたときのインスピレーションへ導かれて依頼した形になるわけですよね。
KISAKI そうです。「これは苑くんの顔が浮かぶ」「これはTAKAくんなら理想とする形にしてくれる」。そう思って、それぞれに声をかけています。
苑 僕が歌った『Irreplaceable World』は、けっこうメタル寄りの楽曲ですよね。
KISAKI 確かに、メタル寄りの曲だね。美しさもあり、疾走感もあり、激しくもある。まさに、俺が10代の頃に影響を受けたヴィジュアル系音楽のスタイルを軸に据えた、自分の原点となる楽曲が『Irreplaceable World』。この曲を活かすために、VersaillesのHIZAKIにギターを依頼。この楽曲の持つ美しくも激しい世界観をドラマチックに彩れる人たちに歌い演奏してもらったことで、理想以上の形を持って『Irreplaceable World』が出来上がりましたからね。
――『Irreplaceable World』のイントロが長いところも、KISAKI WORLDですよね。
KISAKI 今の時代、イントロの短い曲のほうが受けが良いみたいな風潮もあるけど。そんなのまったく気にしてない。僕の30周年の活動を集大成した作品である以上、自分らしさを徹底追及してこそじゃないですか。確かに導入部も間奏も長いけど、どれくちいあったっけ?
苑 導入部のオルゴールの音だけで1分くらいはありました。
KISAKI 確かに今の時代では珍しいアプローチかも知れないけど。ヴィジュアル系音楽が好きな人にとっては、そんなのは当たり前。どれだけ、その曲の世界観へ浸れるかが大切なこと。とくに『Irreplaceable World』は、世界観の深い楽曲だからこそ、しっかりと歌いあげられる色気のあるヴォーカリストということで苑くんにお願いをしたわけだし、求める色にしっかり染め上げてくれましたからね。それは、TAKAくんの歌った『Answer』にも言えること。
TAKA 楽曲を聴いたとき、自分の得意な歌い方を活かせる内容だったから、ちゃんと歌う人をイメージして曲を振ってくれたんだなというのは、聴いてすぐにわかったこと。『Answer』はメロディーが良くて、歌がすんなり心に響くミディアム系の楽曲。同じ時代の中、いろんな音楽の波の中を泳ぎ続けてきたお互いだからこそ、まさに KISAKI WORLDという曲でありながら、自分の気持ちにすんなり入ってきたのも、根底でお互いに通じるものを持っているから。同じ時代を生きてきた人が書くメロディーはスッと入ってくるし、そこに説得力もありますからね。
KISAKI 2人ともそうだけど。作った楽曲に対して真剣に向き合ってくれたなというのは、完成した楽曲を聴いたときにすぐに伝わってきたからね。今回のレコーディングでは、いくつか楽曲が出揃った中、大阪から東京へと足を運び、限られた期日の中へ参加してくれるアーティストたちを招き入れ、いくつものスタジオで同時制作も行っていたんですけど。『Providence』の中、苑くんとTAKAくんの歌った楽曲に関しては、ヴォーカルディレクションも完全にお任せしていました。この2人に関しては、絶対にそうしたほうが曲が活きるなと思っての判断。TAKAくんに関しては、同じメンバーのRYOくんが現場に顔を出しにきてくれていたことから、TAKAくんや苑くんのヴォーカルディレクションもお願いした形だったけどね。
TAKA 2枚目として出る『Afterglow』に、うちのギターのMASATOが参加しているんだけど。曲や、関わり方は違えど、こうやってdefspiralのメンバー3人が参加出来たのは嬉しいことでしたね。
KISAKI みんな、自分の理想や想像を超えた形で表現してくれるから、俺からしたら、参加してくれたみんなには感謝しかないです。これまでは、オーディエンスのことを考えで曲を作ることが多かったけど。今回発売する3枚のアルバムとも、純粋に「いい音源を作ろう」という気持ちで向き合い、完成した作品。みんなには、俺の30周年のエゴに付き合っていただいた形でしたからね。今回、Vijuttokeの対談のシリーズ第一弾にこの2人に登場をお願いしたのも、長年付き合いはありながらも、これまで一緒に対談やPHOTO SESSIONをしたことがないという理由もありますけど。第一弾アルバム『Providence』の魅力を伝えるうえで、この2人がどういう形でアルバムに関わったかを知ってもらうことで、2枚目や3枚目へ参加してくれる人たちにも強く興味を示してもらえるだろうなと思ってのことでした。
――苑さん、KISAKIさんと一緒に制作したことでの刺激はいろいろとありました?
苑 めちゃめちゃ多かったですし、すごく新鮮でした。まさか、同じ楽曲で共演するなんて想像もしていなかったですからね。歌入れの面でも、お任せしてくれたとはいえ、事前にKISAKIさんの要望も聞いていたわけですけど。細かいこだわりも受け止めて、そのうえで、KISAKIさんが僕に求めた感情的な表現という面を、自分なりに追求したうえで今の形へ仕上げました。
KISAKI 2人ともそうですけど。僕自身が、綺麗に歌ってもらうよりも、その人の感情の籠もった歌を重視していきたい性格ですからね。
TAKA それは感じたね。『Answer』だって、自分の曲だという感覚のもと、自分なりの歌いまわしで表現しています。僕自身に関しては、そんなに器用に立ち回れるほうではないし、その曲に対して「こうだな」と感じた気持ちを素直に歌声に表現してゆくタイプ。『Answer』は、自分の感覚にフィットするのはもちろん。自分の持ち味を存分に活かして歌えた楽曲です。
――改めてTAKAさんと苑さんには、ご自身の歌った楽曲の魅力を語っていただいても良いでしょうか。
TAKA 『Answer』の歌詞に記した、割と自問自答しながらも男らしい世界観が、自分にはピッタリだと思いました。音楽面だけではなく、歌詞の面でも共感できたというか、KISAKIくんの思いをいろんな言葉から感じることが出来た。そこは、同じ時代を生きてきた仲間として共鳴できたこと。だからこそ、自分の命を歌に込めて伝えることができた。自分で書いた言葉じゃないのに、ここまで魂を込めて歌えた曲が『Answer』です。
苑 僕も、ずーっと自分で書いた歌詞を歌ってきました。だから今回、KISAKIさんの書いた歌詞を歌うのは、すごく新鮮で楽しかったです。さきほど『Irreplaceable World』のことをメタルと言いましたけど、いわゆるヴィジュアル系らしいメタルナンバーなんですね。それが僕の一番好きなところ。『Irreplaceable World』はヴィジュアル系×メタルというスタイルを持った、僕の大好きな、綺麗で、疾走感があって、激しい楽曲。しかも、聴きやすいのに深みがある。1曲の中でいろんな展開を描いていくように、壮大な感動ナンバーに仕上がっています。ぜひ、この世界観に浸ってもらいたいですね。
KISAKI 2人の歌った楽曲が、アルバム『Providence』の魅力を紐解くうえでの鍵にもなっています。2人からは、僕自身もずっと刺激をもらい続けていますし、今回の僕の思いつきから誕生したアルバムに喜んで参加してくれたことに、僕自身本当に感謝しています。ヴィジュアル系というシーンの中、一緒に活動を続けてきた仲間として、機会があったら、2人とはまた何かやりたいなと思っていますからね。
TAKA お互いずーっと密な関係できたわけではないけど。昔からの仲間だからこそ、多少離れていようが、こうやって顔を合わせると、いつもの関係にすぐに戻れる。そんな関係が、僕だけではなく、これからリリースになる3枚のアルバムには活きている。しかも、それを30曲も作りあげた。これって、なかなかできることじゃないですよ。彼自身が、昔から「できないだろ」ということをガンガンやりながら、ヴィジュアル系に新しい道を切り開いてきた人。その中で出会ったいろんな人脈を活かしてとはいえ、それだけみんながKISAKIくんのことを信頼しているからこそ参加しているのは間違いのない事実。それって、本当に素晴らしいことだよね。改めて、30周年おめでとうと言わせてください。
苑 僕も、同じ言葉を言わせてください。僕にとってのKISAKIさんは、それこそ10代の頃に大好きで聴いていたヴィジュアル系の音楽シーンを、ずっと魅力的に輝かせてきた方。KISAKIさんは、ヴィジュアル系というシーンの中、つねに必要な存在であった方だし、今も、それは変わらない。もしKISAKIさんがいなかったら、今のヴィジュアルシーンはこうはなっていなかった。それくらい、このシーンを語るうえで重要なキーパーソンの方なんですよ。その方の作品に参加できるのは、本当に光栄なことだと思います。KISAKIさんには、これからもずーっとヴィジュアル系というシーンを引っ張り続けてほしいですし、僕らも、その横で頑張り続けたいです。KISAKIさん、30周年おめでとうございます。
INTERVIEW : 長澤智典 / PHOTGRAPH : 横山晶央 / HAIR MAKE : A・DO / KISAKI HAIR MAINTENANCE : hiko(UNDIVIDE)
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