CHOKEが6月に1stデジタルシングルとしてリリースした「全然問題ねぇ」が、国境を超え、世界中のラウド/ヘヴィメタルファンから熱烈な支持を獲得。時代に寄り添いながらも、他と比較不可能/予測不能な楽曲展開とコロナ禍時代の閉塞感を皮肉った歌詞に、日々の生活に憤りを抱えていた人たちが共鳴/賛同。国内以上に、海外での評価がとても高まっている。日本の現代社会を揶揄しているCHOKEにとって、その成果は嬉しい皮肉と言えようか。別の捉え方をするなら、日本人には規格外/予測不可能な脅威に恐れ戦(おのの)き避けてしまう国民性が根付いているように、新しい価値観(ニュースタンダード)に慣れるまでには時間が必要ということだろう。
9月11日に、CHOKEが2ndデジタルシングルとして「人間惨歌」を配信した。CHOKEのOFFICIAL SHOPでは「人間惨歌」「Amyotrophic」の2曲をダウンロード
販売中。今回、CHOKEのメンバーに、最新作についてじっくりと伺った。
Interview:長澤智典
そういう背景まで知ってニュースを観ていると、「正義って一体何なの?」と思ってしまう。
――1stデジタルシングル「全然問題ねぇ」から、あまり間を置かずに2ndデジタルシングル「人間惨歌」を販売しましたね。
KVYA NONO 今年はリリースペースを上げたい気持ちがあったうえで、そこへコロナの影響も重なり、結果、前作から約3ヶ月後というペースでのリリースになりました。
――「人間惨歌」は、前作「全然問題ねぇ」からの流れも踏襲しているのでしょうか。
KVYA NONO 「全然問題ねぇ」でも使っていたシンフォニックなアレンジなど踏襲している面もあるけど。じつは昨年下半期頃から「CHOKEなりのキャッチーさをどう出すか」を考察してきた中、その面を「人間惨歌」へ反映した面はありました。
REON 「人間惨歌」で特徴的なのが、前半のコーラスパートのところ。そこはとくに歌詞を入れるわけではなく♪WOW WOW WOW♪とシンガロングしていくんだけど。そこの部分をクワイア風にしながら、それをキャッチーな歌の魅力に持っていったアプローチが斬新かつ衝撃というか。CHOKEの歩みの中でも、とくに大きな進化/成長の一歩になったなと感じています。
――あそこは、インパクトを持って耳に届きますからね。
REON 人の声をめちゃくちゃ重ねたのにも、意味があること。たとえばデモ運動の場合、みんなが一つの目的のもとに集まって声を合わせメッセージしてゆく。そうやって人が集まり同じ声を発してゆくのは、人間特有の行動。みんなで合唱するのだって、同じ目的を持って歌声を重ねていく面では同じこと。じつは、今回の楽曲で「人間特有のものを肯定したいな」と思ったときに、「人間讃歌」という言葉が浮かべば、それを今回のメッセージの軸にしたいと思い、先のシンガロングしたコーラスへと繋がったわけなんです。
――「人間讃歌」が、歌詞のテーマになっていたんですね。
REON たとえばの話、蟻のような小さな存在でも、一匹の状態なら絶対に勝ち目はないのに、それでも、ときに人間に立ち向かってくるわけじゃない。それを果たして勇気と言えるのかと思ったんですね。これは他の人も言ってたんですけど、「本当の勇気というのは、弱さも知っているからこそであって、けっして無謀なこととは違う」と。
人って、それぞれに「自分なりの正義」「自分の意志や考え」を持っている。ただ、その考え方が、世間から見たときに「悪」になることもある。どんな悪行と呼ばれることだって、最初から「悪いことをしてやろうぜ」ではなく、そのときに同じ共通の利益や目的があるから、それを追求しているわけで。その結果、世の中として「悪」というレッテルを張られてしまう。つまり、やっている人たち自身は、「自分たちなりの正義」を心の旗印に掲げ、行動しているだけなんですよね。もちろん、社会的に「悪」と言われることがあるように、また違った判断基準はあるんだけど。「善悪」の判断基準以前に、そういう「信念」を持つところが人間らしさだとするなら、そういう意識や考えを持てる人間を賛美したいなと思って。
――それって、人間の心理の根源を突いていることだよなぁ。
REON 世の中を騒がすセンセーショナルなニュースの中には、とんでもない犯罪や殺人を犯してしまった人たちの姿を伝えるものも多くある。中には、同じ殺人でも、介護疲れからやむなく介護していた人を殺してしまう場合もある。もちろん、どちらも「罪」なんですけど。自分のことも理解出来ない状態にまで陥った親を、自分の時間や人生までもすべて捧げたうえで、本当に精神的や生活面で追い込まれ手をかけてしまった症例も少なくはない。介護で語るなら、自分の身勝手な正義という理論だけど、介護施設の人たちを無差別に殺した犯罪者もいた。最近も、自分がALS(筋萎縮性側索硬化症)になったことで、このまま自分の身体が自由にならないまま一生介護を受けるくらいなら、みずから命を断ちたい。それが今の身体では出来ないことから「自分の命を絶ってくれ」とお願いを「殺してもらった」事件があった。そういう背景まで知ってニュースを観ていると、「正義って一体何なのかなぁ」と思ってしまう。そういう人の深い心理にまでしっかりフォーカスしたうえで、今回の歌詞を書きたかった。そういうことって「良くも悪くも人間だからこそ」起きたこと。「人間惨歌」では、そういう「人間の弱さも含め、人間という存在を讃えたいな」と思ったんですよ。そのうえで、CHOKEらしい皮肉も効かせようと、「人間賛美」ではなく「人間惨歌」にしたわけなんです。
――「人間惨歌」では、いろんな心理的な葛藤を記しながらも、最終的には未来を照らしてゆく。REONさんは、人間の心をそう導いていきたかったのでしょうか。
REON 大きな旗を掲げ、大勢の兵士たちを率い、先陣を切って立ち向かうジャンル・ダルク。そういう姿への憧れもありますけど。僕は、もっと兵士側に寄り添いたかった。大勢の兵士たちが上げる声。一人一人の存在は小さいけど、想いを主張し叫ぶ、大きな意志を持った大衆の声に視点を当てたかった。つまり、誰もが声を上げられれば、誰だってどんな状況下だろうと、自分の意志を掲げることで未来を切り開いていけるんだと。
B5 人って、コミュニケーションを深めることでわかりあえることは多いし、その人に歩み寄ることも出来る。それが「人としてのコミュニケーション」なんだけど。でも、同じく「わかりあえないこと」も存在している。だからと言ってそれを否定するのは違うこと。自分が理解できないことだから「悪」ではなく、そういう「存在」や「人」がいることも認めることが必要だし、そのうえでディスカッションを始めていくべきなんだろうね。
CHOKEがあるべき独自のスタイルは、この「人間惨歌」を通し一つ完成させられたなという手応えを覚えています。
――「人間惨歌」の楽曲を作るうえでのイメージもあったら教えてください。
KVYA NONO Aメロはディミニッシュコードを使って不協和音がガンガンに入った、しかもCHOKE史上最速なツービート楽曲として始まりながら、でもCHOKE流のキャッチーさを出そうと、つかみを持った表情としてクワイア風のシンフォニックな面を持ってきたところが、一筋縄ではいかないCHOKEらしさとして求めたところ。メロディーや歌詞がなくともキャッチーさを出せる姿勢を示しつつ、次々と曲の表情を変えてゆく面もCHOKEらしさとして当たり前に提示したところでしたね。結果、CHOKEがあるべき独自のスタイルは、この「人間惨歌」を通し一つ完成させられたなという手応えを覚えています。
――KVYA NONOさんも言ってましたが、「人間惨歌」は、とにかくスピーディですよね。
KVYA NONO 常軌を逸した速さですよね。そこへ次々とブレイクポイントを入れるなど、自分らとしては普通の感覚ですけど、世の中的にあまり耳にしたことのない表情にしています。今回はとくに、B5さんやToshiya(Sato)くんの音的な主張もしっかり組み込んだうえで作れば、2人とも楽曲の展開に合わせた表情に似合う演奏も心がけてくれたからね。
Toshiya Sato 序盤の怒濤のツービートは、近年のメタルコア的なアプローチ。畳みかけるような高速ツービートの展開が終わったあとに、REONさんのラップパートが入り、楽器隊が音を刻んでゆく。そこでは、あえてシンバルを重ねた音でソリッド感を出すなど、それぞれのブロックごとに表情を活かすドラム演奏をしていきました。ふた癖もみ癖もあるところが「人間惨歌」であり、CHOKEらしさなんだと、僕は感じています。
僕自身はサポートという立場ですけど。同じ熱量で何時だってプレイしていたい。前作の「全然問題ねぇ」の頃は、それまでCHOKEが積み上げてきた世界観へ寄り添うことで精一杯だったからこそ、今回の「人間惨歌」では自分の主張も伝え、それを今のCHOKEの新たな色にもしていった。結果的にCHOKEの中へ新しいエッセンスを加えられことは良かったなと思っています。
B5 やっぱ、自分のエッセンスは僕もToshiya(Sato)くんも入れたいからね。そこをKVYA NONOくんが上手く吸収し、形にしてくれたなと思ってる。
――「人間惨歌」では、いかにキャッチーさを出すかも心がけていたんですよね。
KVYA NONO そこはずっと課題にしていたこと。いわゆる、サビで開けた歌ものにすることがキャッチーという定石はCHOKEでは使いたくなかった。世の中にはメロディーのない楽曲でありながらもキャッチーに捉えられ、支持を得ていく曲だってあるわけじゃない。CHOKEとしても、日頃からいくつもキャッチーの引き出しは考えていたこと。その中の一つが、今回の「人間惨歌」に用いた、クワイアのようなコーラスとシンフォニックな要素をミックスしたパートを一番のつかみにしようということ。「全然問題ねぇ」でもシンフォニックな要素を用いていたように、そこは使い方次第でCHOKE特有の色になることもあって、今回も有効的に使ってみました。
本当にヤバい人たちって、外見や奇抜な行動をする人たちではなく、日常に何気なく溶け込んでいる人たち。
――廃院を舞台にした「人間惨歌」のMVも、かなりインパクトを放っていません?
KVYA NONO 前作「全然問題ねぇ」のMVを通したREONさんのインパクトが、観た人たちに強烈に刺さったことから、それをもっと強烈に映像の中へ映し出したいというのが最初にあった狙い。歌詞の内容で「人の精神的な面」をテーマにしていたことから、もともと精神疾患者を扱っていた、今は廃墟になった病院を舞台に撮影をしました。グロテスクな演出は、メンバーみんなの音楽的なルーツとして通ってきたところ。それに、まずはMVでインパクトを与えようという意識もありましたからね。
――「人間惨歌」のMVには、かなり猟奇的なメンバーたちの姿が映し出されています。中では、蟲や生肉まで食べていますし。
Toshiya Sato あの撮影は、かなり痺れましたね。
REON 「全然問題ねぇ」では廃村を舞台に、「人間惨歌」では廃院を舞台に、命懸けの撮影をしたなと思います。
KVYA NONO MVも全部メンバーたちで撮影や編集を行っているように、最初にプロットは作るけど、撮影しているその場から、他のメンバーらが次々といろんなアイデアを出せば、それを次々採用しながら撮り続けていたように、かなり刺激的な撮影だったし、完成した映像になりましたからね。
――あの映像だけを観てしまうと、かなりヤバい連中と思われそうですが。じつは、とても温厚な方々ばかりですからね。
REON 本当にヤバい人たちって、外見や奇抜な行動をする人たちではなく、日常に何気なく溶け込んでいる人たち。そういう人たちが、一度考え方を取り違えると、本当にヤバい存在になりますから。僕らに関しては、それをライブやMVの中へ変換しているだけなので。
――REONさんは、脅威となる存在をみずからライブやMVの中で示すことも多いですよね。
REON 普段の自分はぜんぜんノーマル。だからこそ、ヤバい存在に憧れるあまり、表現するうえでそうなっていくんでしょうね。
人間の感情って起伏も激しいし、グロテスクだし、カオスじゃない。その心模様を、楽曲と歌詞すべてにリンクさせたのが「人間惨歌」。
――CHOKE OFFICIAL SHOPでは、「人間惨歌」と共に「Amyotrophic」というダウナーな楽曲もダウンロード販売しています。
KVYA NONO この曲はブラストビートの得意なToshiya(Sato)くんの持ち味を活かしたうえで、ダウナーなラップコア的な楽曲として作りあげました。
――「人間惨歌」と「Amyotrophic」の歌詞には、根底で共通している意識を記していません?
REON まずは、Amyotrophicという言葉の意味を調べて欲しい。それを理解すると、先に述べた自分の想いとのリンクも見えてくると思う。「人間惨歌」も「Amyotrophic」も、とても絶望的な内容ですけど。それでも「人間惨歌」では、「それがどんな想いだろうと、自分に後悔なくやってしまえばいいじゃない」「もっと自分の声を出せばいい」と最後に前を向かせているけど、「Amyotrophic」には徹底して絶望しか描いていない。
何事も無理に希望へ導く必要はない。それでも、CHOKEの活動を観続けている人たちは、このバンドがしっかり前を向いてアジテートしているのを理解してくれている。それでいいんですよ。
――確かにCHOKEの場合、MVや聴感上の楽曲だけでは伝わらない本質が、歌詞を読むことで伝わりますからね。
REON まぁ、そこもだいぶひねっていますけどね(笑)。
B5 人間の感情って起伏も激しいし、グロテスクだし、カオスじゃない。その心模様を、楽曲と歌詞すべてにリンクさせたのが「人間惨歌」。これは間違い…ではなく、人それぞれの価値観を尊厳してこその人間だからこそ、それを賛美したい。ただし、理不尽な犯罪行為を犯し、法の下に裁かれるような惨事とは切り離して考えたいところ。そういう深いところまで理解してもらえたら、よりCHOKEの世界観を楽しめるんだと思うよ。
REON 今もまだまだ当たり前のライブが出来る環境ではない。だからこそ、早くライブでこの曲たちを聴かせてやりたいですよね。
REON
KVYA NONO
B5
Toshiya Sato
★インフォメーション★
「人間惨歌」MV
全然問題ねぇ-No problem at all-"(OFFICIAL VIDEO)
https://www.youtube.com/watch?v=JqcF4xmBQyM
"ピザとコーラ-Pizza and Cola-" (Official live film)
https://www.youtube.com/watch?v=Oda_XHbce6k&t=536s
【ライブ】
・9月16日(水)新宿ANTIKNOCK
・9月19日(土)高田馬場AREA
・9月26日(土)高田馬場AREA
・10月1日(木)新宿ANTIKNOCK
・10月7日(水)大塚DEEPA
・10月11日(日)高田馬場AREA
【リリース】
・1st single"全然問題ねぇ"ダウンロード&ストリーミングにて配信中
・ライブフィルム"ピザとコーラ"オフィシャルショップにて発売中
CHOKE Web
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(日本語) https://twitter.com/CHOKE_tokyo_jp
(English) https://twitter.com/CHOKEofficialEN
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