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【結城登美雄の食の歳時記#40】八十八の手間をかけたコメ作り(農家の夏編・その1)
じゃがいも、トマト、キュウリ、とうもろこしと、夏の野菜が収穫の最盛期になって、農家の皆さんは毎日汗だくになって作業をしているのではないかと思います。今週はそうした食べ物を育ててくれている農家の夏の作業はどんなものか、普段私たちが食卓にいるとなかなか浮かんでこない食べ物を作ってくれている人たちの姿。この農家と食卓の距離が縮まっていけないいなという意味を込めて、農家の夏のお話をします。
田んぼ仕事。長雨が続いたかなと思うと、いきなり暑い日がやってきたり、かと思うと低温続きの日が多かったり、今年に限ったことではありませんが、農作業は毎年のことですが毎日違う天候との闘いなんですね。長雨は野菜に病害虫を発生させたり、虫が食べると商品にならないので、農家の人はとても気を使っています。暑ければ、暑さに弱い葉物などには日傘をさすように遮光ネットをかけたり、作物づくりというのは、どこか子育てに似ているなと思います。
さらに夏は雑草の勢いがましますよね。取っても取っても、次々に雑草は伸びてきます。私も息子がやっている農業の畑を手伝いっています。本当に疲れます。取っても取っても取りきりません。農業は雑草との根比べだなと、つくづく思います。でもそうした作業のかいあって、野菜ができたときは格別なんです。何がともあれ、自分で育てたトマトやキュウリをガブリと食べればとても美味しくて、ああ農業をやっていて良かったなと、これが農家の特権だなと実感します。
しかし、いざ出荷して、値段はどのくらいかと期待していると、これがまったく、嫌になるほど安いんですよね。農家の人はいっつもそんな思いを抱いてるのではないでしょうか。あんなに苦労したのに、お店の値段表がときどき恨めしくもなります。それでもめげないのが農家の強さ。夏の作業は炎天下をさけて、いつもより早く4、5時に起きて、作業をして暑いお昼には昼寝をたっぷりして、また夕暮れまでめいっぱい仕事をする。体力も気力も消耗する夏は怪我も多いです。そんな中でも夏祭り、お盆など、帰ってくる子どもや孫のための準備もする。この時期の農家の作業は大変だと思います。
夏の田んぼ作業といえば、何と言っても「けいはん」。畦の草刈りのことです。これが一番大事ですよね。この時期にしっかりと畦の草刈りをしておかないと、草のあるところにカメムシが発生して、大切なお米に黒い斑点がついてしまいます。これがつくと、規格外になってしまったり、値段が安くなってしまいます。この畦の草刈り、遅くとも穂が出てくる出穂(しゅっすい)日の10日前には、畦の草刈りをしておかないといけなんだそうです。それが遅れると、後から刈ってしまうとかえってそこにいたカメムシなどを田んぼに追い込んでしまうので、逆効果になってしまう。どんなに忙しくても、他の仕事があってもこの時期の畦刈りだけはしっかりとしなきゃいけない。農家のみなさんの健康と時間を見計らって、草刈りをする姿があちこちでみかけます。
さらに田んぼの中にはヒエなどの雑草もはえてくるんですね。その草取りは、もう薬ではできませんから、田んぼの中に入って腰をかがめて、ヒエを抜いている方もいるのではないでしょうか。どうも世間では「無農薬米がいい」とかいろいろ言いますけれども、そういうお米にするためには、大変な手作業がかかります。お米の値段が年々下がる一方で、消費者のお米の安全性への要求はかえって上がっていますね。その間で、農家の方のがんばりが続いているというのが今の季節です。
もう1つ農家の方が神経を使う農作業があります。それは、水の管理です。(ここまで1,631文字/1,903文字中)
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