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<マル激・後半>極右勢力に牛耳られたイスラエルはもはや誰も止められないのか/臼杵陽氏(日本女子大学文学部教授)
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イスラエルが10月1日、遂にレバノンへの地上侵攻を始めた。それを受けて、レバノンを支援するイランはイスラエルに向けて180発以上の弾道ミサイルを発射した。イスラエルはすでにイランへの反撃を明言しており、戦火のさらなる拡大が避けられない状況となっている。 ハマスによるイスラエルへの奇襲に端を発する両者の軍事衝突は、ほぼ一方的なイスラエルの侵攻という形で進み、10月7日で1年を迎える。ガザの死者が4万人、しかもその大半は子どもを含む一般市民という状況の中、国際社会からの度重なる停戦要求も実らず、残念ながら当分の間イスラエルの攻撃は続くものと見られ、犠牲者の数も増え続けることが避けられない状況だ。 それにしてもイスラエルは、どれだけ世界から指弾されてもガザへの攻撃をやめないどころか、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラやイエメンのフーシ派など、多方面に戦線を拡大している。そして、1日のイランによるミサイル攻撃で、遂にイランまでがイスラエルと限定的とは言え、戦争状態に突入しようとしている。 イスラエルの先進技術と軍事力、そしてアメリカからの軍事支援が当面は続くと予想されることから、仮にイランと戦火を交えることになったとしてもイスラエルの軍事的な優位性は揺るがないと考えられている。しかし、もはやイスラエルの最大の敵は国外の反イスラエル勢力ではなく、イスラエルが国内に抱えた極右勢力であることがイスラエルにとっては国家存亡に関わる最大のリスクファクターになっているとの指摘が出始めている。 なぜイスラエルは世界から指弾を受けてもガザ攻撃を続け、遂にはレバノンやイエメン、そしてイランにまで戦火を拡大しなければならないのか。日本女子大学文学部教授でイスラエル・パレスチナ研究の第一人者の臼杵陽氏は、イスラエル国内の政治状況にその原因があると指摘する。ネタニヤフ政権は内政的に不安定な状況にあり、政権を延命するために国内の目を外に向けようと戦争を継続している面があるのだと言う。 1院制の議会を比例代表方式で選出しているイスラエルでは、政府は1948年の建国以来、常に連立政権で成り立ってきた。様々な背景を持ったユダヤ人やアラブ人が集まって20世紀にいわば人為的に国家を建設したイスラエルは、完全比例選挙では多数の少数政党が生まれやすく、宗教政党や極右政党も議席を得やすい構造になっている。 ネタニヤフ首相が率いる「リクード」は世俗的右派に属するが、120の議席があるイスラエル国会では32議席しか持っていない。結果的にネタニヤフ政権は宗教政党の「シャス」、「統一トーラー・ユダヤ連合」や、極右政党の「宗教シオニズム」、「ユダヤの力」などと連立し、68議席の右派連合を作っている。仮に宗教政党や極右政党が政権から離脱してしまえば、右派連合は過半数を維持できなくなる恐れがある。 ネタニヤフ首相が率いるリクード自体が元来、思想的には保守であり、ユダヤ民族主義を強調する傾向があるが、それ以上に連立のパートナーを組む「宗教シオニズム」と「ユダヤの力」の2つの極右勢力が、パレスチナの入植拡大を叫ぶなどナショナリズムを煽る政策を強く主張し、保守的なネタニヤフ政権を更に右に引っ張っている。実際に今年6月にも、ハマスと停戦合意すれば連立を離脱すると脅しをかけるなどして、和平プロセスの妨げとなっている。いわば、2つの少数政党が政権のキャスティングボートを握ることで政権を操る事態に陥っているのだ。 しかし、例え軍事的な優位性があるとはいえ、イスラエルもいつまでも戦火を拡大しているわけにもいかない。イスラエル経済にも重圧となっていることに加え、このままではイスラエルの国際的な立場は悪くなる一方だ。また、イスラエル国内にも反戦運動や厭戦機運が出始めているという。 中東でなぜ戦火が拡大しているのか、なぜイスラエルはガザから撤退できないのか、原油の94%を中東諸国に依存している日本への影響はないのかなどについて、日本女子大学文学部教授の臼杵陽氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。 前半はこちら→so44180984(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
配信期間
2024年10月07日 12:00 から
2025年01月06日 23:59 まで