
「歴代天皇の"祈りと歌"が、日本をつくってきた」
★番組レポート★ 2016.12.7 up
〜加瀬英明×馬渕睦夫『日本らしい国づくり』vol.4「日本をつくる天皇の仕事」より〜
「DHCシアター」の『日本らしい国づくり』。この番組は外交評論家の加瀬英明氏(79)が「日本とは何か」「現代の日本人が忘れてしまった、元々日本が持っている魅力とは」といったテーマで送る月イチの対談番組。第4回は元外交官の馬渕睦夫氏(70)がゲストで登場した。テーマは昨今有識者会議なども開かれ俄然注目の「天皇」である。
冒頭、“「生前退位」という呼称は今後「譲位」と改める”、という産經新聞の記事を紹介しつつ(まったくその通りである)、「天皇のお仕事」の話からスタート。
番組によると、天皇の仕事(行為)は三つに別れるそうだ。首相の任命や国会の召集などの〈国事行為〉、外国や国内各地方への訪問、園遊会や歌会始、外国賓客の接受などの〈公的行為〉、祭祀や趣味、学術研究など〈その他の行為〉である。
それらのうち、「“これをやらないと天皇じゃない”と言えるものは二つしかない」と加瀬氏は言う。
番組によると、天皇の仕事(行為)は三つに別れるそうだ。首相の任命や国会の召集などの〈国事行為〉、外国や国内各地方への訪問、園遊会や歌会始、外国賓客の接受などの〈公的行為〉、祭祀や趣味、学術研究など〈その他の行為〉である。
それらのうち、「“これをやらないと天皇じゃない”と言えるものは二つしかない」と加瀬氏は言う。
その二つとは、「祭祀」(さいし)と「歌を詠むこと」。馬渕氏も同じ見解だ。

馬渕氏が指摘するように、天皇についての今の日本人の大多数の認識は「国事行為や災害被災地の訪問をされるお方」だ。つまり公務で天皇を見ている。
しかしお二人は、天皇を天皇たらしめるものはむしろ、“私的な行為”として分類されてしまっている「祭祀」にあると言う。宮中祭祀が私的行為に分けられるというのも意外だったが(日本国憲法の影響なのか…)、この指摘にはあらためて、「天皇とは何なのか」と考えさせられた。
解説によれば、天皇は年に約20回ほど、国と国民のために祭祀を行う。(大晦日深夜から元旦の日昇前までにかけて行われる四方拝や、11月23日に行われる新嘗祭は特に重要とのことで詳細な解説もあった。)

しかも毎回、天皇が宮中の神殿で祖先の天照大神に祈る間、他の皇族方も各自の部屋で、一緒に祈っているのかどうか、とにかく身を慎んで祭祀が終わるのを待っているという。「元首が一族をあげてこんなことをする国は世界中どこにもない」と加瀬氏は感嘆していたが、まったく同感である。

しかも毎回、天皇が宮中の神殿で祖先の天照大神に祈る間、他の皇族方も各自の部屋で、一緒に祈っているのかどうか、とにかく身を慎んで祭祀が終わるのを待っているという。「元首が一族をあげてこんなことをする国は世界中どこにもない」と加瀬氏は感嘆していたが、まったく同感である。
天皇を天皇たらしめるもう一つの事柄、「歌を詠むこと」についてはどうか。


お二人は、日本の和歌は言葉がそのまま祈りであり、歌をつくることは祈りの作業であること、歌を詠むことは「言霊」を発生させることと強調する。
言われてみれば確かに、天皇陛下や皇后陛下が歌会始などで世相を思って詠まれる歌には「日本がこうあってほしい」という祈りが感じられる。しかも和歌は詩形式が現代まで変わらず、古代の歌が今もそのまま味わえる。これは欧米や中国の詩にはない特長なのだそうだ。
そんな話が“カラオケ論”に展開していったのも面白かった。加瀬氏によれば、カラオケで画面に流れてくる演歌の歌詞を見ると、「生命」は「いのち」、「別離」は「わかれ」というふうに、漢語は必ず大和言葉の読みになっている。(た、たしかに!!)またそれをすかさず馬渕氏が、「漢語は言霊になれないんです」と受ける。駐ウクライナ大使在任中には、日本語がまったくわからないのにお国の詩を日本語の朗読で聞いて涙がとまらなくなった外国の大臣もいたそうで、馬渕氏はこのとき、日本語(大和言葉)には言霊が宿ると実感したらしい。

※↑こんな物騒な質問にも答えて頂きました(運営 注)
この他にも番組からはいろんなことを教わった。
たとえば、日本の元首(天皇)が古事記の時代から非独裁的であったこと。高天原で神謀った(かむぱかった)ことを天照大神にうかがって物事を決めていたこと。「個人主義」とは明治期に入ってきた輸入ものの思想で、日本には本来馴染まないこと。高天原系の男神と地上系の姫のあいだで結婚が繰り返されるパターンが示すように(精神世界と物質世界の結婚)、何事も極端に振れないバランス感覚を、古来より日本人は大事にしてきたこと、などなど…。それらの話を聞くにつれて、「日本とは何か」「日本が元々持っている魅力とは」といったテーマへの答えが、自然にわかってくる気がした。
番組が終わって画面を消した後、和歌の形式がずっと変わらないという話に続けて馬渕氏が言ったことをあらためて思い出した。
「国もそうなんです。西洋は現代のギリシャと古代ギリシャでは別ものですが、日本は現代の日本と古代の日本に断絶がない。日本はずっと日本であり、日本人はずっと日本人だったのです」
“日本らしい国づくり”――こんなところにもヒントがあるのではなかろうか。
2016.12.6 真相太郎
※画像追加・文章一部編集:シアターネットTV運営


<余談>
なお、アシスタントの村松えりさんは、ずいぶんおっとりしてお上品な方だなと思っていたら、作家の村松剛さんの姪であり、女優の村松英子さんの娘なんだとか。三島由紀夫と縁が深い人たちの中で育って来た方だったとは・・・今後ともますます注目させて頂きます(笑)。
なお、アシスタントの村松えりさんは、ずいぶんおっとりしてお上品な方だなと思っていたら、作家の村松剛さんの姪であり、女優の村松英子さんの娘なんだとか。三島由紀夫と縁が深い人たちの中で育って来た方だったとは・・・今後ともますます注目させて頂きます(笑)。
【動画URL】
◎シアターネットTV(ニコニコ動画):http://www.nicovideo.jp/watch/1480654557
◎YouTube :https://youtu.be/vfZBq--fegU (無料配信中 / 期間限定)
DHCシアター番組ページ https://www.dhctheater.com/season/268/
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