タブーなしで切り込む討論番組『やらまいかー真相はこうだ!』。6月2日(木)に放送された今回のテーマは「憲法改正 〜せめて緊急事態条項を入れよ〜」。ゲストに産経新聞論説委員兼政治部編集委員の阿比留瑠比氏をお迎えし、議論を行った。
憲法はどこを変えるべきか?
番組冒頭では、各討論者が現日本国憲法のどこを変えるべきなのか語った。
ノンフィクション作家の関岡英之氏は、主たる改正点として、憲法第9条2項(第2章)、第93条2項(第8章)、第96条(第9章)を掲げた。地方自治について定めている第93条について、関岡氏は首長の選出方法に問題があると指摘。現憲法では、「住民の直接選挙によって選出する」と定められているが、「住民」だと「外国人」が含まれる懸念があるため、「住民」を「国民」に変えるべきだと主張した。
元駐ウクライナ大使の馬渕睦夫氏は、「憲法第9条2項又は第89条」を掲げ、私立学校に対する補助金は第89条に違反しており、「憲法改正に賛成しなければ、来年度から私立学校に補助金は出しません」と言えば、私立学校の憲法学者は賛成せざるを得ず、“テクニカルに”憲法改正するのであればここから変えれば良いと解説。しかし、「安倍首相はテクニカルな改憲ではなく正面突破」を意図しているのではないかと分析し、それならば9条2項を変えるべきと指摘。しかし「本当は廃止して新たな憲法を作るべき」という従来の主張を述べた。
評論家の日下公人氏は、一度憲法を廃止し、それで困るのであれば1条ずつ審議して復活させるべきだと主張。そして、現日本国憲法を廃止すれば、廃止の手続きが行われていない聖徳太子の17条憲法が復活すると語った。
ジャーナリストの福島香織氏も、イギリスにように憲法は要らないのではないかとしながらも、もし現憲法を変えるのであれば、9条の変更が必要ではないかと主張。具体的には、国防軍を制定すべきであるとした。また、福島氏も日下氏の意見に同意し、17条憲法のような、理念を定めた憲法に変え、細かい内容は法律で定めるべきではないかと述べた。
日本音楽財団理事長の塩見和子氏は、憲法改正以前の話であるとし、国民のほとんどが日本国憲法を読んだことがないのではないか、と疑問を投げかけた。そして、具体的にどこを変えるべきかの前に、まずは一度国民が憲法を読むべきではないかと主張した。
ジャーナリストの高山正之氏は前文と憲法9条を変えるべきだと主張。現前文では、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し」と書かれているが、朝日新聞等が主張している立憲主義はこのことを意識しており、「政府は戦争を起こすから見張っておく必要がある」として、国民と政府を対立機構として競わせている、と述べた。
元陸将の軍事アナリスト・志方俊之氏は、「防衛大学校時代は、憲法を習ったことはない」「我々は“憲法違反”の存在。大江健三郎によれば、防衛大学校は“青春の恥辱”だから…」とアイロニーを込めて述べた上で、現代は「緊急事態」が起こりやすくなっているため、現実論としてまずは緊急事態条項を追加、その後、第9条と前文を変えるべきだと主張した。
評論家の西尾幹二氏は、憲法を変えられないのは政治家と国民に能力がないからだとして、多くの内容を変えようとすれば「環境権」「(LGBTなど)性の権利」など新たな主張も出てくるであろうから、一つだけ変更するなら第9条2項を削除すべきだと主張した。
ゲストの阿比留氏は、本音では前文を変えるべきと主張。安倍首相の「敗戦国の詫び証文」という表現を引用しながら、自身も物心ついたときからおかしな文章だと思っていた」と述べた。しかし、現実的には緊急事態条項を追加すべきだと主張。緊急事態条項については、2014年11月当時の憲法審査会で共産党と社民党を除く7党が必要性を認めており、ここから変えていくのが良いのではないかと述べた。
最後に、ジャーナリストの堤堯氏は、現日本国憲法制定時の首相、吉田茂が詠んだ俳句「新憲法 棚のダルマも赤面し」を紹介しながら、前文と第1条、第2条、第9条2項を変更すべきだと主張した。また、堤氏と交流のあった作家・三島由紀夫は「第1条と第2条は矛盾している」と述べたという。「第1条では天皇は国民の総意に基づくと書かれているが、第2条では皇位は世襲すると書かれており、国民の総意に基づくものが世襲されるというのはおかしいのではないか」と三島が指摘したというエピソードを披露した。
一向に進まない憲法改正議論
一方、憲法改正議論は進んでいない。党首討論において、民進党の岡田代表は憲法を変える必要はなく対案を出す必要はないと主張。また、自民党も選挙前に対立するような議論をしては意味がないと、積極的な態度を取っていない。
ただ、民主党(民進党)が憲法草案を出せないのは別な理由があると阿比留氏は指摘。民進党は左翼から保守派まで党内にいるため、意見をまとめることができず、安倍首相を批判するしかない、という。
“平和のボーナス”が切れる?
どうして憲法改正が進まないのか。西尾氏は、戦争に対する恐怖が日本人に強く根付いていると主張。一方、福島氏は平和のボーナスを最も享受しているのは中国だという中国人学者の意見を紹介し、危機意識の弱い日本も平和を享受してきたが、今後その平和のボーナスが切れ、再び危機が起こる可能性は否定できず、日本はその危機を避けるために危機感を持つべきだと述べた。
まずは緊急事態事項から?
そして最後には、どう憲法を改正していくべきか議論が行われた。「安倍内閣が自爆覚悟でやらない限り出来ないと思う」と言う西尾氏に対して、阿比留氏は「安倍首相は自ら漸進主義と言っている」と性急論を牽制。長期政権になれば確実に積み上がり、7月の参院選で3分の2以上を確保し、近いうちに行われる次回衆院選でも勝てば、憲法改正に踏み切れるのではないかと阿比留氏は主張。それでもいきなり第9条とはならず、野党が批判する「お試し改憲」でも良いから、緊急事態条項挿入を賭場口に取り組むべきと語った。
阿比留氏をゲストに迎え、現日本国憲法の問題点やどう変えるべきなのかについて深く掘り下げた今回の放送のタイムシフト期間は6月9日(木)23時59分までとなっております。ぜひこの期間にご視聴ください!
◆『やらまいか―真相はこうだ!』第15回
◆生放送日時:2016年6月日2(木)16時30分~18時
◆テーマ:「憲法改正 〜せめて緊急事態条項を入れよ〜」
◆ゲスト:阿比留瑠比(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)
◆レギュラー:堤堯(ジャーナリスト・元文藝春秋編集長)、
日下公人(評論家・日本財団特別顧問)、塩見和子(日本音楽財団理事長)、
志方俊之(軍事アナリスト)、関岡英之(ノンフィクション作家)、
高山正之(ジャーナリスト・元産経新聞記者)、西尾幹二(ドイツ文学者・思想家・評論家)、
福島香織(ジャーナリスト・元産経新聞記者)、馬渕睦夫(元駐ウクライナ大使・元防衛大学校教授)
◆ご視聴URL: http://live.nicovideo.jp/watch/lv264202750
◆タイムシフト期間:6月9日(木)23時59分まで
2016年6月5日DHCシアター
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