今回は永江一石さんのブログ『More Access! More Fun!』からご寄稿いただきました。
※すべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/449407をごらんください。
※この記事は2013年11月02日に書かれたものです。
■ロイヤルホストの全席禁煙で、売り上げは伸びるのか → 伸びる
最初に書くと、わたしはタバコが嫌いです。飯食ってて横で吸われると飯がまずくなる。それをわかっていて平気で吸ってるわけで、こういうヤツは中国から飛んで来るPM2.5についてどうのこうの言う資格は無い。周囲に迷惑を掛けているという認識がこういう人にはないんだろうと思う。あまりにひどいときは面と向かって飯がまずくなるから外で吸えと言うことも。もちろんファミレスなどでは全席禁煙か分煙のところしかいかないが、小さな居酒屋や割烹で隣でぱかぱか吸われるとイラッとして注文をキャンセルして店を出るときもあるくらいだ。「タバコ吸ってもいいですか」と丁寧に聞かれるときもあるが「嫌です」と答える。三軒茶屋のデニーズは分煙されているが昼時は禁煙ゾーンにまでタバコの煙がモクモク回ってきたので二度と打ち合わせに使わない。
なお、厚生労働省の調査*1では、男性(女性のデータなし)の喫煙者の比率が高い県のベストスリーは青森(44.8%)、和歌山(44.7%)、鳥取(43.7%)となっているが、日常的に飲酒している県のベストスリーも青森(51.6%)、鳥取(48.5%)、島根(48.3%)で、青森と鳥取はヘビー喫煙飲酒県です。ランキング見ていただくとベストテンくらいは地方です。飲酒のみ11位に大阪が出てくるよ。
*1:「第章 都道府県別の肥満及び主な生活習慣の状況(PDFデータ)」 『厚生労働省』
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000020qbb-att/2r98520000021c39.pdf
で、昨日のニュース
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください
http://px1img.getnews.jp/img/archives/2013/11/22.jpg
「ロイヤルホストが全席禁煙に 大手ファミレス初、全店」 2013年11月01日 『YAHOO!ニュース』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131101-00000546-san-bus_all
あれっ? すかいらーく系のステーキガストも全席禁煙だと思ったけどな。ひょっとしたら全店じゃないのかも。ロイヤルホストは仕事で東京本社にも行ったことがある。ロイホのほかにも天丼てんやとか、ステーキのシズラー、ピザのシェーキーズもロイヤルグループ。たしかもともと福岡でケーキとか作っていて機内食から全国進出が始まったと記憶してます。
で、ネットでの反応をいろいろ見ていると、「売り上げが下がるかもしれないのによくやった」的なのがちらほらあるが、なにいってまんねん。売り上げドーンと上がりますよとわたくしは声を大にしていう3連休初日です。
●禁煙により顧客層の入れ替えに成功する
家族連れが増えるからね的な単純なことじゃないですよ。わたしが店舗の立て直しを模索する場合、多くの場合は既存顧客の入れ替えを提案することが多いです。ぶっちゃけて言うと「お金を使ってくれない層から使ってくれる層への入れ替え」です。そのためにはサービス内容を変えたり、商品の構成も変えたりします。若者中心の顧客を35歳以上中心のマーチャンダイジングへ転進して大成功した経験も実例もいくつか。「全席禁煙」というのはこの顧客層の入れ替えに大きな効力をもたらすわけですな。つまり
●喫煙者は非喫煙者を駆逐する
という現実があるわけです。逆はない。俺みたいに文句言うヤツはそうそういないから。
厚生労働省*2からデータをお借りしてきました。JTのデータもありましたがバイアスがかかってると邪推してやめた。www
*2:「成人喫煙率厚生労働省国民健康栄養調査」 『健康・体力づくり事業財団』
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd100000.html
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください
http://px1img.getnews.jp/img/archives/2013/11/32.jpg
この調査によりますと喫煙者は年々減り続け、いまや男性の30%くらいしか喫煙者はいない。女性は10%くらいなので平均したら20%だ。喫煙者が大多数ならともかく、20%しかいない喫煙者のために80%の非喫煙者が駆逐されている可能性があるわけで、20%をとるか、80%をとるかという簡単な話になる。喫煙者を追い出したら客が減ると考えるのは「喫煙者によって非喫煙者が来なくなっている可能性がある」という現実を見落としているわけ。比率計算だけしても割に合うはずです。
●全席禁煙にすることで顧客の質が上がる
炎上しそうでちょこっと怖いがあくまで統計データによるものなので書く。もちろん大金持ちのヘビースモーカーもいることはいるが・・・
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください
http://px1img.getnews.jp/img/archives/2013/11/4.jpg
これ、厚生労働省の調査データ*3なのでわたしにかみつかれても困る。文句があるなら直接お願いします。はっきりしてるのは年収が上がれば上がるほど喫煙率は下がる。朝ご飯も食うようになる。野菜もたくさん食べる。運動もするようになる。酒は逆に高収入のほうが飲むのが面白い。つまり飲食店で金を使うようになる。
*3:「平成25年度 第1回健康寿命をのばそうサロン(PDFデータ)」 2013年07月25日 『健康寿命をのばそう』
http://www.smartlife.go.jp/img/information/2013/0731/sukoyakasalon_201307.pdf
これを見る限り、非喫煙者のほうが喫煙者より所得水準が高い。つまり顧客を非喫煙者に入れ替えれば1人当たりの注文単価と注文個数は上がる。野菜が足りなければサラダも追加で注文してくれるし、酒をがぶがぶ飲んでくれ、店舗の売り上げは上がるわけである。飲食店にとって全席禁煙にするとこんなにいいことばかりなんですよ。まあ、青森と和歌山と島根の飲食店には行かないから無責任に言っております。
●実際に顧客の入れ替えに成功した例
でもってお前に成功事例はあんのかよ、と言われそうなので一つ挙げます。何回か紹介した茅ヶ崎の釣り船屋さんの一俊丸さん*4です。永江虎の穴」の優等生。サイトを開いてまだ2年ですがいまでは多い日は一日5000人の来訪者、PVは月間30万です。釣り船屋のサイトで月間30万PVですよ。2年前には給料をずっともらえてないということであったが、あっという間に数千万の借金返して無借金経営です。1日ブログに5時間かけてます。
*4:『釣船 湘南 茅ヶ崎 一俊丸』
http://kazutoshimaru.net/
ここでも最初にやったのは「顧客の入れ替え」でした。従来の沖釣りの顧客はまさしく「釣りバカ日誌」で、建設業の年配の方中心。しかし建設業の衰退とともに客足は悪くなる一方。ネットからの集客を考えるとメーカーとかもうすこしITリテラシーの高い人たちを誘導しないといけない。そこで真っ先にやったのが禁煙です。釣り船というのは朝に店舗で受付するのだが、ここを禁煙にした。当然昔のお客さんは文句ぶーぶーで来なくなったが、新しいお客さんがたくさん来るようになった。若い女の子のお客さんもいっぱい来るようになった。たくさん釣るのが目的ではなく、釣り自体はそれほど上手くないけど楽しんで釣りたいという人たちが主に来るようになり、経営はV字回復したのです。顧客はまるごと入れ替わっています。もちろんサービスの質もめちゃくちゃ変えました。今度は電車で来る方のために送迎用のワンボックスも購入予定です。
そんなわけで、全席禁煙は経営好転の鍵でもあるんです。今週の朝日新聞の夕刊で、ニューヨークのカフェが全面禁煙に踏み切ったところ、経営がめちゃくちゃ好転したという記事が出ていた(ネットには探したけど出てない)。特に都市部では効果がかなり出ると思いますよ。ワタミもいっそのこと、じり貧なら「日本で最初の全席禁煙居酒屋」になれば都市圏ではV字復活かもよ(と無責任に言う)。まあ常識的に喫煙者が多い業態ではダメでしょうが・・まずは都内かな?
執筆 この記事は永江一石さんのブログ『More Access! More Fun!』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年11月06日時点のものです。
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