人形を動かすクレイアニメや砂絵を動かすアニメなど、コマ撮りで制作するストップモーションアニメ。表現の面白さだけでなく、その制作の手間がさらに見る人を感動させてくれるストップモーションアニメですが、ちょっとやそっとではマネできそうもない作品が登場。なんと原子を動かして撮影したという極小アニメなのです。
●原子と少年の交流を描く
『A Boy and His Atom』は、IBM研究所が制作したアニメ作品。2013年2月に「世界最小のコマ撮り映画」として“ギネス世界記録”に公認されています。
画面中央に12コ並んだ原子から、1コの原子が飛び出してストーリーは始まります。
少年と出会った原子は、飛び跳ねるダンスと音で少年にごあいさつ。すると少年はダンスであいさつを返し、意気投合した原子と少年は一緒に踊り始めます。
少年が原子をボールのように投げたり、原子がトランポリンに変化して少年を跳ねさせたりして遊ぶ原子と少年。やがて原子は空に舞い上がり、「THINK」「IBM」の文字を原子で描いて本編は終了。おとぎ話を読んだような、ほのぼのとした気分になる作品に仕上がっています。
●極小だけど撮影は大掛かり
1分34秒と短い作品ですが、原子を動かして1コマ1コマ撮影していると思うと、なんだか気が遠くなってきますね。このアニメは米カリフォルニア州サンノゼにあるIBM研究所の研究員4人が、2013年1月29日から2月6日の9日間、1日18時間かけて撮影したのだとか。
撮影には、STM(Scanning Tunneling Microscope、走査型トンネル顕微鏡)という装置が使われました。STMは、プローブ(探針)と呼ばれる細い針を1ナノメートルの距離まで原子に近づけて、プローブと原子の間に流れるトンネル電流を計測することでナノの世界を画像化する装置。プローブと原子の間には引力が生まれるため、プローブで引っ張るようにして原子を移動させることができます。
簡単なように思えますが、室温では原子は激しく動き回るため、原子が静止した1コマを撮影するには絶対零度に近いマイナス268度という環境が必要。この環境で銅単結晶の板の上に、原子と同程度の一酸化炭素の分子を配置して撮影していきました。
●爪の先程度のサイズで全世界の映画が入るチップができる?
このように先端技術を惜しまず投入して制作された『A Boy and His Atom』。もちろん、ただの遊びで作ったわけではありません。その内容は、コンピュータ技術の将来を示唆するものだったのです。そのヒントは冒頭のシーンにありました。
冒頭のシーンで、原子は12コの原子の集まりから飛び出して動き出します。この12コの原子は、1ビットのデータを記録する最小の単位として利用できる原子配列として、IBMが2012年1月に科学誌『サイエンス』で発表したものなのです。ハードディスクなどの磁気記録は、記録媒体の磁性体の磁気の方向で0か1を記録していますが、この12コの原子は同様に原子の磁気の方向を記録しつつ、隣り合う原子のグループ同士が干渉しないように配列されています。
従来の技術では、1ビットを記録するのに100万個の原子が必要だったとのこと。原子12コで1ビットを記録できるようになれば、爪の先ほどのサイズのチップに、全世界の映画の映像データを保存できるのだとか。IBMはこの技術を“原子スケール磁気メモリー”と命名。原子スケール磁気メモリーが実用化されれば、たとえば地上でクラウドが管理するデータ量と同等のデータを宇宙船内に持ち込むことができるなど、未来の記録媒体としての活用に期待が寄せられています。
ただ小さいだけでなく、技術的な背景や将来性を考えながら見てみると、この“世界最小の映画”のスゴさがより感じられるのでは。是非一度ご覧になってみてください。
A BOY AND HIS ATOM(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=KOGmG--hVcM&feature=youtu.be
IBM ギネス世界記録認定、世界最小の映画(IBM)
http://www-06.ibm.com/innovation/jp/technologies/atom/index.html
画像提供:IBM
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